第10話 【愛奈編1】デートが始まるのかよ…

 そして、あっという間に土曜日になった。


「ここが『ゆり〇もめ』の駅か…」


 俺は待ち合わせの場所である新橋に来ていた。どうやらここからゆりか〇もめに乗り、お台場まで行くそうだ。


「センパ~イ! 待ちましたかぁ~♪」


「いや、待ってないぞ」


「あ………ぁ………」


「うん、聞きたくないが聞こうか、何でそんな驚いた表情でこっちを見るんだ?」


「だって……センパイのことだから待ったとか言うかと思ったので……」


「お前は俺を何だと思ってんだ? 逆にお前が俺の後ろから来なかったことが驚きだが」


「センパイの中での私ってどうなってるんですか?」


「後方突撃型ハイスペッククソ女」


「何ですかそれッ!? てゆうかそこにハイスペックは求めてません!」


 俺の例えに驚愕したのか目を見開いて驚き、そして顔をリスのように膨らませ怒った。


 コイツの表情の使い方だけは尊敬並みだと思う。・・・てか上目遣いやめろ。


「んなこといいから早く行くぞ。・・・と言いたいとこだが」


「なんですか?」


「いや、何で待ち合わせ場所をここにしたのかが分からなくてな」


 そう、待ち合わせ場所は別にここじゃなくてもいいのだ。なぜなら、ここは俺たちの住んでる町からはまあまあ遠いからだ。


「そ、それはやっぱり駅で集合した方がデートっぽいからに決まってるじゃないですか」


「ここに来るまでにも駅を利用してるぞ」


「いいじゃないですかそんなこと! それより早く行きますよセンパイ!・・・もう、折角センパイが珍しく気を使えてたのに台無しです…」


「そ、そこまで言わなくたっていいじゃん…」


 流石に鋼のメンタルでも傷付くのだが…


「はぁ~、わかったよ…」


━━━※━━━


「おおおーーーッ!!!!」


 お台場に着くと、俺はその見慣れな光景に驚いた。雑誌では見たことはあったが、実際の方がインパクトがある。


「おいおい、地図を見ただけで圧倒されるそぞ?」


「確かにそうですね。私は一回目じゃないですけどやっぱりいつ見ても慣れないですよね♪」


 いつの間にか機嫌を直している愛奈は、とても楽しそうに歩いていた。


「センパイ♪ 何か忘れてませんか?」


「・・・? なんだ?」


 すると、いつものニマニマが始まった。


「手、繋がなくていいんですか?」


「はぁッ!?」


 驚きすぎて声が裏返ってしまった。すると、愛奈は強引に俺の手を取った。


「お、おい! やめろよ!?」


「良いじゃないですか、今日は私とセンパイのデートなんてすから♪」


 こ、こいつ、鈴華がいないことを良いことに…


「それじゃあ行きましょうかセンパイ♪」


「流石にこんな人前で恥ずかしいんだが…」


「・・・そうですか、やっぱり私じゃ駄目なんですか?」


「ああ、駄目だ」


「そんなに即答しないでください!?」


 いくら上目遣いを使おうが俺は負けん。


「本当にセンパイはヘタレですね。なら、これならどうですか?」


「お、おい! お前何を……!」


 ムニュッ


 すると、俺の腕に柔らかい何かが当たった、というか押し付けられた。


「どうですかセンパイ、私って結構胸に自信あるんですけど?」


「おおおお、お前! なな、何してんだ!?」


「センパイ動揺し過ぎじゃないですか? あまりうるさいと目立ちますよ?」


 そ、そんなこと言われても、無理に決まってるだろ……!


「てか、早く離れてくれ、恥ずかしいだろ…」


「じゃあ、手を繋いでくれるならいいですよ?」


「・・・わかった…」


 まさか愛奈の罠にあっさりと引っ掛かってしまうなんて…


「でも、こんなところを鈴華先輩に見られたら、殺されそうですね♪」


 笑顔で怖いこと言わないで欲しい…


 しかし、歩いてみると以外とカップルの方が多いため、俺が一人で歩いている方が目立つんじゃないかと思うレベルだ。


「とりあえずお台場と言えばダ〇バーシティですよね、そこでお買い物とかしましょうか」


「あ、ああ、そうするか」


 俺はあまり詳しくないので、愛奈の指示に従うしかない。


 目の前まで到着するとそこには、かの有名な巨大なガン〇ムが仁王立ちしていた。


「すげぇ! 生で見るのは初めてだ!」


「センパイ、今日一でテンション上がってるじゃないですか」


「仕方ないだろ? ガン〇ムと言えば男のロマンだろ? そりゃはしゃぎたくもなる!」


 そう言い、俺はスマートフォンで写真を撮りまくっていた。


「センパイ… 楽しいのはわかりますけど、そろそろ私が恥ずかしいのでやめて貰っていいですか……」


 愛奈に言われ周りを見てみると、通り掛かった人達が俺のことをチラチラの見ていた。


「わ、悪い……」


「まったく… じゃあ行きましょうか、センパイ♪」

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