4日目

「おーい、必ず一つは委員に入れよー」

 という、担任のやる気のない声でその運命の時間は始まった。


 学生新学期の大きなイベントの一つ。委員決め。

 席決めの次くらいにこれは生徒にとって重大イベントだ。


 何故なら、委員は学級委員とは少し違くて期間がまる1年。

 長い。1年は長い。

 もし、最初の段階で道をあやめてしまってはその後の学生生活に支障をきたすと言っても過言では無い。


 まず、仕事が比較的少ない保健委員とかが狙い目だがこれは女子の中でヒエラルキー上部の所謂大天使層が立候補してくるので、男子はなるべく目を焼かれない為に退却せねばならない。まあ、俺はそもそも狙ってないんだが。

 俺は、常に小利を求めて動く。こんな大利はいらんのだ。足るを知る。いい言葉だ、座右の銘にしよう。


 必ず避けなければいけない委員がある。それさえ避ければもうなんでもいいっちゃ、いいんだ。


 それは、図書委員。

 何故かと言うと……

 必ず、が指名しているからだ。

 過去の過ちを繰り返してはならない。俺は人だから。


 だから、とっとと図書委員が埋まってくれればそれで構わない。


 それで……


 40分後――。まるで狙い打たれた様に、そこに俺の名前が書かれていた。

 おいおいおいおいおい、ジャンケン4連続敗北とかどうなってんだよ。どこの世界線の奴が俺にこの運命を掴ませてんだよ。

 と――多分、それが決まる前の俺だったら世界を呪っていたろう。


 だが、俺の隣に書かれた名前が

 その事をすっかりと忘れさせていた。


「ひさしぶり‼

 小学校の時以来だね? そう言えばあの時も私達図書委員コンビだったね」


 そう言った笑顔の君は。

 多分、窓から見える桜の花びらよりも綺麗だった。


――異世界転生まで

  あと96日――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る