第8話 アニ〇イトに行くのかよ…
━━━日曜日━━━
先輩にアニ〇イトに誘われたため、集合場所である秋葉原に来ていた。どうやらまだ先輩は来ていないようだ。まあ、十分前だからな。
数分ほど経ち、そろそろ来るだろうと思ったが、周りを見渡そうとは思わなかった。理由は周囲の人々が教えてくれるから。
「おい、なんだあれ?」
「り、リムジン!?」
「どこかのお嬢様?」
ほら、ざわつき始めた。
はぁ~、いちいちリムジンでのご登場はやめて貰いたいところだ。
そして、俺の目の前の道路に停まるとリムジンから先輩が颯爽と降りてきた。どう考えても秋葉原で見る光景じゃねぇ…
「遅くなって悪いね星くん、待たせちゃったかな?」
「いえ、さっき来たところですので」
「うんうん、星くんはしっかりと気遣えるようだね、これも鈴華くんのお陰かな」
いや、ただ本当のことを言っただけだが…
「それじゃあ行こうじゃないか」
「そうですね」
━━━※━━━
アニ〇イトに着くと、興奮を抑えきれないのか、ハッ〇リくんのように目にも止まらぬ早業で入り口へと向かった。
「ちょっ! 先輩待ってください!」
「待ってられないよ! だって一年間も外国にいてアニメ文化に触れてないんだから!」
確かに一年間はキツいよな…
「でもあまりはしゃがないでくださいよ? 先輩はいるだけで目立つんですから」
そう、変装をしているせいで無駄に不審者っぽく見えるためかなり人目が気になる。絵面的には不審者がアニ〇イトで少女たちを見てハァハァしてる様にしか見えない。
「見てくれ星くんっ!」
俺の言葉を全く聞いていない…
「このラノベここまで進んでいたのかッ!?」
「そうですよ?」
「くそぉがぁーー!!」
「静かにしてください、追い出されますよ」
先輩が取り出したラノベは『
「へぇ~、ドラマCD付きじゃないですか」
うん、買おう。
「星くん、これを見たまえっ!」
「はぁ~次は何ですか?」
「ミルトシスマイクだ!」
・・・え? 何その物騒な名前の題名は。
どうやら、最近女性からとてつもない勢いで人気が出ている作品らしい。
内容的には、見ると4んでしまうマイクに選ばれた何人かのキャラが、ラップバトルで切磋琢磨して国家に立ち向かうというものらしい。
・・・俺も見てみたい。
「先輩、俺は上の階に先に行ってます」
「うん、了解した」
一度別行動にし、俺は見たかったコーナーに行った。先輩を一人にさせるのは少々心配だが、まぁ大丈夫だろう。
・・・そう思った俺が馬鹿だった…
下の階が騒がしいので見に行ってみると、そこでは、男性と口論になっていた先輩の姿があった。
「このアニメを馬鹿にするなッ! 見たことも無いような奴に何が分かるんだッ!」
「は? なんだよお前?何勝手に怒り出してんの? 別に俺は思ったことを言っただけだよ」
「知りもしないくせに・・・・・・・醜い…」
「あぁ! ッんだと!」
うん、確実にマズイよなこれ…
とりあえず止めに入ろう。
「何をやってるんですか先輩?」
「ほ、星くん…」
「あ? んだよコイツ、邪魔すんなよ」
何で先輩は面倒事を作るんだ… こんな時のはこれが手っ取り早い。
「すいませんでしたッ!!」
「あ?」
「俺の連れが馬鹿なことしてすみません!」
「わ、わかった、から…もういい」
「お客様!? どうされたんですか!?」
ようやく騒ぎに気がついたのか、店員さんがやってきた。
あー、出禁にならなければいいなー
そのあと、男性の方も冷静になったのか、今回は両方が悪かったということになった。
━━━※━━━
「すまなかった!」
テーブルに先輩と向かい合って座っていた俺は、テーブルに頭をめり込ませる先輩を死んだ目で見下ろしていた。
「今回に関してはかなり怒ってますよ…」
「す、すまなかった…」
アニ〇イトから出た俺たちは反省会も兼ねて『トトール』という店に来ていた。
「何であんなにムキになったんだ?」
「私の隣でいきなりアニメの悪口を言い始めてな、ついカッとなってしまった…」
「はぁ~、ムカつくのも分かりますけど一応先輩はご令嬢なんだから」
「は、はぃ…」
普段の先輩からは想像できないその弱々しい声からは反省しているということは伝わってくる。
でもまあ、説教はこのくらいにしておこう。
・・・なぜなら、
「お待たせしました、
来たぁ~これを待ってたんだ!
「先輩、今回は見逃しますけど、次やったらタダじゃおきませんよ?」
「あぁ、気をつけるよ………って、タダじゃおかないって一体何をする気だい?」
「大丈夫ですよ、先輩のアニメグッズが危険に
「わかった!今後一切こんなことがないようにします!」
顔を青ざめながら、穴でも開くのではないかと思うくらいテーブルに顔をめり込ませていた。
俺はもちろん、そんなものは無視して珈琲を飲んだ。
━━━※━━━
日も暮れ、空が徐々に赤く染まり始めていた頃、俺たちは公園のベンチに座っていた。
「星くん、今日は一日ありがとう」
「いいですって、俺も久々に先輩と遊びにこれて楽しかったので」
「そう言って貰えると嬉しいな………にしてもまさかあの星くんに彼女が出来るなんて、一体私がいない間に何があったのかな?」
「先輩じゃ、あり得ないようなことですよ」
「面白い冗談を言うね、私には全校生徒という味方がいるのだよ? それを知ってての発言かい?」
いや、それは冗談無しに怖い…
「でもそうか、鈴華くんに先を越されてしまったな」
「・・・? 何を越されたんですか?」
「いや、何でもない。今日は本当にありがとう、私は帰らせてもらうよ」
「わかりました」
先輩は俺の言葉を聞くと、口角をあげて公園の外へと歩き出した。
「先輩! 一ついいですか!」
俺は歩いている先輩に声をかけた。すると先輩は、夕焼けで紅く輝く髪を風で
「どうしたんだい?」
どうしても、最後に言っておきたいことがあるのだ。
「一々リムジンて来るのは止めてください!」
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