73日目

「……あ~、うん。ここだね。血管が裂けてる。

 レーザーで焼いとこか? 」


 鼻を綿棒と機材で開かれている為、非常にしゃべり辛いが。

「おねがひひます」


 処置を終えて診察室に戻ると、母と姉が待っていた。


「どうだったの⁉ 」姉が怒った様な口調で駆け寄って来た。


「あー、鼻ん中がちょっと傷ついてたって。レーザーで焼いてもらったからもう大丈夫。学校行くよ」

 それを聞いて、姉も母も解りやすい程、安堵した表情を見せた。


 実は、2人には昨日学校でも鼻出血した事は話していなかった。たかが鼻血で2人を不安にさせたくなかったし、自然に回復するだろうとも高をくくっていた。

 だが運悪く、昨夜の夕食時にも鼻出血を起こしてしまい、慌てふためいた2人によって朝一で耳鼻科に連れてこられたという訳だ。


「ちぇ、ちぇえ‼ ガッコ休めるかと思ったのに‼ 」


「お姉ちゃんは、どっちにしても診断結果出たら登校するって約束でしょ? 」

 診断料を払い戻って来た母が呆れたように言う。


「あれ? どこ行くの? 」

 姉に背を向けたまま「トイレ」と言ってなるべくゆっくりと俺はトイレに向かう。



「ゴホッ、ゴホゴホッ」

 2日程前からやけに咳が酷くなってきた。これも鼻血に関係しているのだろうか? それともさっきの処置で喉の奥まで色々されたから?


 やけに不安が胸に残るのを、俺は感じた。


――異世界転生まで

  あと27日――

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