「見張りがいるな」

 先行していたワシが、曲がり角で立ち止まった。

 トウタも追いついて覗くと、そこは広い空間になっていた。

 空間の先に、幾つかの通路が伸びている。ワシによれば、地下牢に繋がっているらしい。

 見張りの敵は3匹ほど。2足歩行の狼の様なモンスターで、体の大きさは成人男性ほどだ。

「誰か遠距離攻撃できるかい?その隙に、あたいがちゃちゃっとしめてやるよ」

「遠距離なら…一応……」

「よし!なら任せた」

 リズは気風よく言うと、突撃体制を整えた。

「俺らも行くぜ!」

「自分だけが活躍したと言われては、たまらないからな」

 タカとワシも道具を持ち、走り出す準備をしている。

「行きます……」

 トウタは緊張しながら、拳銃を構える。入っているのはユリアも使っていた、爆発する弾丸だ。5発しかないが、ここで使うのは間違っていないだろう。

 3人の内一番奥にいる敵に狙いを定め、引き金を引いた。

 手の中に軽い反動があった後、弾丸が奔り、モンスター達の足元が爆発した。

「外した……」

 弾丸は思ったよりも飛距離が出なかったのか?照準が下を向き過ぎていたのか?分からないが、とにかく的に当たらなかった。

「あたいには、十分な陽動さ!」

 弾丸は直接的な被害を生み出さなかったが、相手を混乱させる効果があったらしい。

 モンスター達が戸惑っている間に、リズが突っ込んで行った。

「『スタンプ』!!」

 スキル発動と共に斧が青く光る。振り下ろされた刃は衝撃波を生み出し、モンスターをリンゴの様に押し潰した。

「俺も行くか、『ストンプ』!!」

 スキル発動と共に、ワシの足が光り出す。地面を踏み付けると強烈な反発が発生し、ワシは一歩で魔物の間合いに入った。

「『千影脚』!」

 スキルを活かした技とでも言うのだろうか。ワシは連続する蹴りで、モンスターを壁に押し潰していく。

「俺も行くぜ!『投擲』!!」

 タカは複数本の短刀を取り出すと、スキルを発動させた。短刀は最後に残っているモンスターに飛翔し、刃を喰い込ませていった。

 ガアアアアアア

 短刀の突き刺さったモンスターは目に怒りを宿し、タカへと突撃しようとする。

「ほら!止めだ!」

 リズは大斧を振り回すと、その勢いでタカとワシの獲物の首を跳ね飛ばした。

「一丁上がり!」

 あっという間の出来事だった。3体のモンスターは倒されて、空間が静寂に支配される。

「てめー、人の獲物横取りしてるんじゃねーよ!」

「そんな事より、斧に巻き込まれそうになったんだが」

「あたい達仲間だろ?細かいこと言ってんじゃないよ!」

 いや、勝ち誇る3人の声がすぐに静けさを追い払った。

 タカとワシは文句を言っているが、リズは笑って取り合おうとしない。

(皆……強いんだね……)

 これなら任務は何とかなりそうだと、ほっと胸を撫で下ろした。

 トウタは銃を腰に差し、3人へと近づいて行った。

 ――戦場では、僅かな気の緩みは即座に死に繋がると。

「トウタの兄貴!危ない!!」

「え?」

 ――トウタに理解しておけと言うのは、酷な話かも知れなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る