100日目から1000日後
新幹線に朝から揺られて3時間。
着いたのは地元の駅では中々見れないくらいの人混みの駅。
はわはわと待ち合わせ場所を確認する為にスマホを手に取る。
「南口……ってどこ? 」
そもそも、初めて行く場所なんだから、解る訳無いし。
「
思わず「ぎぐぅぅ」っと怖気づいていた腰が伸びた。
不審者的行動で、おそるおそる声の方向を見ると、スーツ姿の細身男性がこちらへ近づいてくる。
「あ……
私はぼそぼそと尋ねる。
「はい‼ はじめまして‼ いや、メールだともう何度も校正作業をやりとりさせて頂いてますので、はじめましては少しおかしいですかね? 」
そう言うと、にこやかに彼は微笑んだ。
うぐぐ、異性怖い。優しい社会人はもっと怖い。
「では、リムジンを待たせていますので向かいましょう」
倉尾さんという青年に誘導され、人混みの駅を抜けると
視た事もないくらい車が走る道路を眺める。
「すいません車中で慌ただしいですが授賞式の流れを説明させて頂きますね? 」
多分、そんな事を言われてたと思う。
会場と紹介されたその場所は、とっても立派な大きなホテルの
多分、こういったパーティを施す際のとっても大きなお部屋。
会場の扉の前には「KADOYAMA書店 ブーツ文庫 雷撃文庫 新人賞受賞パーティ会場」と達筆な字で書かれている。
中には、立派な壇上が上座にたずさえられ
部屋の中心には、幾つもの円卓が並べられている。
修学旅行の時、皆と夕食を食べたホテルを思い出す。
てか、すごい。怖い。
でも、どんなにビビってても。
時間は必ずやってくるんだから。
その大きな部屋を狭く感じるくらい。あっという間に人で埋め尽くされた。
「では、これより今年度の新人賞を受賞された作家の皆様をご紹介します。
受賞者の方々は壇上の方へお願いします」
司会の人のその言葉で私を含む数人がおろろろとギクシャクした足取りで壇上へあがる。
ライトが眩い。目が眩んじゃう。
「では、ブーツ文庫大賞、優秀賞『隣の牡蠣業者はよく異世界転生する客だ』の
どきどきと、胸が高鳴る。
あらかじめ受賞者は壇上で話す事になるのは聞いていた。
高々2分ほどのアピールタイムだ。しかも事前に話す事も用意して来た。
ぬかりはない。
「では雷撃文庫大賞、銀賞受賞『ラノベを読み漁った俺が異世界転生で無双状態の件』を書かれた霧晴ミライ先生です」
私は、震える脚を一歩前に出し。
セットされているマイクに顔を近づけた。
「は、はははははははじめまして。この度は私の拙作が光栄にも受賞を頂けるなど、とても光栄な限りです」……同じ言葉を繰り返しちゃった。
「おちつけー、現役JK作家~」ガヤの後、会場からまばらに笑い声が聴こえる。
それを聞いて私は大きく深呼吸を吸った。
「この作品はアタシにとってとても特別な作品です。
この主人公の男の子は、アタシにとってとても大切な人がモデルだからです。
彼はアタシの作家人生にとってとても大きな物を与えてくれたんです。
彼が生きている世界は、文字の通り異世界でしかなくて。
そして、それもアタシが創り出したモノでしかないけど、でも……」
残るは、たった2行の台詞。
アタシはスッと顔を挙げて。
出来るだけ
そこに
届く様に言うんだ。
そう。
異世界にまで
届く様に。
100日後に異世界転生される俺。 ジョセフ武園 @joseph-takezono
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