スズメ

 名前には、必ず意味がある。

 

 ネコは『寝子』だ。

 確かに、いつも寝ているというイメージがある。

 

 イヌなら『居ぬ』だ。

 いつもそばに居ぬるという意味だろう。

 

 さて、ではスズメは何なのか。

 

 私は木に群がるスズメを見上げながら、そんな事を考えていた。


『鈴目』だろうか。

 確かに、鈴のように丸くて、くりくりとした愛らしい目をしている。


 それとも『涼女』だろうか。

 なるほど、京都の女性のように、涼やかな雰囲気も伺える。


 私は自分の説にいちいち反応を返し、しきりに頷いていた。

 

 すると、一羽のスズメが足元に飛んできた。


 くりくりとした目で私を見上げ、何かを語りかけるように「チィ、チィ」と鳴いた。


 その声で、私にはスズメが何を言いたいのか分かった気がした。


 ふむ、『鈴女』か。


 鳴く声は鈴のように美しく、その挙措は女性のように慎ましやかで愛らしい。


 なるほど、なるほど。


 頷く私を見て、スズメは仲間たちのもとへ飛んで帰った。


 群れている姿も、他の鳥のように厚かましい感じはしない。


 確かに、君たちは『鈴女』だ。


 私は大いに満足して、その場を後にした。


 後ろから、「チィ、チィ」と鳴き声がする。


 きっとあのスズメたちも、自分の名前を気に入っているのだろう。

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