第4話 厄介事がまた増えるのかよ…

 教室に着き時計を見てみると、あと数分で授業が始まる時間だった。


「遅かったですね流星さん、何を話してたんですか?」


 鈴華が話しかけてきたとたん、一斉いっせいに皆の目線が俺に集中した。しかし、俺のメンタルは鋼よりも頑丈に鍛え上げられているので、こんなんじゃひるまない。


…そう、いくら周りから「誰だっけアイツ」なんて聞こえても悲しくなんてないし………


 そういえば次の授業って何だっけ?

えっと…確か国語だから………


「皆早く座れー! 授業始めるぞー」


 扉が開いたとたんに教室に響き渡った声、だがそこには誰もいなかった。わけではなく、視界を少し下げたところにちぃちゃんがいた。


 生徒はすでにそうなることを予想して、視線はいつも低い。このクラスの「平均視線(俺命名)」が下がっているのすら感じる。


 最近はちぃちゃんの扱いも変わり、女子の間ではアイドル的存在になっていて、よく休み時間に囲まれている。男子からは…まあ可哀想だから言わない。


 ちぃちゃんは不便そうな教卓に着いた。きっと仁王立ちをしてる状態なのだろうが、顔しか見えないのでよくわからない。


 前、悲しいことに、職員室で教卓を小さくしろと抗議しているちぃちゃんの声を聞いてしまったことを思い出した。


 そんなことを考えていると、ちぃちゃんが、教卓を叩いた。


「聞いて欲しいことがある! 皆も知ってると思うが、あの雨美 麗衣香が帰ってきてしまった!」


 まるで厄介者が戻ってきたかのように言った。教師がいいのかよ… まあわからなくもないけど。


「こっちでも対策は取るつもりだが、生徒の皆にも気をつけてほしい」


 ちぃちゃんはそれだけしか口にしなかった。しかし、全員が理解していた。


 きっと、さっきみたいな混乱を起こさないようにということだろう。


「連絡はこれだけだ! よし、それじゃ授業始めるぞ!」


━━━※━━━


 6限目の授業が終わり、帰宅部の俺は本来鈴華と帰る時間なのだが、ちぃちゃんに授業後に「放課後、職員室に来てくれ」と言われたため、職員室に向かっていた。


「失礼します、2年の星流星です。ちぃちゃ…小倉先生に用があってきました」


 職員室に入ると、そこには待ってましたと言わんばかりに手を振るちぃちゃんの姿が見えた。


「おー悪いな、放課後に呼び出して」


「いや、それはいいんですけど、どうかしましたか?」


 聞くとちぃちゃんは目を輝かせた。嫌な予感しかしない…


 そして、俺に嬉々として言った。


「なあお前、雨美 麗衣香と仲いいだろ?」


・・・


「図星なんだな…」


「いやぁ~そんなことないですよぉ~」


「は? 何だお前気色悪いぞ、てかキモい」


 うん、愛奈のマネをしてみたのだが、やはり愛奈以外は許されないか。てかいくらなんでも酷くない? 先生だよこの人?


「別にそんな大変なことをしろとは言わん」


「じゃあ、俺は何をすればいいんてすか?」


「お前に頼みたいのは、麗衣香のそばに常にいることだ。要するに監視をしてもらいたい」


この先生はいきなり何を言い出すんだ?


「いや、流石にそれはいきなり言われても…」


「内申点………上げたいと思わないか?」


「うっ………」


 くっ……なんて卑怯なんだよこの先生。


「確か、授業をあまり真面目に受けてないらしいなぁー。寝てたりとか寝てたりとかな」


「わかりました!すみません!なので二回も言わないでください!」


 この先生、マジでたちが悪いんだが…


「わかればいいんだ、じゃあよろしく頼むな。くれぐれも問題は起こすなよ」


「は、はい……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る