「本隊の陽動が、始まったようですぜ」

 通信スキルを使用していたトンビが、トウタ達に合図を出した。確かに耳をすませば、遠くの方で地鳴りのような音がしている。

 冒険者達が、魔物達に攻撃を行っているのだ。

 聞く所によると、斥候の振りをして、ほぼ全員で突撃をするとの事。上手くいけば敵を引き付けられるが、撤退する暇もなく打撃を受ければ、それでお終いだ。

「じゃ、行くぜ!」

「へい、タカの兄貴!『スルーザウォール』!」

 トンビが壁抜けスキルを使用する。拠点の壁の一部が、立体映像の様に透けて見えた。

 彼らがこのスキルを使ってユリアを襲おうとしたことを考えると、利用するのは複雑な心持ではあった。

「あっしは外にいるんで、アニキ達頑張ってください」

「は…はい……」

 トウタが躊躇っている内に、他の人達は透けた壁を潜っていた。トウタも恐る恐る壁に触れると、一切の抵抗なく通過できた。

「誰も……いない……?」

 壁を通過した先は廊下のような場所で、ひんやりとしていた。外から見た通り、洞窟を利用した造りで、四角くり抜かれた通路になっている。道幅はそれなりに広く、横6メートルに高さ4メートルという所。強い力で磨いて広げた後に、木材で補強してあるようだ。

 光取りの穴や松明が燃やされているからか、想像していたよりは明るかった。

「この辺は重要ではないからな。牢の側に行けば、間違いなく敵は居る」

「敵が……」

 一緒に侵入している屈強な男の言葉に、トウタは唇を噛んだ。

「ほらほら、気合入れてこう!あたいらの担当は、地下牢の確認だ」

「は…はい!」

 赤い鎧を着こみ、大きな斧を持った女性がトウタを叱咤する。

 トウタ、タカ、ワシの3人と、赤い鎧の女性リズが地下牢の探索。残りの5人が幽閉塔を探索することになっている。

「場所が分かった。あっちだ」

 探索のスキルを使ったワシが、地下牢の方向を見つけ出す。

 地下牢の方が到達するのは楽だが、見付かってしまうと逃げ場がない。時間が経つ程に発見される可能性は高くなるので、とにかく急がなくてはならない。

「なら!行くか!」

 リズが気合を入れて走り出し、タカ達は『あの女、リーダー気取りかよ』と文句を言いながら続いた。

 トウタはユリアに渡された拳銃を握り直すと、3人の背中を追いかけた。

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