第2話 王道ラブコメかよ…(前編)

「よお、ほし


「おぉ、おっつーか、おはよう」


 俺に話しかけてきたのはぼっちの唯一の友である乙黒おつぐろ 玄也げんや。昔いじめにあっていた俺を救ってくれた神のような存在だ。


こいつがいなかったら今の俺はいないだろう、名前ではすごく黒いが性格はすごく白い良いヤツだ、ちなみに「おっつー」とは乙黒の乙を取ったあだ名である、なので決しておつかれではない。


「朝から元気だな、なんかいいことでもあったのか」


「いや、別に何もないが調子がいい」


 そういうとまるで私が神だと言うかのように両手を空に向けた。


「その調子なら今日の校長講話は楽勝だな」


「ぐはっ、今日はそれがあったか、保健室使えるかな」


 俺のナイストークを聞きおっつーの顔はみるみる青ざめていった。


━━━※━━━


「おっつー、星ーおはよー」


 教室に着くと一人の女子がこっちに来た。


「おはようひかり」「おはよう」


 彼女の名前は輝崎こうさきひかり、名前の通りすごく明るい、俺のようなスーパー地味なヤツにも話しかけてくれる、俺みたいなシャイニーズには苦手なタイプである。


「二人とも元気ないねーどしたの」


「いやー今日校長講話を聞くと思うと眩暈が」


「あー確かに校長講話、この学校はダントツで長いからね~」


 そう、この高校では異常に校長の話が長い、中には話し中に倒れたヤツもいる。もちろん俺もその一人である。


 そんなことを考えているとチャイムが鳴った。皆が座り終えた瞬間、教室の扉が勢いよく開けられた。


「皆のもの、おはよう!」


 すると小さな女の子が入ってきた。


 厳密に言うとが来た。


 そのあまりの可愛さでクラスのヤツらは言ってしまう。


「「「「カワイイ!」」」」


 そう、この先生はロリ…ゴホン、ではなく、すごく可愛らしい先生なのである。


 身長は前に置いてある机にギリギリ顔が出るぐらいで、名前は小倉おぐら 翔子しょうこ、小さいので皆からは、ちぃちゃんと呼ばれている。


「それでは、校長講話があるから体育館にいくぞー」


「「「「えー」」」」


 ちぃちゃんの言葉で俺たちは思いだしたくない現実を突き付けられた。


「と言いたいんだが、その前に…」


 するとちぃちゃんが珍しく何かを始めた。


「実は今日、転校生がやってくることになった」


「え、マジ?」「それ本当?」「どんな人かな?」


 教室内は瞬く間に転校生ムードになった。


 もう七月に入っているというのに、転校生なんて珍しいな。


 しかし、その中でも一人、それを嬉しく思わないヤツがいた━━━━俺である。


 俺は昔から厄介ごとに巻き込まれやすいヤツだった、なのでこのようなイベントはいいことはない、俺の第六感が言っている。


 すると一人の男子がベタな質問をした。


「男子ですか女子ですか?」


「うむ、女子だ」


「「「うおおおおー!!」」」


 女子と聞いたとたん男子のテンションが爆上がりした。アホか。


「おーい、入ってきていいぞー」


 すると、ちぃちゃんの合図で転校生が入ってきた。━━━その時、俺は電撃のような感覚に襲われた。これをショックと言うのだろう。


 教室に颯爽と現れた女子はクラス全員の目を奪った。


 清楚な佇まいで、身長は一五〇センチ前後、髪は白髪で、髪型はミディアム髪を斜め後ろに結んでいる、いわゆるサイドポニーだ。そして空のように青く透き通った目。窓から差し込む光となびく風で、その透き通った髪や目がより美しく見える。もちろん出るところもまあまあ出ている。


 結論を言うと・・・・タイプだ!


 そんなことを考えていると入ってきた女子は黒板に名前を書いていた。


花園はなぞの 鈴華りんかと言います。これからよろしくお願いします」


少し緊張しているのか、小さな声で自己紹介をした。いや、小さく聞こえただけかもしれない、なぜなら男子勢が…


「可愛いぃ~」「俺のもんだぁ」「ぐ、ぐへ、ぐへへへへ」


 おい!誰か警察を呼べ!このクラスはもうだめだ!


「じゃあ鈴華の席は」


 ちぃちゃんがそう言い指を指した席はおっつーの隣だった。


「よろしくお願いします」


「こちらこそよろしく」


 二人は俺から見たらリア充にしか見えなかった。


「それじゃあ校長講話聞きにいくぞー」


「「「「えー!」」」」


 ちぃちゃんの一言で空気が物理的に重くなった気がした。


━━━※━━━


 校長講話が終わりこの学校にしかない『校長講話休み』になった。


 校長講話休みとは、たぶん長い間立たされた俺たち生徒を憐れんだのだろう先生が作った校長講話の後にだけある休みのことだ。・・・その先生天才だろ。


「もうダメダァ~」


「おいおい、今にも死にそうじゃねーか」


・・・ん?何でおっつーがここに…


「何で俺がここにきたんだと思ったな、あれだよ、あれ」


 おっつーの指を指した方向にはおっつーの席を侵食するほどの人だかりが出来ていた。


「アイツら元気だな、何の後だと思ってるんだ…」


「ハハ確かに、でも賑やかでいいじゃないか」


「そうかねぇ~、俺には関係無いからいいけど」


 そう、俺には関係無い。俺なんてどうせ・・・日の当たらない人間だ。

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