第6話 夏はここしかないのかよ…

「はぁー」


「どうしたんだよ、ため息なんてして」


 そりゃため息だってしたくなるさ、逆になぜこいつらはこんなに楽しそうなんだよ…


「そんな嫌そうな顔すんなよ、折角ここまで来たんだからよ・・・ホラッ!見てみろよ外!海が見えてきたぞ」


「ああ、そうだな、あの忌々しいほどに青く輝く海がな」


 そう、俺たちは今、ひかりの提案で海に来ている。


 ひかりいわく、鈴華と仲良くなった祝いらしい、なんじゃそりゃ、俺を巻き込まないでくれ。


 てか夏休み初日だぞ? おかしくないか?


「皆さん、私のためにありがとうございます!」


「いーのいーの、折角友達になったんだから」


 ひかりと鈴華はかなり盛り上がっている、鈴華に関しては、朝からずっとソワソワしていた。


「流星さんは何をするんですか?」


「ん?、俺はとりあえず日陰でダラダラしてる」


 こんないい天気になぜ動かなくてはならないのだ。


「もう!それでは来た意味がないじゃないですか!」


 珍しく鈴華が強気だ、よほど皆と遊ぶのが楽しみだったらしい。


 はぁー気が向いたら付き合ってやろう。


━━━※━━━


「着いたぁー、これからどうする?まずはパラソルとテント立てる?」


「そうだな、よし!おい星、一緒にパラソルとテント立てるぞー」


 働きたくない俺だがテントは別だ。


 日陰があり、広さも丁度よく、さらに寝ることもできる!最高かよっ!


「よし、これでテントも出来たな・・・星?お前そのカバンは何だ」


「・・・ん?これか?パソコンに決まってるだろ」


「いや、ここどこだと思ってるんだ!?海だぞ!海ッ!」


はぁ、確かにここまで来てパソコンだけは勿体ないか。


「星、水着は持ってきただろうな」


「いや、そんなつもりは全くなかったから持ってきてない」


フフフ、どうだ、水着を持ってこなければ俺の勝ちだ。フハハハハ


「はぁ、そりゃ残念だ・・・ったな!俺がお前の分も持ってきてますぅーそれくらい予想できるぜ、ざまあみろバーカ!」


 なん・・・だとッ!クソ!こいつめっちゃ腹立つ!


「んじゃテントもあるし、そこで着替えるか」


「・・・え?テントで着替えるの?」


「当たり前だろ、すぐ泳げるし」


「えぇ」


━━━※━━━


「おまたせ、どうこの水着似合ってる?」


 着替え終わったひかりが水着を自慢してきた。オレンジ色の水着でとてもひかりらしさが出ている・・・以上。


「まあ、いんじゃねーの」


「星に聞いた私が悪かったわ、おっつーはどう思う?」 


「・・・ん?なにが?」


「あーここロクな男いないわー」


「そういえば花園さんは?」


「もうそろそろ来ると思うけど・・・あ、来た来た」


 待ちに待った鈴華の水着姿・・・これは是非ともこの目に焼きつけなければ。


「さて、鈴華の水着は・・・ッ!」

 

 鈴華の水着を見た瞬間、俺は鼻血を吹き出してしまった。


 それもそうだ、普通にビキニと思いきや、まさか名前は知らないがスカートみたいなのがついた水色と白色の水着だった。結論を言うと・・・カワイイッ!


(※後々調べた結果、スカートみたいな水着はパレオと言うらしい。)


 しかし、今はそんなこと言っている余裕はない、なぜならさっきから鼻血が止まらないからだ。俺は昔からかなりの貧血で、こんなに血が出るとさすがにマズイ…


 ・・・ヤベェ、くらくらしてきた・・・このままじゃ・・・本当に━━━━


━━━※━━━


「・・・さん・・・せいさん・・・流星さん」


 この声は・・・天使・・・なのか・・・そうか、死んだのか、俺は・・・でも原因はなんだ?確か、何かを見て倒れたような・・・・・・って!そうだよ!水着だよ!めっちゃ恥ずかしいよ!にしてもこの声はなんだ・・・まるで天使みたいな。


「・・・んん」


「あっ、目が覚めましたか?」


「・・・天使?」


「はい、天使です」


「鈴華じゃねーか、てか・・・膝枕?」


「はい膝枕です。気分は大丈夫ですか?」


「あぁ、少し楽になった」

 

 そうか、鈴華が倒れた俺を見てくれてたのか、てか今俺、水着姿の白髪美少女に膝枕してもらってるの?ヤバいまた鼻血出てきそう。


「もう、いきなり倒れたからビックリしたんですよ!」


 そうか、鈴華は俺のこと心配してくれてたのか。


「ごめん、俺昔から貧血だから」


「そうだったんですか、にしても、しっかりとした生活をしているのになんで倒れたんでしょう?暑いからですかね」

 

 うっ…何があっても鈴華の水着見て興奮したからとは言えねぇ!


「ちなみに、俺どのくらい寝てた?」


「えーと、十分程度ですかね」


「まあまあだな・・・あと、あいつらは?」


 よく見たらひかりとおっつーがいないことに気がついた。


「えっと、あの二人なら『あいつならほっといてもいいよ』って言って先に遊びに行きました」


 んだとッ!あいつら、俺に対して冷たすぎるんじゃないのか、もうちょっと心配してくれてもいいのに。


「俺も行くかぁ」


「まだ起きたばかりなので休んでください!」


「あ、あぁ、悪い…」


 まさか、海に来てぶっ倒れて、テントで休むハメになるなんて、思ってもいなかった。まあ、これはこれでラッキーイベントだからいいけど・・・


「実はこの水着、休みにひかりさんと一緒に買いに行ったんですよ」


「そうなのか」


 なるほど、だからこの間家に居なかったのか。


「・・・そ、その水着…似合ってるな」


「そうですか? ありがとうございます」


「・・・ッ!」


 鈴華の顔を見て俺はあまりの恥ずかしさに目を慌ててそらした。


・・・守りたい笑顔って、本当あるんだな。

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