妖の世界

公平は、意識を取り戻す。

見慣れた天井、そして、夏希と白夜の顔が目に映る。


「……ここは?」

「神社の寺の中だよ」

「………」


公平は、何かを思い返すように勢い良く体を起こした…すると激痛が襲う


「いったぁっ!?」

「無理しちゃダメよ、アンタは余力が尽きるまで動いていたんだから」

「余力…?あ…そうか…」


余力、即ち妖力を意味する

妖力を使って、刀身を具現化させる事が出来る。


だから、千棘が「刀身がない刀」を持っていた。それを妖力刀と呼ぶ。


使い過ぎると、命を削れてしまいやがて妖として力をなくして人間へとなる。


(だけど…俺意識を失ってたな…。鬼だっけ?暁の使い魔とか言うけど、人間だよなあれ)


公平は、静かに横に寝っ転…隣に寝てる千棘をチラッと見る。


(………意識は戻らない…か。)


それから数日後、ようやく体が動かせるまで回復する。

そして、白夜から「あの戦い」であったことを話される。


意識交差、人呼んで「シンクロ」っと呼ばれる

様々な漢字で書いても、結局はシンクロとなる。

意識を憑依する現象で、想いが強いと起きやすいっと白夜から告げられた。

ただ、憑依は決していい話ではなく…意識を憑依された意識交差シンクロ時間が長いほど、公平の意識が消えてしまう。

つまり極めて危険な事って事を釘を打たれる。


とはいえ、今のところは戦闘も起きない

結界はまた再び鳥居に貼られる。


公平は、ひとまず結界を通り抜け出来るお守りを身に付けた…。結界を一時的に弱める力がそのお守りにはあるらしい。

見た目は、普通の白銀で出来たネックレスに紫色に光る宝石が埋め込まれている。


何出てきてるのかは公平も知らない

ましてや、白夜が作ったらしいが…。

「別にあんたのためじゃないんだからね」っと一言を言われただけである。



さて、鳥居からの向こうの世界はどのようなものかと思うのとイメージしてたのと違っていた。

いや、なに…毎日が夜で妖が動ける常夜状態で

月明かりが村全体を照らしいていた。


「これは…夜の世界だな…」


背後から白夜が、ゆっくりと歩きながらこう話す。


「妖は、夜じゃないと動けない。だけど、ここ最近は変なのよ。「神隠し」された子達はここに来て楽しく暮らすはず…なのに誰もいやしない。ここ数年で誰も居なくなった」


公平の隣に白夜は立ち止まる。

そして、公平はある事を白夜に訪ねる


「そういえば、なんで「神隠し」をするんだ?俺からしたらありがた迷惑だと思うけど」


白夜は、軽く腕を組んでこう答える。


「あんた達、人間界は…親が子を虐める。それをした親もまた親にそうされてきた、負の連鎖って結局は続くもの。もちろん子供同士の虐めも、何かが起点で起きる…そう言った子達は「孤独」を知り、幸せな人を「憎しむ」。そういう人達を見て「神隠し」をするのよ、報われなかった人生を転生させて導くのもわたしたちの役目よ」


公平は白夜の頭を軽く撫でて言う


「優しいな白夜」

「…あんたさ、そうゆうの平気でやるの?」

「やらないけど」

「な、ならなんで私にやるのよ?!」

「偉いと思って」

「〜〜〜〜っ〜〜っ!!」

「どうした?顔が赤いぞ…?」

「〜〜〜っ!何時までやるのよ!!」


公平は白夜にガリッと顔をひっかかれた。


「痛いなぁ…ひっかく事ないだろ!?」

「あ、あんたさ、ほんと女の子を分かってないわね!!馴れ馴れしく撫でるんじゃないの!!」

「な、なんで?」

「あーー!!もぅ!!1から丁寧に教えて上げようかしら?!もちろん、その抜けたような顔に火の玉をぶつけてあげるサービスをつけてあげるわよ???」

「え、遠慮しときます…」

「ふん!次からは気おつけるのね!」


顔を赤くしながら神社に戻る白夜

何怒ってるんだろうと、公平はその背中を眺めて見送った。



ーーーーーー


月明かりが照らす窓、差し込む月明かり。

そこで寝ているのは、1年半前から意識不明の少女が寝ている病室ーーーーー。


「………う……っ」


その少女は、目を開ける

病室の天井を何度か瞬きしてゆっくりと体を起こす。


「…ここは…?」


病室を左右に見渡してベットからゆっくりと落ちる。足の筋力が衰えているせいで上手く歩けないがものを掴み、窓辺と歩く少女。

窓ガラスに映し出される自分の顔を見てこう言った。


「……あれ?なんで私ーーーー?」


それから数日後、病院から退院し…以前一人で住んでいたアパートへと帰宅する少女。

ドアを開けて、自分が住んでいた痕跡がある部屋を見て「…私の部屋」っと小さくつぶやく


そして、机にある学生手帳を手にしてみる

「時妖千棘」っと書かれた名前。

正しく自分のものである。


「……帰らなきゃ。公平くんと夏希ちゃんを妖の世界に置いてきちゃったし。また彼と…」


辛い気持ちになったが…軽く息を吐いて吸い直し気持ちを変える。


「帰る前に、調べないと…。あの村に何があってそうなってるのか、それにーーーーあの暁の使者についても」


千棘は、それから2週間ほど…図書館や資料館がある施設を転々しながら、通う学校へのコンピュータ室を借りながら情報を集めて行った。


月日が流れ、千棘が目覚めてひと月ーーー。


現実時間12月15日、午後6時ーーーー。


公平と夏希が入院する病室に千棘が訪れる。

病室は、お互いに間迎え部屋同士だ。

外は、雪が軽くチラつくのを病室の窓辺越しに眺める千棘。


「……。帰り方がわからないけど、白夜と何とか話せたよ。私どうやら、妖の力を取られたみたいね公平に。そこまで吸い上げないで欲しかったけど…そっちに戻るまで桜の花が咲散る頃ーーーーまた会いに行くよ。公平くん」


白夜となんで話せたのかというと、神社に祀られている狐像に触れた時に脳内に話しかけてきたのだ。


「ふーん、あんた人間に戻ったんだ?」

「あはは…好きで戻ったんじゃないよ…」

「妖の力を公平に奪われたみたいだけど、あんたは何時も無茶するわね。憑依なんて上級妖にしか出来ない禁忌の奴をよくやるわね」

「あぁするしかなかったもん、公平くんがあの刀を手にするまで妖力で暁の使い魔である鬼と戦ってたわけだしね…」

「バカップルなのかもしれないけど、今は体を休ませなさい。また無茶されたら困るわ」

「心配してる?」

「ま、まぁそうよ?アンタが消えたら私が居ないわけだしね」

「ふふっ」

「べ、別にあんたの為にそう言った訳じゃないんだからね?!勘違いしないでよっ!!」

「はいはい〜」

「アンタといい公平といい、ほっっっとっっっにっっっ馬鹿なんだからーーーーっ!!」


そんな感じの会話をした後にここに来たわけだった。

公平は、もう目覚めないまま半年が過ぎようとしていたーーーー。





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