6日目

「おい、姉ちゃん。昨日盗った雑誌返せよ」

 昨日、雑誌をぶつけられた箇所は、まだ絆創膏が剥がせない。

 あれから、悶絶している俺に姉は絆創膏を持って再び部屋を訪れ、そして当たり前のように去り際漫画雑誌を盗み取って行っていた。


 姉の部屋は、俺の部屋と違い必要最低限の物しか置いていない殺風景な部屋だ。

 その端っこの小さなベッドの上で、タンクトップとハーフパンツで転がる部屋とは真逆にだらしない姉。

「んー? だめぇ」そう言うと、ごろんと転がる、その手には俺の雑誌が。俺の雑誌……。


「なんでだよ⁉ 昨日のうちにもう読んだんだろ? 早く貸せよ‼ ……いや、返せよ‼ 」

 姉はムッと警戒した様に眉を立てると、くるんと回転して背中に雑誌を隠す。

「きめつのシーンと台詞、まだ暗記してない‼ 」

 俺は、その解答にカチンときた。


「ふざけっんな‼ 俺、まだ読んでねえーんだぞ‼ 」

 姉は、サッと右足を槍の様に突き出し俺を牽制する。

「あんたが読んだら、柱が敗ける‼ 」


「なんでだよ‼ 」

 そう言うと同時に、俺は姉が背に隠した雑誌目指して飛びついた。

「あ‼ 」


 直後に「どぼっ」と鈍い音がして、俺の腹に姉のつま先が突き刺さった。


 連日、悶絶する俺に姉が足先でちょんちょんと突いて様子を窺う。

「……しょうがないわね……はい、大切にしなさいよ」そう言うと、俺の横にそっと漫画雑誌を置く。

 何を、偉そうに……言ってんだよ……


――異世界転生まで

  あと94日――

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