第9話

 「アルト、アタック、トゥッシェ、ポアン!」


「ユナゼロ(1-0)!」




先生がまたなんだかよくわからない言葉を発しながら手を使ってジェスチャーをした。




エペの時と違ってマスクを叩かれたのはわかったけれど、速すぎだろ…なんのタメもなく突っ込んできた気がする


けどこれはそういう競技(種目)なのだろうか……!?




「サーブルは試合展開が一番早い種目だからねぇー、すぐに動き始めないと一瞬で負けちゃうんだからー」



だからってこっちは何も聞かされてないのにいきなり試合とかやらされてもわかんねーよ、と思いつつもまた相手が元の位置に戻っていくのであった。




「オンガード……プレ・アレ!」




試合が再開される、また攻め込まれると思い今度は剣先を顔のあたりまであげる……しかし今度は相手が自分から後退していく……これはこっちが攻めてこいということなのか?ならそうするしかない! そう思って相手に向かっておもいっきり走りはじめた……




「アルト!」




先生が待てといったようなジェスチャーをする。今度は何がどうしたというんだ?




「新人ちゃん、あのね、それは反則だから!」



はぁ、私が何をやらかしたというんだ?




「サーブルって種目はね、もう30年ほど前なんだけどルールが変わって前進するとき後ろ足が前足を超えてはいけないことになったの、当時オリンピックでサーブルを観戦してたIOCのお偉いさんが開始と同時に両方が突っ込んでいくだけの試合展開を見てこんな競技ルール変えなきゃ五輪種目から外すぞって激怒したとかでね、実際はどうか知らないけどそれに則ってね、君の場合は前に行くとき右足が左足より前に出ちゃダメってこと、後退する時は足がクロスしていても問題無いんだけどね。」




えーっ!? なんだよそのルール、そんなこと教えられてもないのにわかるわけないだろ……どこまで適当なんだ

この人は……


「なんやそんな当たり前のことも教えてなかったんかいな、先生ったらホンマめちゃくちゃやんけ!」




「こうやってファイティングしながら教えたほうが覚えやすいでしょ?はい、じゃもっかい行こっか!」



一体全体なんなんだよもう……開始の合図でまた関西弁の人はさっきと同じように後退して行く、それを私は後ろの足が前足を超えないような進み方……まさにカニ歩きで追っていく。ただでさえ剣を持って視界の良くないマスクを被った状態でこの足運びである…ぎこちないというレベルではない。

しばらく進んだところで相手の移動速度が落ちる、実際の試合ではエンドラインというものがありそこを超えると

相手の負けになると昨日教わったがこれもそうなのだろう、距離が近くなってきたので剣を出してみる-すかさず

相手も私の剣にぶつけてきた……


「ピッピーッ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る