第47話 ほう、童話再びですか。

 テシテシ、テシテシ、ポンポン、うん、やはり場所は変わっても朝起こしはこうでないとな。いつも通りの肉球+@で起こしてもらってご機嫌だ。戦姫の3人は、というと、まだ起きていないな。今のうちに朝食の準備でもしますか。昨日は移動だけしかしてないからなぁ、軽めのものにしておきましょうか。まだ、昨日採取した山の幸は残っているな。とか考えてはいるが、私は料理系の技能はないし、前世でも特にこった料理を作った記憶も無い。まあ、いわゆるごった煮である。とはいえ、スガープラントのおかげで調味料は問題ないのでいくらでも味は変えられる。



 そんなこんなで準備をしていると、戦姫の3人が部屋から出てきた。しっかりと身だしなみも整っている、お見事。私といえば、特に寝間着も何もないのでいつも通りの格好である。



「アイスさん達、おはようですわ。」



「アイスさん、マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃんおはよう!」



「みんな、おはよう。」



「おはようございます、アンジェリカさん、セイラさん、ルカさん。」



「ミャア!」「キュウ!」「みんな、おはよー。」



 互いに挨拶を交わして朝食の準備ができたので、朝食をいただく。



「昨日の夕食でも思いましたが、アイスさん料理上手なのですね。」



「うん、宿の食事よりおいしいよ。」



「これからは作ってもらう?」



「いえいえ、私はそれほど大した腕ではないですよ。素材がいいから美味しいんですよ。」



 別に謙遜しているわけでは無いのだが、謙遜しているように映っているらしい。確かにスガープラントで味付けはかなり楽になった上にライムが材料を綺麗にしてくれているから自分で作った料理が美味しくなったのは事実だ。それを素直に伝えているだけなんだけどね。



「それで、いつ出発しますか?」



「いつでもかまいませんわよ。ところで、今日も夜はここで休むということでよろしいのかしら?」



「ここが気に入ってくれたのでしたら、かまいませんよ。」



「もちろん、ご厄介になりますわ。なまじ宿に泊まるより快適でしたし、今でないとここには来られないでしょうしね。」



「うん、是非泊まっていきたい。何と言っても居心地がいいしね、ここ。」



「最悪、ずっとここで過ごすのもあり。」



「気に入って頂けたのなら幸いです。ただ、私もマーブルの転送魔法がないとここには来られませんけどね。何せここからタンバラの街へ到着するのに数十日はかかってますので。」



 私がそう言うと、アンジェリカさんが驚く発言をした。



「そうなんですの? 折角ですから、ある程度王都の近くまで進んでから、しばらくとどまるのも一つの手ですわね。依頼期間は1ヶ月もありますから。」



「王女殿下がそうおっしゃるのであれば、私はかまいません。」



「・・・賛成。」



 セイラさんやルカさんまでも、賛成している。まあ、いいけどね。依頼期間は1ヶ月あるから。それにしてもさっさと王都に行って王都でクエスト受けた方がいいんじゃないかと思うけど。と考えていたら、私の考えはお見通しと言わんばかりにアンジェリカさんが言った。



「アイスさん的には、できるだけ早く王都について、王都のギルドでクエストを受ければいい、とお考えだと思いますが、わたくしは仮にも王族。王都に戻ってしまったら、こんなに気軽に冒険なんてできませんのよ。仮に気軽に冒険できたとしても、こんなにくつろいだ状態で過ごすことなんてできないと思いますわ。」



 なるほど。そういう事情もあるのか。とはいえ、早く帰らないとそれはそれで問題では?



 朝食とその片付けも終わったので、軽く打ち合わせをして昨日の転送ポイントまで移動する。少し進むと魔物の気配がちらほら出てきた。といっても少数のためそのまま進むことにした。更に進んでいくと、オークの集団らしきものを探知したが、この程度だったらということで、マーブルとジェミニに行ってもらった。この猫達は昨日のあの一件のストレスが解消し切れていないらしいので、譲ってもらった。事情はわかっているらしく快く譲ってくれた。



 マーブル達はあっさりと殲滅した。倒したオークは12体。もちろんありがたく食事に使わせてもらう。倒した後はジェミニとライムの出番だ。水術で血抜きを済ませると、ジェミニが各部位事に解体、ライムが綺麗にする。綺麗になったところでソリに入れる。この一連の流れも慣れたもので、30分もかかっていない。戦姫の3人も慣れたものか、マーブル達をほめまくりはしたものの、もう驚くことはなかった。



 更に進んでいくと、今度はコボルトが5体くらい探知にかかった。先程は譲ってもらったので今回は敵の数も手頃ということで戦姫の3人で狩った。3人は息ピッタリのコンビネーションで次々とコボルト達を倒していく。こちらもあっさりと5体倒して解体する。コボルト肉は食べられないこともない程度の味らしいので、肉としての回収は遠慮する。手先が器用らしく、持っている武器はなかなかいいものだったので、それらを回収、牙は素材として売れるのでそれも回収。残りは穴を開けて燃やした。



 こんな感じでちょこちょこ魔物が襲ってきたので交代しつつ倒していった。この日の成果は、オーク12体とコボルト5体、ゴブリン20対にグラスウルフ10体といったところだ。2日目の野営ポイントに到着したが、これだけ倒しても普段よりかなり早い到着だそうだ。戦姫3人の希望でとりあえず転送ポイントをこっちに移してねぐらでスガープラントについていろいろ知りたいそうだ。



 戦姫の3人は、スガープラントを名前では知っていたが実物を見たのは昨日が初めてだったらしく、興味はかなりあったそうだ。昨日はそれ以上にお風呂と洗濯に気がいってしまったとのこと。そういえば、私がねぐらの近くに植えたスガープラントは確か5つくらいだったのだが、戻ってみると2つくらい増えていた。ジェミニに聞いてみると、あの植物はある程度は増えるけど、一定の範囲以上に繁殖しないそうだ。味だけではなく、生え方もチートか。まあ、手入れが楽なのでありがたいのですがね。



 スガープラントの一件でジェミニと知り合ってから仲間になった経緯を話す。特にスガープラントを引っ張ったできごとに3人は興味津々で、自分たちもやってみたいということで、実体験をしてもらうことにした。とはいえ、メンバー的に力不足である。あのときはフォレストオークやフォレストオーガという力自慢の種族やジェミニたちヴォーパルバニーも見た目に反して凄いパワーがあった。今回は私もそうだが、戦姫の3人もお世辞にも力自慢とはいえない。見た目的に力のなさそうなジェミニが主力なのだ。ということで、根付いていなければともかく、根付いていたら引っこ抜くのは無理だろう。でも、楽しんでやることが重要だ。



 ねぐらに戻ると、早速スガープラントを引っこ抜く作業をした。獲物の分配は夕食後でもできるということで、暗くなる前にやっておきたいという強い要望を受けたからだ。戦姫の3人は各自手袋もしっかり装着して気合も十分だ。ジェミニにはねぐらにあった蔦を私とジェミニに縛ってこちらも準備完了だ。



 大きな蕪ならぬスガープラント引っこ抜きイベントinねぐらの結果はというと、、、やはり無理でした。暗くなるまで頑張ったけど、びくともしなかった。特に3人はへとへとではあったが、心は死んでいなかった。何と、明日もやりたいと言ってきた。まあ、楽しかったのでじゃあ、明日も、ということになった。



 夕食は今日狩ったオークの今できるだけのフルコースを作った。といっても、オークのステーキにオークのモツ煮くらいだけどね。それでもみんな満足してくれたのでよしとしましょう。その後はスガープラントを実際に食べてもらった。



「え? これがスガープラントですの? 王宮で何度か味わったことのある甘みでしたが、この味はスガープラントだったのですね。直に食べたのは初めてですが、凄く甘いのですね。今日の疲れがとれましたわ。」



「何これ? すごく甘い!!」



「最高。今までに味わったことの無い甘さ。」



「明日こそ、見事に引き抜いてみせますわ!!」



「はい、私達の底力を見せましょう!!」



「明日こそ頑張る。」



 こらこらルカさん、手を抜いていたんかい!!



「食べる分には掘り返せばいいだけなので。」



「いえ、アイスさん! 自らの力で掘り返すことに意義があるのです!!」



「は、はい。」



 アンジェリカさんのあまりの気迫に押されてしまった。



「で、でも、どうしても食べたいときは掘るのもやぶさかではありませんわ、、、、。」



 今ぼそっと、言ってたよね。まあ、楽しんでくれてるからよしとしますか。



「明日はさっさと進んで、今日の続きをいたしますわよ!!」



 いや、アンジェリカさん、狩りもしっかりやりましょうね。



 そんなこんなで夜も更けていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る