第5話 こんな出会い方なのかよ…(前編)

「━━━てなことがあったんだ…」


「そうですか、困りましたね」


 土曜日になりデートに来ていた俺と鈴華は、レストランで休憩をしていた。その際にこの間ちぃちゃんに言われたことを話した。


「でも流星さん、何で今その話を? 家でも出来たと思いますけど?」


「いや、何となく言いずらくて…」


「はぁ~、だからと言ってデートにその話を持ってきますかねー」


「はい、ごめんなさい…」


 全く持ってその通りである。


「でもまあ、先生に言われたなら仕方ないですよね。でもどうやって一緒にいればいいんでしょうか? 授業だってありますし、休み時間しか会えなくないですか?」


 確かにそうだ、学校で先輩と一緒になれる時間帯なんて休み時間中くらいしかない。つまり、休み時間中のみ護衛してればいいということなのか?


「それは休み明けにちぃちゃんに聞いておくとして、実は鈴華に聞いて欲しいことがある」


「なんですか?」


「前に先輩と俺が何で知り合いなんだって聞いただろ? その事についてだ━━━━」


━━━※━━━


 はぁ~、しんどい、俺は外になんて出ないで家でゴロゴロしたいのに…


・・・にしても、おっつーはまだ来ないのか?


「はぁはぁ、悪いな星、遅れちまって」


 そこにやってきたのは、走って息切れをしたおっつーだった。


「ほんとに、俺を誘っておいて遅れるなんて、万死に値する」


「そりゃいけねーな、にしても、スゲー人の数だな」


 そういい、おっつーは周りを眺めた。


 今日、俺はおっつーに誘われて、秋葉原に遊びに来ていた。正直、あまり来たいとは思わなかった。


 周りには、沢山のアニメグッズを付けたザ・オタクといった感じの人や、メイド服の姿をした女性。カルチャーの違いを感じさせるこの場所は、オタクでも何でもない俺にとってはあまり居心地が良くない。別にこの人たちのことを嫌がっているという訳ではない。ただ、自分がこの雰囲気に溶け込めないだけのことだ。


 おっつーだって同じはずなのに、なぜこんな所に行こうと言ったのだろうか。


「いやー、やっぱりいつも来ないような所は新鮮でいいなー」


 理由はそれだけか…


「これからどこに行く気だよ、メイド喫茶か?」


 その質問にそれもいいなー、とおっつーが首を縦に振った。やめてくれよ…


「・・・ん? やけに騒がしいな?」


 すると、おっつーがとある行列を見つけた。その行列は、アニ〇イトという場所からだった。


「確かあそこってアニメグッズを沢山売ってる場所だよな?」


「ああ、そうだな………そうだ! 中に入ってみないか星」


 え? あんな人ごみマジで勘弁なんだが…


 すると、おっつーに肩を掴まれ無理やり引っ張られた。


 すると、丁度同じタイミングで慌てて入ろうとした女性と俺がぶつかり、その拍子に女性の方が倒れてしまった。


「すみません! だ、大丈夫です……か?」


 女性の方を見て俺は疑問を抱いた。その女性はサングラスとマスクと帽子とマフラーを巻いて、いかにも不審者だった。しかし、転んだ拍子に帽子、サングラス、マスク全てが取れてしまったらしく、帽子からは長くて綺麗な髪が下りて、その姿があらわになってしまった。


 その時、俺は言葉を失った。顔を隠していたため気付かなかったが、とてつもない美女だった。


 すると、その女性は慌てて顔を隠して立ち上がった。


「すすす、すみません! 急いでいるので!」


 そういうと、女性はアニ〇イトの中へと入っていった。


「美しい人だったな……って?おっつー?」


 おっつーの方を見ると、何やら気にかかったような顔をしていた。


「どうしたんだおっつー?」


「い、いや…何でもない………気のせいだよな………」


 何やらおっつーの様子がおかしいが気にしないでおこう。


 とりあえずアニ〇イトに入った俺たちは、その行列が何の行列なのかを知った。


「らいと…のべる? ってなんだ? 本らしいけど、そのサイン会があるのか」


 聞いたことのない本に俺は(?)を浮かばせていた。


「ん? あれって…」


 行列を見ると、さっきぶつかった女性も並んでいた。どうやらこれが目当てのようだ。


「さっきの人、あれが目当てだったらしいな………おっつーさん?」


 おっつーは、さっきの女性をじっと見つめ、眉間にシワを寄せていた。


 え? 何? 恋なのかな?なんて、そんな顔には全く見えないがな。


「どうした? そんなにあの子が気になるのか?」


 ついに、おっつーにも好きな人が出来たのか、そういうことに全く興味がないと思っていたのだが、俺は嬉しいぞ!


 そんな何目線かもわからないようなことを考えていると、おっつーは首を横に振った。


「いや、なんつーか、あの人に似てる人を見たことがあるような気がして…」


「そうなのか? でもまあ、そんなのどうでもいいだろ?」


「そら、そうだけどよ…」


 どうやら、まだ何か引っかかっているらしい。おっつーがここまで気にするなんてとても珍しい。


「とりあえず移動しようぜ、ここにいても何もないんだし」


「ああ、そうだな」


 このままだと、ずっと居座り続けないので、俺はおっつーを言い聞かせ、店を見て回った。


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