第11話 【愛奈編2】デートが始まるのかよ…

 ダ〇バーシティの中に入ると、思った以上に人がたくさんいた。


「ここまで人が多いと酔いそうだな…」


「何言ってるんですかセンパイ? そんなこと言ってたらコミケにも行けませんよ?」


「いや、俺はコミケ行かないし」


 たぶん、いくら先輩に誘われても俺はコミケには行かないだろう。


 店を探しながら歩いていると、愛奈が俺の肩をトントンとしてきた。


「センパイ! あの店寄っていいですか!」


「別にいいけど」


 愛奈が指を指したのは洋服店であった。そして店に入るやいなや、服を手に取り始めた。


「そろそろ新しい服が欲しかったんです。どうですか? センパイ♪︎」


「ど、どうですかって言われても…」


 流石にファッションにうとい俺では、何がいいのかさっぱりである。


「別に素直な感想でいいんですよ?」


 素直な感想と言われても…


「・・・まあ、似合ってると思う…」


「ちゃんと言えるじゃないですか、それをしっかりと鈴華先輩にも言うんですよ♪」


「んなこと言われたってなぁ」


「じゃあ、センパイが選んで下さい」


「なんで俺が!?」


 おいおい、俺なんて同じTシャツをいくつも買うような人間だぞ? 


「何でもいいですよ?」


「じ、じゃあこれで」


 俺が取り出したのはパーカーだった。


「センパイ、なかなか安ぱいな所行きましたね……… 確かにパーカーっていいですけど、私あまり着ないんですんよね。………っ!?」


 すると、愛奈はなぜか少し驚いた顔をした。値段が高かったのだろうか。


「そうなのか? じゃあ他のも探して見る」


「せっかくなのでこれにします! センパイが探してくれたので♪」


 そう言い、愛奈はレジへと向かって行った。

・・・あ、こういう時は男が払うべきだっただろうか?


 そして、俺はあのパーカーに英語で 『You’re special to me.』と書いてあることに気付ことはなかった。


 そして、俺達は雑貨店に寄っていた。


「センパイ? 何を見てるんですか?」


「ああ、これか? 鈴華に買ってってやろうかなと思って」


「センパイって、鈴華先輩のこと本当に好きですよね…」


「そんなの当たり前だろ。てか、半分呆れ気味に言われた気がするんだが」


「そんなことないですよ~、でもセンパイってそんなにセンスなかったんですか?」


「どうしてそうなるんだよ」


「だって、それ買って喜ぶ女子高生なんていますか?」


「鈴華は絶対喜ぶぞ? なんたってだからな!」


「おかしくないですか!?」


 うん、そんなこと知ってる。


「埴輪って、今の女子高生の好きなハニワって歌のとかじゃないんですか!?」


 そうなんだよなぁ、違うんだよなぁ。


「鈴華先輩ってもしかしなくても変な人ですよね…」


「なんて言うか、鈴華の趣味は俺も着いていけん」


「……でも、見れば見る程可愛く見えて来ました。 一つ買おうかな……」


 どうやら、愛奈も埴輪の呪いに掛かりそうになっているらしい…


━━━※━━━


「結局買ったのか?」


「はい… まさか買ってしまうなんて…」


 なるほど、こうやって埴輪信者が増えていくのか。


「センパイは何を買ったんですか?」


「ん? 俺はこのお台場限定の埴輪ってのを買ったぞ」


 お台場限定だから、他の場所では売ってないはず、早く鈴華の喜ぶ顔が見たいな。


「にしても、随分ずいぶんと歩きましたね、わたしのどかわいちゃいました」


 気づけば二時間以上、俺達は歩いていた。


「確かにな、どうするんだ? やっぱこういう時は、タピオカってのがいいのか?」


「センパイ、 その発想は古いですよ♪」


 愛奈はニマニマと笑いながら言った。


「古い!? おいおい、俺は今を生きる男として一応色々調べてるんだぞ? だからタピオカも知っている。」ドヤァ


「いや、なんでタピオカでドヤれるんですか…」


 そんなに古い発想じゃないと思うんだが…

 てか、時代に乗れないオッサンでも見るかのような眼差しはやめい。


「よくわかってるじゃないですか♪」


「勝手に人の心を読むなよッ!?」


 なにこの子、超能力でも使えるのかな? 機関の人間か何かなのか?


「じゃあイマドキってものをご教授願おうか?」


「ふふ、いいでしょう、アレですッ!!」


 愛奈の指した方には何やら繁盛しているところがあった。


「なんだあれは?」


「あれは最近色々なところで流行っているレモネード専門店です! タピオカはモチモチやミルクティーのなめらかな味わいなどが美味しいんですけど、レモネードはとてもスッキリしていて夏バテにも良いですし、何よりもたれる心配が無いので飽きること無く飲めるんです!」


 愛奈はそう言うと、どや顔でこっちを見た。


「でもその分、結構繁盛してるっぽいぞ? あれに並ぶのか?」


「そんなの並ぶに決まってるじゃないですか!」


「・・・仕方ないな…」


━━━※━━━


「センパイ、あそこのテーブルにしましょうか♪」


「ああ、わかった」


 お目当ての物を手に入れた俺たちは、フードコートで一息ついていた。


「思った以上に時間がかかりましたね」


「そうだな…そのせいで体力をごっそり持っていかれたぞ…」


「センパイ、なにひ弱なこと言ってるんですか、アレくらいで音を上げてたら情けないですよ?」


 仕方ないじゃないか、いつも引き籠って生活している人間だぞ? 逆にここまで来れた俺を褒めていただきたい。まあ、最近は鈴華のおかげで外出も増えたけど。


「っておい、俺をそんな哀れみの目で見るのは

やめろ…」


「そんなことないですよ? そんなことより、飲み物の感想をいただいてもいいですかね?」


「そんなことより!?」


 ちょっとショックたが、確かにレモネードのことをすっかり忘れていた。


「・・・ん! うまい!」


 柑橘類の甘味と酸味が丁度良く、そしてスッキリとした後味のため甘ったるさが残らない!

そして、炭酸の刺激も味を引き立たせている!


あ、別に某グルメ漫画とかの真似じゃないからな?


「どうですかセンパイ♪ 言った通りじゃないですか~! ん~!この他のフルーツを入れたのも美味しい~!」


 よっぽど飲めたことが嬉しいのか、いつもより上機嫌た。


 すると、愛奈は俺の方にレモネードを差し出してきた。


「これも美味しいですよ! 一口どうですか?」


「え、い、いや、それは…」


 そ、それはつまり、間接………キス!?

 いや、待て待て……… 思春期の中学生じゃあるまいし、別に気にすることはないのか?いやでも、まだ鈴華ともしてないんだぞ?お、俺は、一体どうすればいいんだ……!?


「………? センパイどうしたんですか? 人混みで体調崩しましたか?」


「あ、あぁ、少しだけな。だから俺は遠慮しとくわ」


「………そうですか、おいしいのに……先輩のビビり」


 愛奈は頬を膨らませて言った。


 最近、愛奈が頬を膨らませるのが十八番おはこのように思えてきた。あと、最後に何か言っていたようにも思えたが、声が小さくて聞き取れなかった。


「………難聴系チキン主人公乙」


「おい、それは聞こえてるからな」






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同棲かと思ったら彼女できました 竜王 @6103utidaa

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