ふくろうハーミットの独り言

 ────ホッホゥ。森の……に湧いている、きれいな泉のほとりには、美味しい……がたくさん生えていて、それを食べようと……が大勢集まってくる。ホゥ。 それはもう、ガチャガチャとやかましくて、近くの木では夜も眠れないほどだ……。ホッホゥ。


 こんな感じで、今日も年老いたフクロウのハーミットは独り言をつぶやき始めました。


 ハーミットの話は、いつも肝心なところで声が小さくなってしまうので、うまく聞き取ることができません。


 ですが、よく聞こうと思って近づくのは危険です。


 好奇心の旺盛なネズミなんかが、話を聞こうと近寄ろうものなら、一度に捕まって食べられてしまいます。


 それがハーミットの狙いなのです。


 老いたハーミットは、昔ほど目がよくはなくなってしまったので、獲物を探す代わりにこうやっておびき寄せることにしたのです。


 ハーミットは、歳を取った分だけ色んな事を知っています。


 美味しい木の実がたくさんなる木。


 柔らかい草が生えている場所。


 虫がたくさん集まる水辺。


 どれも素敵な場所ばかりです。


 どうしても美味しい実のなる木の場所を知りたかったウサギのフールは、ハーミットのいる木の根元まで、穴を掘って近づくことにしました。


 土の中からなら、安全にハーミットの話を聞くことができるからです。


 ですが、自慢の耳も、穴の中ではよく聞こえません。


 じれったくなったフールは、思わず土の中で声を上げてしまいました。


 ────物知りのフクロウのハーミット。もっと大きな声でしゃべってくれないか。


 言ってからしまったと思いましたが、いくらハーミットだって地面の中のウサギは捕まえられるはずがありません。


 ────ホッホゥ。最近は、耳もわるくての。誰だか知らんが、もっとはっきりしゃべってくれんか。


 フールの声にハーミットが答えます。

 

 ────物知りフクロウのハーミット。もっと大きな声でしゃべってくれないか。


 まどろっこしくなったフールは、思わず穴から飛び出して叫んでいました。


 そして、次の瞬間。


 フールの体はハーミットの爪に掴まれて、夜の森の中に消えていきました。






 ────ホッホゥ。森の……に生えている、大きな……の木の枝には、それはもう毎年たくさんの実がなって……


 今日もハーミットの独り言は、夜の森に響いています。


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