第19話 夏休みは終わったんですよね。

 やっぱり、考えれば考えるほど頭が真っ白になっていく。


 それはまるで、私の周りから誰もような寂しさ。


 あの時、なぜ私はあんなことを言ってしまったのだろう。


 あの時、冷静になって話を聞いていれば、きっとこんなことにはなってなかったはず。


 これから、何をすればいいのか。


「鈴華ちゃん? どしたのボーっとなんかして。大丈夫だって、きっと星と仲直り出来るから」


「・・・そうでしょうか?」


「そうに決まってるじゃん。」


「ひかりさんは説得力がありますね」


「そう? 何でそう思うの?」


「なんて言うか、流星さんに似てるところですかね」


「鈴華ちゃんは私に喧嘩を売ってるのかな~。ならその喧嘩買った!」


「ちち違います!」


「じゃあどこが星に似てるの?」


「なんて言うか、とても友達思いといいますか、今も私のために明るくしてくれてますし」


「恥ずかしいからやめてよーマジで」


 ひかりさんは、顔を赤くして手で仰ぐ仕草をした。


「でも、そっか…友達思い……か」


「何か言いましたか?」


「う、ううん! 何も言ってないよ! それより早く学校行こ!」


 するとひかりさんは、早歩きで私より少し先へ進んだ。


 学校に行けば絶対に流星さんもいる。正直、会いたくない。


 怖い、もしも拒絶されたらと思うと、怖くて仕方がない。


 考えているうちに、学校ついてしまった。


 下駄箱で靴を履き替えていると、流星さんと鉢合わせしてしまった。すると、流星さんがこっちに近付いてきた。


「お…おはよう…鈴華…」


・・・ッ!


 私は声をかけられた瞬間、後退あとずさりした。


「・・・ひかりさん…私、先行ってます…」


 私は耐えきれず、その場から逃げてしまった。


 教室に入ると、皆が私に挨拶をしてくれた。

席に着くと、皆は私の周りを囲って話し始めた。


 私が転校してすぐ夏休みだったから、皆からしたら、まだ数日間しか経ってない転校生なのだろう。


 流星さんたちとはもう一ヶ月くらい経っていると思うと、とても不思議な感覚になる。


 すると、流星さんたちも、教室に入ってきた。


 ひかりさんは席に座り、乙黒さんの席の周りは私のせいで皆が群がっている、そのため、流星さんと一緒にいる。


「鈴華さんどうしたの? ぼーっとして」


 すると、目の前にいた一人の女子生徒が話しかけてきた。


「あっ、いえ、なんでもないです!」


「そ、そう? ならいいけど」


 ホームルームが始まり、皆が席についた。すると、隣の席に座っている乙黒さんが文字の書かれた紙を渡してきた。


 その内容を見ると、


『今日のお昼休み、話したいことがあるから、少しだけ時間もらえないかな?』


 とだけ書いてあった。


 私は紙に『わかりました』とだけ書いて渡した。


 昼休みになり、乙黒さんが人がいないところがいいな、といい。図書室に行った。


 図書室の中は本当に誰もいなく、見た感じは綺麗でも、あまり利用者が多くないのか、ほこりっぽかった。


 すると乙黒さんは、一番奥端にある机の椅子に座った。


「ここでいい?」


「は、はい…」


 私はよくわからないまま椅子に座った。


「あの、お話しと言うのは……?」


「別に大したことじゃないんだけどね。星のことで。大きなお世話だと思うけど…」


 そんなことを言うと乙黒さんはニヤニヤし出した。


「いやー、今日の星は今まで見たことないくらい凹んでて星には悪りぃけどちょっと面白かったんだよね。限定盤CD付きのライトノベルを買えなかった時以上!」


「は、はぁ…?」


 すると、いきなりそんなことを言い始め、私は全く理解に追い付かなかった。


「そ、それがどうかしたんですか?」


 すると、乙黒さんは立ち上がり、クスクスと笑い始めた。


「いやー何て言うか、ざまーみろッ! 的な? 前から気に食わなかったんだよ!」


 乙黒さんからとは考えられない発言だった。すると、乙黒さんから笑いが消えた。そして、少し真剣な表情で私を見た。


そして、私は恐る恐る聞いた。


「本当にそう思ったのですか…?」


 すると



「・・・なんて、思うわけないだろ? ごめんごめん、つい悪役みたいなことしたくなっちゃって」


「は、はぁ…?」


「確かに面白いとは思ったけど、流石に俺もそこまでグズじゃないしな、グズは星だけで十分だ。でもね花園さん」


「は、はい…」


 その言葉を聞き少しほっとした。しかし突然すぎて(はい)しか言えない。すると、乙黒さんは微笑みを浮かべた。


「星が、今までで一番凹んでいたのは本当だし、つまりはそれだけ星にとっては花園さんのことがとても大切な存在なんだよ」


 その言葉に私は言葉を失った。


 乙黒さんの言葉がまるでナイフが本当に刺さったかのように心臓が痛くなった。


「はぁ~、俺こんなこと言うキャラじゃないんだけどなぁ~」


 そう言うと、机にだらーんと手を伸ばして倒れた。そして、あごを机に付けたままこっちを向いた。


「そう言えばこうやって二人で話ししたのって初めてだよね」


「たしかにそうですね。私のためにわざわざありがとうございます」


「いやいや、俺はただ言いたかったこと言っただけだから……」


「そんなことないですよ!」


「はは、そうかな? 心配なんだよね、星が。花園さんは何で俺と星が仲良くなったか知ってる?」


「い、いえ…」


「星は昔、いじめられてたんだよ。理由は簡単、よく言う(人間は誰かをいじめたりしないと一緒にいれない)的なので運悪く、物静かな星に矛先が向いたから。くだらないことをされまくって………でも、誰も助けなかった。そして俺が助けた。でも今思うと、少し後悔こうかいしてる…」


「……後悔?」


「ああ、運がよかったって言うのは変だけど、あの時は、星が学校に来てくれてたから助けられた。最悪の場合は俺が行動する前に不登校になっていた。そうだったらきっと、星はずっとあのまま一人でいたと思う」


 そう言うと、乙黒さんは唇を噛んだ。


「いえ、乙黒さんのしたことはとても凄いことだと思います。もしかしたら自分も一人になってしまうかもしれないのにそれを恐れずに行動出来るのは普通のは人には出来ないと思います」


「別に俺は恐れていない訳じゃない。実際、それが原因で行動が遅れたんだから…」


「確かにそうかもしれません。でも、行動に移した。それだけでいいんじゃないんですかね。………私は誰にも助けてもらえなかったので…」


「………? どうしたの?」


「いえ、なんでもないです…」


「そう?………って!もうこんな時間!?」


 時計を見てみると、すでに授業の5分前くらいになっていた。


「クソ~まだ飯も食ってねーのに… 授業遅れるけど食べてから行こうかな…」


「じゃあ食べてから教室戻りましょうか」


「えっ、それだと授業遅れちゃうけど大丈夫? 俺を置いて行ってもいいだよ?」


「いえ、私もお腹空いたので、あと色々助けて貰いましたのでこれくらいは」


「………悪いね」

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