第12話 奢るは災いのもとなのかよ…
「・・・美味しいな」
鈴華とついでに愛奈で、昼食をとることになった俺は、優雅にコーヒーを飲んでいた。
・・・自分で言っといて今さら恥ずかしくなってきた。
俺は親父の影響でいつの間にかコーヒーマニアになっていた。
サイデリアは初めて入ったのでここの安いコーヒーを侮っていたのだが、思った以上に美味しかったのでコーヒーの味は値段できまるものではないことがわかった。まあ、普通のドリンクバーだけど…
でも、俺の大事なコーヒータイムを邪魔するかのようにいるコイツのせいで、俺はゆっくり味わえないでいた。
「でもセンパイ・・・いくら奢りでもデートでサイデリアはなくないですか?」
「うるせえ、お金がないのが高校生なんだから奢ってもらってるだけいいと思え、あとデートじゃないし、そう思うなら邪魔すんなよ」
コイツさえいなければ、もう少し良いところでも奢れたっての…
なんて生意気な後輩だ。後でコイツのこと、ひかりに相談しよう。
「(モグモグ)なにか言いましたか?」
「人の話しを聞けよ!? てかお前どんだけ食べてんだよッ!」
コイツ、見かけによらず食欲旺盛だな・・・ここがサイデリアじゃなければ、危うく残金がゼロになるところだ。
「・・・」
ところで…さっきからずっと黙り込んでいる鈴華だが、どうしたのだろう。
「鈴華、どうしてさっきから黙りっぱなしなんだ?具合でも悪いのか?」
話し掛けてみても反応が一切ない。
まぁ、きっと歩き疲れただけだろうと思い、しかたなくコーヒーを
「ところでセンパイと鈴華先輩は付き合ってるんですか?」
「ッ! ゲホッゲホッ! お前いきなり何言いだしてんだ…」
コーヒーを飲んでる時に言うせいで
「カタカタカタカタ」
鈴華を見てみると
「そうですけど!流星さんと付き合ってますけど!悪いですか!?」
「・・・へ?」
「落ち着け!キャラ崩壊してるぞ!?」なんて冗談言えないくらいまずくないか!? 一体どうしちまったんだ鈴華は・・・とにかくまず落ち着かせなければ!
「鈴華、一度落ち着こうか、周りの人たちも困っちゃうから!」
「・・・あっ、ご、ごめんなさい…」
俺の言葉で正気を取り戻した鈴華は、その状況に気づいたようで、しゅんと背中を丸めて座った。
「・・・っあ!?」
「なんだ急にッ!?」
すると次は愛奈が何を思ったのか、急に大声を出した。
「ごっめ~んセンパイ、私これから用事があるんですよ~、なので私はこれで失礼します!」
「あ! ちょ、待てッ!」
そう言うと、逃げるかのように愛奈はこの場を去っていった。
「まったく、何なんだアイツは…鈴華、少しは落ち着いたか」
「はい…すみませんでした…」
鈴華は涙目で、今にも崩れそうな感じがしたので、早く家に帰った方がいいのだろうが、どうしてもこれだけは聞きたかった。
「なあ鈴華、さっきは何であんな意地を張ったんだ? 俺みたいな奴何かと付き合ってるなんて噂になったら嫌じゃないのか?」
「そんなわけないじゃないですか!? 性格が良くて優しくてかっこいいのに!? あと頭も…よくて?確かにオタクで女たらしなところはありますけど…」
最初の方は良かったけど途中からおかしいだろ、てか最後の方はまったく自覚はないし女たらしじゃないし。
でも、まさか鈴華がここまで俺のことを思ってくれていたのはとても嬉しかった。
「でも別に流星さんのことをバカにしているわけではないので…」
「そうか、ありがとな、鈴華」
「うぅ・・・はい…」
鈴華の顔は、俯いていても赤くなっているのがわかった。
「あ、あの、流星さん…」
すると鈴華は何か言いたそうに俺を呼んだ。
「あの…その…も、もしよければなんですけど…」
すると赤くなっていた鈴華の顔がさらに赤くなっていく。熱でもあるのかと思ったがそうではないようだ。すると俯いていた鈴華が勢いよく顔を上げた。
「私と付き合ってくださいッ!!」
・・・・・え?
「えええええええぇぇぇぇぇぇッ!!」
どどどうしたんだいきなり! 聞き違いってわけではないよな…
「あの~お客さま、他のお客さまの迷惑になりますので、大声は出さないでもらえますと…」
「あっ、すみません」
よく見てみると俺は周りからかなりの注目を浴びていた。そりゃ大声出していきなり立ち上がるヤツがいたらビビるわな。確かに申し訳なかったが、今はそれどころではない。
鈴華が俺に告白してくるなんてはっきり言って意味がわからない。罰ゲームなどで告白するヤツもいるが、鈴華に
確かに俺にとっては断る理由が無いくらい嬉しいことなのだが…どうする? 本当にこのまま、はいと言っていいのだろうか…
「少しだけ考えさせてくれないか?」
「・・・はい…」
鈴華には悪いが、俺はここで答えを出すことは出来ない。
もし、軽い気持ちで言ってしまえば、鈴華を傷つけてしまう可能性があるかもしれない…いや、そんなのはただの言い訳で、逃げているだけなのかもしれない。本当は俺の平凡な暮らしが消えてしまうのが怖いだけなのだろう。
「あの、流星さん…そろそろ帰りませんか? あまりここに居座るのもよくないでしょうし…」
身に付けていた腕時計を見ると、確かにかなりの時間が経っていた。どうりで店員さんが睨んでくるわけだ。・・・それだけじゃないだろうけど…
「それもそうか…勘定はっと・・・んッ!何だこの値段!?」
内容を見てみると、そこにはえげつないくらい長いレシートが、まるで写真のフィルムのようにレシートを入れる筒に入っていた。
「愛奈の野郎、今度会ったらゼッテーに割り勘にしてやる」
そして、俺たちはわだかまりを残したまま家に帰った。
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