第17話 夏休みは終わったのかよ…

 夏休みも終わり、二学期が始まろうとしていた。


 結局、夏休み中に鈴華が帰ってくることはなかった。俺が居ない時に一度荷物を取りに戻ってきただけだった。


「どうすりゃいいんだよ…」


 きっと今日、鈴華に会うはず……


「・・・・・・」


「なに悩んでんだ?」


「おわッ!?」


 すると、視界がおっつーの顔でいっぱいになった。


「驚かすなよ…あと早く離れろ、キモい」


「おいおい、キモいはねぇーだろ、俺たち親友ダヨナ♪」


 コイツこんなキャラだったか? 夏休み中に頭打ったんじゃねーの。親友だよなって言って金取る奴みたいじゃん。


「今日のお前はいつにも増しておかしいな」


「本当に失礼な奴だなお前は…折角俺が元気付けてやろうと思ったのに」


・・・元気付け? なるほど、だからいつにも増して明るかったのか…


「何で悩んでんだ? まあどうせ花園さんのことだろうけどよ」


 どうやらおっつーにはお見通しのようだ。


「そうだよ、色々あってな」


 俺は鈴華と何があったのかを全て話した。


「ハッハッハ!そんなことがあったのか(笑)」


「・・・何がおかしい…俺は真面目に凹んでるんだぞ、あと自分で(笑)言うなよ」


「いやー俺の知らない間にそんな面白いことになってたとはな、本当にお前は素質があるな」


 素質って、何の素質だよ…厄介事に巻き込まれるくらいしかないぞ。


「で? これからどうするんだ?」


 どうする? とはきっと、鈴華とどう和解するかということだろう。


「うーん、それは…………おわッ!」


 すると、俺は盛大に転んだ。考え込みすぎて転んでしまったのかと思ったがそうではないらしい。


「あれ? 君は確か海の家で見た、ひかりの幼馴染みの………愛花ちゃんだっけ?」


「愛花じゃなくて愛奈ですぅ~もお、乙黒センパイ、そのくらいは覚えてください!」


「ごめんごめん」


「それでセンパイは何をやってるんですか?アスファルトでも舐めてるんですか?」


 本当にいちいち腹が立つ奴だな…そろそろ本気で、痛い目みせてやろうか


「お前が転ばせてきたんだろ…」


 俺はすっと立ち上がり、怪我がないか確認した。運良く擦り傷程度だ。


「ドンマイです! センパイ!」


「いや、何のなぐさめだよッ!?」


 そんな、ふざけたトークをかましていると、おっつーが顔を歪ませて見ていた。


「どうした? そんなナメクジみたいな顔して?」


「いや…何て言うか、お前らって仲良かったんだなと思って。星が女子と仲良いなんて夢か?………てかナメクジってどういう意味だ」


「仲良くねーよ!」

「仲良いです!」


「なんでだよ!? フツー被ったら同じこと言うだろ!」


 自分で振っといてナメクジはスルーした。


 いつも通りの会話過ぎて逆に落ち着く。


 確かに愛奈コイツはムカつくが、実を言うと、今こうしていつも通りに話せているのは愛奈のおかげだ。


 というのも、鈴華が家を出て行ってしまった三日後、愛奈が家に来たのだ。それだけ聞くと、懲りないでまた来たのかと思うが、そうではなかった。謝りに来たのだ。


 まあ、そのあとも色々あって、おかげで気持ちは少し楽になった。


「あ、学校着きましたね! じゃあセンパイ♪私はこれで」


 そういうと、愛奈は走って行ってしまった。


「はぁ~疲れた…」


「・・・ふふっ」


「何がおかしい…」


「いやぁ、良い後輩が出来たんだなと思って」


 どこがだ…


 俺は心の中でつぶやいた。


 そして、おっつーと下駄箱に向かうと、ばったりひかりと鈴華に出くわした。


「おはよう、ひかり、花園さんも」


「おはようおっつー、星も」


 おっつーもひかりも気を使ってくれたのか、いつもの様に言った。しかし、その場の空気はとても重く、ずっしりとした雰囲気になった。


「お…おはよう…鈴華…」


「・・・ひかりさん…私、先行ってます…」


 そういうと、鈴華は走ってどこかへ行ってしまった。


「鈴華ちゃん…」


「だよなー、おい星、これからどうするんだ」


「どうにか解決してみせる…」


 そう、絶対に決着をつけてみせる。

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