第2話  また一人増えるのかよ…

 午前の授業が終わり、クラスが騒がしくなり始めた。そんな中、俺の前に来たのは鈴華だった。


「流星さん、お昼一緒に食べませんか?」


「了解、じゃあどこにするか」


「いつもの場所でいいんじゃないですか?」


「そうだな」


 そんないつも通りの会話をした。というのも、昼飯を一緒に食べることは今に始まったことではない。


 鈴華と付き合い始めたあの一件から三日経ったころに、鈴華が一緒に食べようと誘ってきたのだ。最初は戸惑ったが今では慣れたもんだ。………もちろん周りの視線も...


 俺たちが昼飯を一緒に食べてたら、そりゃ噂にならないはずもなく。クラスの男子からはそれはそれはお熱い目線をもらっている。


「じゃあいつも通り中庭のベンチにでもいくか」


「はい!」


 そして俺たちは中庭へ向かった。


「ん、今日の弁当は肉多めだな」


「はい、この間流星さんが肉が食べたいと言っていたので」


 そこまで考えてくれてるのか。


 こんな日々がいつまでも続けばいいなのだが。もしこの日常を乱すやからが現れたら、俺はそれを全力で叩きのめすことだろう。


 すると、どこからか走ってくる音がした。


「おい! 星!ヤバイことになってぐふッ!」


「おっと、悪い。ついつい殴ってしまった」


 折角の安らぎの時間にうるさい奴だ。


 そんなことを考えていると、倒れていたおっつーが立ち上がった。


「痛ってぇ! 何しやがんだ! 親父にも腹パンされたことないのにッ!!」


・・・何言ってんだこいつ?


「悪かったって、で? ヤバイこととは?」


「ん、ああ、じ、実は……あの人が帰ってきたんだ」


「あ、あの人?………ってまさか…」


「ああ、あの人だ」


 マジか、折角鈴華との問題も解決して落ち着いたってのに、また、厄介なことに…


「あのー、あの人って誰のことですか?」


 トントンと話が進んでいくため、鈴華は何がどうなってるのかわからないというような状態だ。


「そう言えば鈴華は知らなかったな、まあ、見てみればわかることだし行ってみるか」


━━━※━━━


 校門まで行ってみると、生徒が集まっていた。すると、リムジンらしき車から、制服を着た一人の生徒が出て来た。


 髪型は完璧なロングで、髪と目の色は綺麗な紫。歩いている姿は誰もが見惚れてしまうほど美しい。


 その美しさゆえに、男子だけでなく、女子からも人気をはくしていた。


 すると、女子生徒が次々に群がってきた。


「「「キャーーー!!」」」


 その波は一瞬にして、その女子生徒を飲み込んだ。


「いやー、にしても本当に人気だねあの人」


 すると、隣にいたおっつーがそんなことをいった。


「ああ、全くだ…」

 

 数分が経つと、騒ぎを聞きつけた教師が来て、どうにか騒ぎを沈めた。その姿はまるでDJポリスだった。


「俺たちも帰るか」


「ああ、そうだな、あの人に見つかると厄介だからな」


 そんな会話を聞いていた鈴華は、頭に(?)マークを浮かべていた。

 

「・・・? どうして厄介なんですか?」


「そ、それはだな……」


 そして、鈴華に説明をしようとしたその時、運悪く、あの人と目が合った。


「やあ、久しぶりだね星くん! それに乙黒くんも!」


「ひ、久しぶりです。戻って来てたんですね」


 俺がそう言うと、鈴華は再び(?)マークを浮かべた。


「珍しいですね、流星さんが敬語なんて」


「ああ、この人は雨美あまみ 麗衣香れいか先輩。三年生だ」


「そ、そうだったんですか、通りで敬語だと」


「ん? 星くん、ところでその子は?」


 そう言えば紹介がまだだったな。


「私は花園 鈴華と言います。今年流星さんたちのクラスに転校して来ました」


「ほう、通りで見たことない顔だと思った。ところで鈴華くんは流星くんたちとはどういう関係だい?」


「えーと、乙黒さんとひかりさんとは友達で、流星さんとは………」


 すると鈴華は俺の方を見た。すると、ジェスチャーで、(い、言ってもいいんですか?)と顔を少し赤くして言った。きっと言うのは少し恥ずかしいのだろう。


「鈴華、俺から言うから」


 鈴華は「は、はい…」と戸惑いながら言った。


「先輩、実は鈴華は……」


「鈴華くんは?」


「俺の彼女です」


「またまたぁ~~」


「本当にです」


「・・・」


 すると、先輩は固まって動かなくなった。


「・・・先輩?」


「嘘だぁああああああああああああああッ!」


「せ、先輩! 落ち着いて! 素が出てる!皆みてるから!」


 いきなり叫び出したため、生徒は驚いて静まり返っていた。そして、パニック状態の先輩は俺の言葉で正気に戻った。


「わ・・・悪いね…」


 まったく、この先輩いつもはおしとやかなキャラだけど、興奮するとつい素が出てしまう。


「でも、一体どうしてそうなったんだい?」


「えーと、実は俺と鈴華。わけあって同棲してるんですよ」


「そんなバカなぁああああああああああッ!」


「だからうっせぇええええええええええッ!」


 本当にうるさい先輩だ。おかげで注目の的だぞ。


 すると、鈴華が、肩をトントンと叩いた。


「あの~、この先輩見るからに普通とは言いがたいのですけど? リムジンに乗ってましたし…」


「ああ、この先輩は超大手企業のご令嬢様だから……こう見えて…」


「えっ!? そんな方とどうして知り合いなんですか!? 流星さんらしくありません!」


 り、鈴華さん? それはどういう意味かな?


「まあ、色々あってな、いつかまた話すから」


 そういうと、鈴華は「わかりました」といいながらも、聞きたそうな顔をしていた。


「じゃあ、そろそろ解散にするか。先生がたの視線が痛いし」


「それもそうだね。あ、そうだ。」


 すると、何か思い出したのか、俺の耳元に近付いてきた。


「すまないが、これから付き合ってくれないか?」


「いいですよ別に」


「そうか! ありがとう!」


 そういい、この場は一度解散となった。

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