第8話 部屋がツッコミ所満載なのかよ…

「朝ごはんできましたよー」


「おう」


・・・今の会話、新婚さんみたいだな、と言えるくらい、とても平和でとても暇な一日がやってきた。馬鹿か俺は・・・


「昨日は楽しかったですね!また皆と行きたいです!」


「いや、もう勘弁してくれ…」


 海に行った俺たちは無事何事もなく、楽しんで帰ってこれた。しかし、人があんなにたくさんいるところもうりだ。


「いいじゃないですか、なんですから」


そう、俺たちは今、夏休みなのである。


「いやいや、夏休みだからこそ家で休むんだよ。てか夏休みの初っぱなから海行く方がおかしいだろ」


 俺がそう言うと鈴華は大きくため息をついた。


「もう、だから流星さんは友達がいないんですよ?」


「うぐッ!」


 べべべ別にただ友達を作りたくないだけで友達がいないわけじゃないしぃ!ほ、欲しいだなんてこれっぽっちも思ってないから!


「あっ、そういえば部屋は片付いたか?」


「はい、ダンボールのものは全て片付けました」


「そうか、じゃあ後で部屋見に行ってもいいか?」


 鈴華の部屋がどんな感じなのかすごい気になったため、つい言ってしまった。やっぱり女子らしい部屋なのだろうか。


「えっ!あ、はい、だ、大丈夫ですけど…ひとつお願いがあります」


「・・・?なんだお願いって」


「その、少し買い物に行きたくて、この町のことをまだよく知らなくて、付き合ってもらえませんか?」


 なんだ、そんなことか、俺もみたいラノベや買いたいものがたくさんあるから丁度いい。


「俺は全然構わないが鈴華は何を買いたいんだ?」


「そうですね、まず部屋に必要なものと、あと家で読むための小説と・・・観葉植物なんかも欲しいです」


 なるほど・・・だとすると、


「少し遠いけどショッピングモールにでも行くかあそこなら色々売ってるし」


「そうですね、賛成です」


 んじゃあ、準備するか。


━━━※━━━


「ここが鈴華の部屋か、女の子してるな」


 俺と鈴華はショッピングモールに行く前に鈴華の部屋見学をしていた。


 案の定、とても可愛らしい部屋だ。そして俺は毎回思う、なぜ女子の部屋はこんなにいい香りがするのだろう・・・一度も女子の部屋行ったことないけど。


 しかし、俺はそれよりも気になることがあった。


「鈴華…それは一体何だ?」


「何って、ですけど?」


 うん、それは分かる、なぜ埴輪はにわがたくさん飾ってあるのかが知りたいんだ。


「な、なぜに埴輪を?」


「そんなのかわいいからに決まってるじゃないですか」


 何、今時の女子は埴輪が好きなの?てかこの埴輪、部屋とめっちゃミスマッチなんだけど。


「実は私『ばんぶつの森』が好きでして、その埴輪なんですよ」


 『ばんぶつの森』、略して『ばん森』というのは、とある村で生活をしていき、 色々なもの(万物)を集めまくる、超人気ゲームのことである。どうやらその埴輪はそのゲームに出てくるものらしい。どうりでヘンテコなわけだ。


「なるほどな・・・よし、これで部屋見学も終わったことだし、出かけるか」


「いえ、まだ終わってません」


「???」


「流星さんの部屋がまだです」


 なるほど、そういえばまだ俺の部屋を鈴華に見せたことはなかった。


「いいけど、俺の部屋そんなにキレイじゃないから期待するなよ」


「はい、流星さんのことですから最初から期待はしてません」


 うん、流石の俺も悲しくなってきた。


━━━※━━━


「ここが俺の部屋だ…」


「へぇ~結構整理されてるじゃないですか」


「まあ、なるべく気をつけてはいるからな」


「流星さん、本が好きなんですか?見たことない本ですけど・・・この本、題名が・・・」


 鈴華はライトノベル(本)の題名を見たとたん顔がどんどん赤くなっていった。


 まあ、題名がエ◯マンガ先生じゃそうなるよな、内容は良いんだがな・・・


「それはライトノベルと言って、小説アニメバージョンみたいな本だ。別にイヤらしいもんじゃねぇーぞ」


「そ、そうなんですか?じゃあ大丈夫です」


 何この子、めっちゃ純粋なんだけど・・・えっ、何、俺が悪いの?


「流星さん、この人形はなんですか?」


「それはフィギュアって言うものだ、アニメのキャラクターのな…」


「へぇ~この子が好きなんですか?」


 鈴華は俺の一番の推しのキャラクターを指さした。


「ああそうだ、可愛いだろ、俺の一番の推しだ・・・・・・でも、とりあえず手に握ったまま力を入れるのはやめてぇ~ッ!」


 ハァハァ、危なかったぁ、危うく見るも無残な姿になるところだった。非人道的とは、まさしくこの事を言うんだろう。


「もう、いい時間にもなったし、ショッピングモールに行こうぜ…」


 このままここにいられたら色々と失いそうだし…物理的に。


「そうですね、もう少し聞きたいことがありましたが、仕方がないですね」


「行く準備が出来たら言ってくれ」 


「はい!」


 そう言うと、鈴華は一度部屋に戻って行った。

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