第18話 立ち直れんのかよ…

鈴華が家から出て行ってしまった。


 その出来事から三日が経った今、あまりのショックに俺は食欲も無く。布団にくるまっていた。


 ピンポーン


 すると、インターホンが鳴った。


 俺は鈴華かもしれないと思い、布団から出た。


「どちら様でしょうか…」


「あ、先輩、私です」


 そこにあったのは鈴華ではなく愛奈だった。


「何しに来たんだ…」


 こいつはあんなことがあっても懲りないのか?


「謝りに来たんです…」


 今更いまさら何しに来たと思ったが…そんなことか…


「はあ…帰ってくれ」


「・・・嫌です…」


「帰れ」


「嫌ですッ!」


・・・・・・


「・・・わかった…好きにしろ…」


━━━※━━━


「本当にごめんなさいッ!」


「いや…だからもういいから…」


 根気負けして家に入れてしまった………根気無さ過ぎだろ俺…


「てか、もう謝るのはやめてくれ…見てるこっちが嫌になる…あとおでこ擦り減るぞ」


 愛奈はさっきからずっとひたいを机にくっ付けたままだ。流石の俺も申し訳ない。


 謝ったところで何かが変わる訳じゃないしな。


「考えていればこうなることは予測出来たはずだ。俺はそれをしなかった。だからこうなってしまった…今回は俺に責任がある。だから愛奈が気にする事じゃない」


「気にしますよ…気にするに決まってるじゃないですかッ!! 私が無理矢理先輩の家にお邪魔して……しかも、押し倒して…」


「それは…」


 確かにそうだが、こんな言い争いをしてたら埒が明かない。


「他に用がないならもう帰ってくれ、考えなきゃいけないことがある」


「鈴華先輩ですよね」


「・・・他に何がある」


 俺はまだ答えをわかりきっていない。そんなこともわからん俺はどうかしている。でも、わからないならわからないなりに考えないといけないと思った。


「・・・わかりました。では私は料理作ってから帰ります」


「何でそうなるんだよ…」


「センパイ。最近ご飯食べたのはいつですか?」


 なるほど、全てお見通しなわけだ…


「み…三日前」


 愛奈はあきれたと言わんばかりの顔でこっちを見た。


「はぁ…だと思いました。それじゃ考えようとも頭が回りませんよ?」


 確かに愛奈の言う通りだ。でも何でこいつはここまでしてくれるんだ? 普通なら気まずくて顔すら見れないはず…………普通ならな。


 それにいつの間にかいつもと変わらん喋り方だし。こいつは本当に切り替えが早い。


「台所お借りしますよ。あっ、食材はありますか?」


「ああ、鈴華が買いに行ってくれてるか食材には困らないはずだ。」


「センパイ…ほとんど鈴華先輩にやらせてるんじゃないですか?」


 確かに、鈴華は何かと面倒見が良いためつい甘えていたのかもしれない。実際、家事はほとんど鈴華に任せっぱなしだった。まあ俺がやろうとすると鈴華に指摘を受けまくるからなんだけど…


「じゃあとりあえず作ってきますね♪」


 そう言うと、愛奈は料理を作り始めた。


・・・てかこいつ料理も出来るのか。



 三十分ほど経過すると、愛奈が料理を持って来た。


「センパイ、できましたよ」


 テーブルの上を見ると、そこには美味しそうな炒めものがあった。


「なるべく食材を使わないようにしたので見た目はシンプルですけど、美味しいですよ♪」


 俺は気づくとテーブルに座っていた。どうやら人間は、欲には抗えないらしい。三日も食べてないんだ、自分では気づいていなくても体は限界なのだろう。


「じ、じゃあ…いただきます」


 俺は箸を手にし、炒めものを口に運んだ。


「・・・・・うまいな…」


「どうですかセンパイ~美味しいでしょ?」


 これはうなずかざるおえない。


 そして、いつの間にか皿の上が綺麗さっぱりなくなっていた。


 そのあとも、皿洗いや洗濯など、全てやってもらった。いや、マジでだらしないな俺、泣けてくるわ。


「じゃあ私はこれで帰りますね。また明日♪」


「ああ、なんか悪いな、ここまでやらせて・・・ん? おいお前、今明━」


 俺が全て言い終える前に、愛奈は玄関の扉を閉めた。


・・・マジかよ

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