2日目

「なぁ、なあ、お前って女子誰が好きなん? 」

 そう尋ねられたのは、1時間目の授業後のトイレ休憩。

 前の席のサッカー部の猿殺さるごろしというあだ名の奴からだった。


「突然すぎん? 」

 俺の反応は間違っていない筈だ。何故なら、猿殺と会話するのはこれが初めてだから。


「ああん? ゴタゴタ言わずに教えろや」

 そう言って猿殺は顔を近づけてくる。


 参ったな。そう思った時だった。

「おい、何かクッソ美人の3年生がお前呼んでるぞ」

 俺よりも猿殺の方がその声で素早く入り口に向き直った。


 そこに居たのは、姉だ。

 何というか。まあ美人という言葉に当てはまるのかもしれない。


「おい、お弁当忘れてたぞ」

「ああ、ありがとう」

 それだけ言って弁当をずいっと俺に手渡すと、姉は振り向きもせずにどこかに行ってしまった。


「おい‼ マジかよ⁉

 あれ、姉ちゃん⁉ 紹介してくれよ‼ 」


 席に戻ると猿殺が大興奮していた。

 さっきの会話はすっかりと忘れてしまった様だ。ありがたい。


 ホッとした俺は、猿殺の言葉をよそに

 教壇のところでグループで集まっている女子をこっそりと見つめた。


 ――異世界転生まで

   あと98日――

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