幸運のカメ
縁日の屋台で、カメを買った。
珍しい、金色のカメだ。
『幸運を呼ぶ、金のカメ』
そんな文句に釣られて、つい、買ってしまった。
どうせ、ラッカースプレーか何かで、着色しているに違いない。
そう思いながら世話をしていたのだが、一年経っても、二年経っても、塗料が剥がれて緑色になる、なんてことはなかった。
カメは、金色のままだった。
もしかしたら、本物かもしれない。
本当に、幸運を運ぶカメなのかもしれない。
そんな期待が生まれた。
しかし、買い始めて三年が経ったころ。
家に泥棒が入った。
盗まれたのは、あの、金色のカメ一匹。
他に盗まれたものはない。
家族に怪我もなかった。
あのカメが玄関の水槽の中で輝いていたから、泥棒は家の中まで入らずに、カメだけを奪って去っていったのだ。
カメ一匹ですんだのだから、幸運といえないこともない。
きみは今もどこかで輝いて、元気でやっているのだろうか。
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