8日目
「入るわよ」「ガチャ」「こんこん」
どう考えても、順序が間違っている気がするが、なにくそ構わず姉が毎度のことながら侵入してきた。脇にはこないだ窃盗していった俺のラノベ。
「……何見てんの? アル……バム……? 」
何故、そんなドラマティックな演出で日常台詞を口に出来るんだこの女は。
「ああ、母ちゃんが見てたのを無理やり渡されたんだ。
まあ……見てると……懐かしくは、ある」
そこに写っているのは毎日が新しい事で溢れていた幼い俺と姉。
「お祖母ちゃんもいるね。うわ、わっか」
気付くと、随分近い距離で姉が顔を覗き込んでいた。
「ああ、祖母ちゃんこの頃よくカレーを作ってくれた」
「私は、コロッケが好きだったな」
祖母は昨年末に体調を崩し、入院したその夜に肺炎で亡くなった。
元気だったから、なお突然の事で正直俺は……多分姉もまだ祖母が亡くなった事を実感できていない。
実際、この写真を見た後瞼を閉じると、そこには祖母が居る。
「ねえ、おばぁちゃんどうしてひとはしぬの? 」
「あらぁ、突然どうしたのかしら? 」
「だって、じいちゃんしんじゃったから」
「ふふ、怖いの? でも、大丈夫よ」
その時の祖母の優しい顔と言葉は今も頭に焼き付く様に残っている。
「ちゃんと、人が順番通りに死ぬとね?
その人の番が来た時には――会いたい人が皆向こうで待っててくれるの。
するとね? 死ぬのは一つも怖くなくなるのよ」
――異世界転生まで
あと、92日――
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