72日目

 昨年から大変校内で有難くなった事がある。

 空調設備の改善だ。

 昨年のウイルス騒動で国から支援金が充てられ、設置された空調はとても性能が良く冷えすぎる事も無ければ、教室の一か所に集中する事も無い。


「よう、最近調子はどうよ」

 席でくつろいでいると席替えで、離れた位置になった猿殺が久しぶりに声を掛けてきた。

「いいね。外は地獄だけど教室はクーラーのお蔭で快適だよ」


「ん? 」


 何か、変な事を言っただろうか? 猿殺が不思議そうに表情を歪めて俺の顔を眺める。そして、ポケットからティッシュを取り出し、こちらに手渡して来た。


「何で? 」と尋ねた途中で意味が分かった。

鼻からすごい速さであったかいものが落ちて、手元を赤く汚す。

「ごめん、ありがとう」と言って受け取ったティッシュを鼻に当てた。

 鼻血なんて、いつ以来だ。


「エアコンって、体力減るらしいぞ。運動して体力つけとけよ? 」

 猿殺の言葉に「考慮しとく」と言って鼻を押さえていた。


――異世界転生まで

  あと28日――

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