第71話 ほう、多分これが最後ですな。最後でいいよね?



 さてと、思いも寄らぬ事が起きてしまい時間をくってしまったな。どちらにせよ進むのはあと1部屋か2部屋といったところかな。ここは魔石のダンジョンだから正直あまり興味はわかない。とはいえ、今回は護衛の依頼でここに来ているから依頼主の意向が優先されるわけで。



 ちなみに時間をくってしまった主原因の魔族であるパスタさん(名前が長すぎるから今後はこれで固定)も一緒に行くことになった。



「ところで、アンジェリカさん、時間的にもあと1部屋か2部屋がいいところだと思いますが、どうしますか? 次の日も進みます?」



「いえ、わたくしも正直もういいや、という気持ちが強いので、あと1部屋か2部屋進んだところで戻りましょう。」



「承知しました。予定も確認したところで、あとはパスタさんが問題ですかね。」



「む? 何故だ? 我は無害だぞ。」



「いや、そういうことじゃなくてね、パスタさんが加わったのはいいけど、ここは王宮のダンジョンだから、ここに入ったメンバーの人数は把握されてるわけですよ。それでいきなり1人増えたとなり、しかもあんたは魔族の大幹部だ。王宮に戻ったら騒ぎになるのは目に見えているじゃないか。」



「ふむ、そう言われてみればそうだの。姿を隠すことはできるが、残念ながら魔力を隠すことはできん。さて、どうしようかの。」



「もしよろしかったら、予定を変更してタンヌ王国で働いてもらうことはできませんの?」



「我は土地開発ができるのならどこでもかわまない。」



「私も特に反対意見はありませんね、むしろそちらの方が助かるかな。上手く開発が進めば、それだけ美味い食べ物にありつくことができる、ということですからね。」



「では、その線で父上に掛け合ってみますわ。もし、無理なようでしたらアイスさんにお任せしますわね。」



 そういうことで、パスタさんの処遇が決まった。といっても、理不尽な扱いを受けるようなことになったら救い出すつもりだ。魔族とはいえこの人? は下手な人間よりも信用できると思う。



 話ながら先を進んでいくと、広間が見えてきた。豪華になっているが、先程と違うのはこのダンジョンに合った豪華さかどうかだ。今回はしっかりとダンジョンにマッチした豪華さだと思う。恐らくボス部屋ではないかと思う、そうだよね?



「ようやくボス部屋にたどり着いたという感じですわね。仮に最後でなくてもここを攻略したら戻りたいと思いますの、それでよろしいですか?」



「正直、うんざりしてきたところなのでもちろん賛成です。」



 さてと、部屋にいる魔物は一体何かな、と。では、アマさんよろ。




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『ダークドラゴン』・・・おお、これは珍しいのう。こやつはダークドラゴンじゃが、アルビノ種じゃの。こんなもの滅多にお目にかかれるものではないが、流石はダンジョン、何でもありじゃな。外見は白めじゃが、闇属性の攻撃は全く効果がなさそうじゃな。こやつは聖属性が弱点じゃ。とはいえ、お主達にはあまり関係がないか。ふむ、戦姫達が戦うには丁度いい相手になるのではないかの? お主やマーブル達では役不足といった感じじゃな。では、頑張って倒すのじゃぞい。


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 なるほど、確かに聖属性が弱点ならアンジェリカさん達に任せた方がいいかな。偶然とはいえ戦姫の3人には「ドラゴンスレイヤー」の称号もあるしね。では、相手も確認したことですし先に進みますか。



「マーブルジェミニ通信からの報告ですが、あそこにいるのはダークドラゴンだそうです。色が白いのはアルビノ種という理由みたいです。」



「ダークドラゴンですの? わたくし、ドラゴンと戦うのは初めてですわ。」



「大丈夫ですよ。先程の骨砕き祭りでアンジェリカさんだけでなくセイラさんやルカさんにも龍殺しの称号がついておりますし、聖属性が弱点みたいなので、戦姫にはうってつけの相手ですね。有利に進められると思いますよ。」



「そ、そうですか。ドラゴンが相手ですから不安がありますが。」



「うん、流石にドラゴン相手では荷が重い気がする。」



「・・・ちょっと怖いかも。」



「大丈夫ですよ。3人でもお釣りがきますが、万が一でもオニキスが護ってくれますので。」



「ところで、お主は参加せぬのか?」



「今回は見学の予定だね。さっき言ったように戦姫の3人でも十分倒せる相手だし、何よりあの3人の見事な連携を見ておきたいしね。」



 そう言って、広間に入っていくと、白っぽいドラゴンが語りかけてきた。



「よく、ここまでたどり着いたな人間どもよ。ん? 魔族もいるか。人間達だけでここまでたどり着くのはほぼ不可能であるから多少驚いたが、それなら納得だ。」



「確かに我は魔族だが、先程一緒になったばかりでここまで進んだのは人間達だけだそ。」



「何? 人間達のみでここまでたどり着いたというのか? これは面白い。それだけの強さを持っているなら少し戦い方を変えるとするか。」



 何か勝手に語っている上に、こちらの話を聞こうともしない。これは面倒なやつだ。一方的に話を進めていく。



「ここには我を含めて5体の同族がおる。まとめて戦っても面白いが、それでは圧倒的すぎて面白みがない。そこで、提案だ。人間達よ、まずは我以外の4体と戦って勝利せよ。1体ずつ倒して行くのもよし、まとめて倒していくのもよし。とにかく我以外の4体を倒したら、我が最後に相手をしてやる。決まったら話しかける通い。」



 おいおい、自分の台詞に酔ってるよこいつ。無視してこいつだけさっさと倒すということも考えたが、さっさと取り巻きを倒してびびらせるのもありかな。とはいえ、他のドラゴンが何であるか知っておいた方がいいかな。って、こちらが聞く前にアンジェリカさんが白い龍に話しかけていた。



「ところで、あなた以外のドラゴンはどの種類になりますの? それをお教えいただけないと作戦も何もあったものではありませんわ。」



「フハハハハ、それもそうだな、では、教えてやろう。我はセイントドラゴンだ。残りの4体はそれぞれファイアドラゴン、アイスドラゴン、アースドラゴン、ポイズンドラゴンだ。さあ、どう戦うかゆっくりと考えるがよい。」



 お、アイスドラゴンがいるか。さて、相手もわかったことですし、ここはダンジョンだから肉も落とさないでしょうし、さっさと仕留めますか。



「先に言っておくと、ドラゴンとはいえそれほどの相手ではありません。所詮はダンジョン産のドラゴンです。ということで、ここは弱点云々ではなく真っ向勝負で行きたいと思います。」



「アイスさん、あなたはいつも真っ向勝負で挑んでいる気がするのですが、気のせいでしょうか?」



「うん、いつも力押しだよね。」



「でも、そこがいい。」



「それは、気のせいですよ、気のせい。」



「まあ、そういうことにしておきますわね。ところで最初の4体はどうなさいますの?」



「最初の4体は私達だけで倒します。あの白いのは先程言ったように、戦姫の3人でお願いしますね。」



「我は戦闘では役に立たんから、見学しておるぞ。」



 あ、パスタさんの存在忘れてた。



「では、マーブル隊員はポイズンドラゴンをお願いします。肉も落とさないでしょうし、お好きに料理してください。圧倒的な差を見せつけるもよし、わざとギリギリの勝負に見せるのもよしです。」



「ミャア!」



 マーブルは気合の入った敬礼を見せてくれた。うんうん、可愛いよ。



「次にジェミニ隊員ですが、アースドラゴンをお願いしますね。マーブル隊員と同様にお好きに倒して下さい。」



「キュウ(了解です、相手を見て決めるです!)!」



 ジェミニの敬礼も気合が入っていた。やはり可愛い。



「私は、ファイアドラゴンとアイスドラゴンの2体を倒します。ファイアドラゴンが相手ではちと物足りないので、アイスドラゴンも私が倒したいと思います。」



「アイスさん、それは構わないのですが、アイスドラゴンとの相性はかなり悪くないですか?」



「大丈夫ですよ、まあ、見てて下さい。」



「ライム隊員は保険として戦姫の護衛です。恐らく必要ないとは思いますが、念には念を入れてです。」



「うん、いつも通り、お姉ちゃん達の護衛だね。わかったー!」



 ライムはピョンピョン跳ねていた。うん、これもいいものだ。



「4体の大蜥蜴を倒しましたら、のこりの白いのは戦姫の3人に任せます。あのトカゲ、自分をホーリードラゴンと言っておりましたが、ダークドラゴンですので、特にアンジェリカ隊員の攻撃はかなり効くと思います。セイラ隊員もルカ隊員も火属性で攻撃すればたやすく通るはずです。恐らく弱すぎて拍子抜けしますよ。で、オニキス隊員はいつも通りアンジェリカ隊員の護衛です。恐らくアンジェリカ隊員に攻撃を仕掛けるのに精一杯のはずですから。」



「ピー!」



 オニキスもピョンピョン跳ねていた。高さもライムに近づいてきたな、うんしっかり成長してるね。



 作戦も決まったことだし、偉そうにしている白い大蜥蜴に伝えますかね。いや、ここはアンジェリカさんにお願いしますかね。



「決まりましたのでお伝えいたしますわ。」



 アンジェリカさんが、ダークドラゴンに誰が誰と戦うかを伝えると、ダークドラゴンは震えていた。



「人間の分際で舐めおって。いいだろう。後悔するなよ。」



 何か怒ってたけど、まあ、いいか。そう思っていると広間がさらに広がっていく。拡張が終わると、魔方陣が4つ出現してそれぞれのドラゴンが出現してきた。



「愚かな人間どもよ、対戦する同胞の前に立つがいい。」



 言われたとおり、ポイズンドラゴンにはマーブルが、アースドラゴンにはジェミニが、ファイアドラゴンとアイスドラゴンの前に私がそれぞれ移動する。それぞれの正面に立つと(私の場合は三角形の頂点に立つ感じね)、何かガラスのような仕切りが出てきた。



「お前達の望み通りにしてやったぞ、一応言っておくが、4体の同胞を全部倒すまではここからは出られない。ということは、お前達は一生ここから出られないということだ。我々に舐めた行動を取るとどうなるか前達の身をもって知ってもらおうか。」



 向こうは、こちらが手出しできないようにしたつもりのようだが、私としてはジャマが入らないということで逆に好都合だ。どうせ肉は落とさない、落としてもいきなり塊が出てくるだけだ。さてと、どう料理してやろうか。

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