油断したトウタの上方より、強大な爪が迫りくる。

「『ディレイ』!!」

 咄嗟に腕を頭上に上げ、スキルを使用する。

 気色の悪い遅延世界で、敵が蝙蝠の様なモンスターだと確認。スキルを停止させて敵の横側に回り込むと、爆発する弾丸を叩き込んだ。

「上から沢山来るよ!!」

 もう森の様なモンスターは息絶えたが、リズの言葉の通り、天井から沢山のモンスターが降ってきていた。

(待ち伏せされたのか……)

 トウタは少し下がれば部屋から出られるが、3人は間に合わずにモンスターに囲まれるだろう。トウタ1人で拠点から脱出して、仲間を呼びに行くのが最善手だろうか?しかし、自信はない。

 せめて神の御使いを助けに行くべきかとも思うが、どの道が地下牢に繋がっているのか分からない。

『こっちだ!』

「……!?」

 突如トウタの脳内に声がして、眼前に地図が広がった。

「今の声は……レイカ先生……?」

 神の御使いがトウタに通信し、地図を見せているのだろうか?なら、地図にある赤マークに、レイカ先生がいる筈だ。

「間に合うか……」

 とは言え、もうすぐ大量のモンスターが地面に到達する。この場所を埋め尽くす程のモンスターを潜り抜けて、指定された場所まで行ける気はしない。

「いや……もしかしたら……」

 トウタは昨日の戦闘で、ワシの蹴りを避けた瞬間を思い出す。

(僕のスキルは…別の使い方が出来るのかも知れない……)

 確信はない。

 でも、出来なくてはならなかった。

「『ディレイ』!!」

 スキルを発動させると、世界がぐにゃりと変化する。

 体が重くなり、世界が一瞬ラグで停止した後、周りが高速で動き出す。

(走れ……走れ……走れ……!!)

 体はゆっくりとしか動かないが、トウタは自身に走れと念じ続ける。地面を埋めるほどのモンスターの間を縫って、レイカ先生がいる筈の穴へと駆け抜ける自分を思い描く。

(!!)

 動かないトウタを狙って、目の前の敵が腕を振り上げた。

 倍速の掛かった高速の一撃に、遅くなったトウタの防御は間に合わない。

「うが……!!!」

 攻撃を食らう直前に、スキルを停止した。ハンマーに殴られたかの様な重い衝撃が、トウタの胸の中で暴れ回った。

 しかし、それはモンスターの攻撃による痛みではない。

(成功した……)

 トウタは思い描いた通り、穴の近くまで走ってきていた。後方を確認すると、トウタを狙った一撃は空振り、地面を抉っていた。

「トウタの兄貴すげえ!瞬間移動かよ!」

 タカがはしゃいでいる。彼にはトウタの動きが、そう見えたのだろう。

 しかし、何という事はない。

 トウタは5秒程度スキルを発動し、発動中は元の場所に留まっていた。そして、本来5秒間走り続けていたら到達していたであろう地点に、スキルを切った瞬間に、移動しただけなのだ。

 たぶん、Pingの高いゲームで画面がラグってる間に、移動ボタンを押し続けていると、ラグが治った瞬間に本来存在しているべき場所に移動が完了する事象に近いだろう。

「使えないスキルだよね……」

 ユリアのスキルであれば、このモンスター達を一掃できただろう。

 ジュンのスキルでも、一撃で複数のモンスターを倒せたはずだ。

(いや……力不足を公開している余裕はない……)

 トウタは顔を上げると、地図の場所へと繋がる道へ進んだ。

「こっちに神の御使いがいる筈です……行きましょう……!」

「分かったぜ、兄貴!」

 トウタの後ろを、タカがはしゃぎながら着いてくる。

 しかし、

「頼んだぜ!後ろは、あたいに任せな!」

「俺も残ろう。そこが外れだった場合、追い詰められてしまうからな」

 リズとワシは部屋に留まり、穴を塞ぐように並び立つ。

「リズさん!ワシさん!」

「トウタの兄貴早く!この数だ、ワシが居ても、長くはもたねえ!」

 トウタは唇を噛んで前を向き、歩を速める。

 後方ではモンスターの唸り声と、肉を砕く轟音が反響していた。


「いや……もしかしたら……」

 トウタは昨日のタカ達との戦闘で、ワシの蹴りを避けた瞬間を思い出す。

(僕のスキルは…別の使い方が出来るのかも知れない……)

 確信はない。

 でも、出来なくてはならなかった。

「『ディレイ』!!」

 スキルを発動させると、世界がぐにゃりと変化する。

 体が重くなり、周りが高速で動き出す。

(走れ……走れ……走れ……!!)

 体はゆっくりとしか動かないが、トウタは自身に走れと念じ続ける。地面を埋めるほどのモンスターの間を縫って、レイカ先生がいる筈の穴へと駆け抜ける自分を思い描く。

(!!)

 動かないトウタを狙って、目の前の敵が腕を振り上げた。

 倍速の掛かった高速の一撃に、遅くなったトウタの防御は間に合わない。

「うが……!!!」

 攻撃を食らう直前に、スキルを停止した。ハンマーに殴られたかの様な重い衝撃が、トウタの胸の中で暴れ回った。

 しかし、それはモンスターの攻撃によるものではない。

(成功した……)

 トウタは思い描いた通り、穴の近くまで走ってきていた。後方を確認すると、トウタを狙った一撃は空振り、地面を抉っていた。

「トウタの兄貴すげえ!瞬間移動かよ!」

 タカがはしゃいでいる。彼にはトウタの動きが、そう見えたのだろう。

 しかし、何という事はない。

 トウタは5秒程度スキルを発動し、発動中は元の場所に留まっていた。そして、本来5秒間走り続けていたら到達していたであろう地点に、スキルを切った瞬間に、移動しただけなのだ。

「使えないスキルだよね……」

 ユリアのスキルであれば、このモンスター達を一掃できただろう。

 ジュンのスキルでも、一撃で複数のモンスターを倒せたはずだ。

(いや……力不足を公開している余裕はない……)

 トウタは顔を上げると、地図の場所へと繋がる道へ進んだ。

「こっちに神の御使いがいる筈です……行きましょう……!」

「分かったぜ、兄貴!」

 トウタの後ろを、タカがはしゃぎながら着いてくる。

 しかし、

「頼んだぜ!後ろは、あたいに任せな!」

「俺も残ろう。そこが外れだった場合、追い詰められてしまうからな」

 リズとワシは部屋に留まり、穴を塞ぐように並び立つ。

「リズさん!ワシさん!」

「トウタの兄貴早く!この数だ、ワシが居ても、長くはもたねえ!」

 トウタは唇を噛んで前を向き、歩を速める。

 後方ではモンスターの唸り声と、肉を砕く轟音が反響していた。

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