第5話

「今のは腕を突かれたんだよね。」

え、今さっきちょっと手を伸ばしただけなのに!?

「突こうと思って腕を伸ばすとひじが上がってくるよね?そこに剣を出しただけ」


……え、そうだったのか……? 自分が突くことばかり考えててそんなとこを狙われるなんて考えもしなかった、

ルールは単純みたいだけどそういうとこ慎重にならないと勝てないんだろうなぁ……(しみじみ)


「まあ、いまのはちょっと初心者には厳しかったかな? 次はもうちょっとハッテンバックちゃんに

考えて動くくらいの余裕は与えてやりなさい。でも簡単に突かせ手もダメだからね!」


「そんなこと言われてもなかなかむずかしいっす…」


ホントそうだ。だって私まだ構え方しか教えてもらってないし…というか名前覚えられてるよ…このままやめたら


今後気まずくなりそうだ……


「オンガード!……プレ・アレ!」


試合再開だ、といってもさっきはなんかやろうとした途端に突かれて終わったから今度は手も出しにくい…

とりあえず後ろに下がってみるか……そうするとエイノさんも自分が下がった分前に詰めてきた…

どうすりゃいいんだ…?


結局どうすることもできずに下がり続けるしかないじゃん……アゼルバジャン!


「アルト!!」


先生が大きな声で何か言ったのが聞こえた。


「新人ちゃん、下がってばかりじゃ勝てないでしょ、ていうか試合だとエンドラインってものがあるんだからね、そこより後ろに下がったら負けになって相手に一点入ることになっちゃうよ?」


「それは最初に言っておいてくださいよ!」


まあ、たしかに下がってばかりじゃ勝負にならないもんな。じゃあ結局どうすりゃいいって話だよ?


「はい、またここまで戻ってきて! やりなおすよ……オンガード!……プレ・アレ!」


だからどうしろと?構えから動けない…そういえば最初に聞いた金属音って剣がぶつかった音だったのかな?


なら自分も剣で剣をぶつけてみるか、どうせさっきみたいにすぐやられるだろうけど…


ほかにやることが思いつくはずもなくさっきより控えめに前に出ながら相手の剣を叩きに行った。

チンッチンッ…カッ、カキーン……


相手も叩き返してきて甲高い金属音が鳴り響いた。

やっぱりこういうことだったのか!


「おっ、いいじゃんいいじゃんその調子だよー!」


先生にわけもなく褒められる…それでここからどうしろと?結局何の解決にもなってないような……


「あ、会議あったの忘れてた! んじゃあとは頼む!!」


そう言うと先生は足早に体育館を出て行ってしまった…気まずい…このあとどうしたら良いんだろう……?

ならしょうがない、それならもうこれしかないと思った……。

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