第10話
(ここは……どこだ?俺は確かダンジョンにいたはずだ)
道満は、青空が広がる草原のような場所に立っていた。道満が状況を把握できずにいると、突然声が聞こえる。
「道満……。間違えてはいけない、力の使い方を。力のある者の使命を果たせ。」
(誰の声だ。ひどく聞き馴染みのある声だ。それに、使命って一体…)
道満は声の主を思い出そうとするが、頭に靄が掛かったかのように、思考が定まらない。
「…れ、ま…るんだ。」
謎の声はノイズがかかったかのように、うまく聞き取ることができない。
すると、道満は自分の意識が引っ張られるのを感じた。
(待て、待ってくれ!!)
「待て!!!!!!!!!!!!!
あれ??ここは一体???」
道満が目を覚ますと、自分が白い部屋の中にいることがわかった。
「?!」
(誰か来る)
道満が周りを観察していると、何者かが近づいてくる気配を感じた。その気配は、扉の前に立ち、ドアを開けた。
「おやぁ〜?お目覚めかいぃ〜??」
「だ、誰だお前。」
部屋に入ってきたのは、間延びした喋り方をする男だった。
「いちよ、君をダンジョンから助けた恩人なんだけどねぇ〜。僕の名前は、天堂 京治。しがない軍人だよぉ〜。君の名前はぁ?」
「俺の名前は椎…。鬼灯 道満だ。で??しがない軍人さんが俺に一体何の用だ?どうやら、この状況とあんたは無関係じゃないようだが?」
自らの素性を軍人と明かした京治に、道満は警戒の態度を見せる。
「そうだよぉ〜。ダンジョン遠征の途中でぇ理性を失った君を拘束して保護したのさぁ。」
「何?!?!理性を失ってただと?」
思わぬ事実を知り、道満は目に見えて動揺する。そんな道満を見て、京治は面白そうに笑みを浮かべる。
「その様子だとぉ、どうやら何も覚えてないみたいだねぇ。」
(理性を失っていたことにも驚きだが、俺はこの男に負けたのか?!俺は誰よりも強くなければいけない。なのに、なんだこのザマは。)
道満は自分の強さがダンジョンで鍛えられ、揺るがないものに近づいている自信があった。しかし、その自信を壊されてしまう。
「あははぁ〜。ど〜やら、僕に負けたのが悔しいみたいだねぇ〜。でも、仕方ないよぉー?こ〜見えてぇ、僕は七星天の1人だからねぇ〜。」
「七星天???なんだそれ?」
「あれれぇ〜?知らないのぉ〜?おっかしいなぁ〜。今の時代ぃ、知らない人はいないと思うんだけどねぇ〜。七星天はねぇ、世界でもぉ7人しかいないSS級ホルダーのことさぁ。つまりぃ、世界最強ってことぉ。」
「最強?!?!」
道満が食いついたのは、最強という言葉だった。ひたすら、強さを求める道満がその言葉に食いつくのは至極当然のことだった。
だが、同時に知らない単語もあり、道満は混乱した。
「ん??SS級??ほるだー??」
道満は2年もの間、ダンジョンにいたのだ。今の世界がどのような体制なのかは知るよしもなかった。
「おやぁ〜??その様子だと何も知らないようだねぇ〜。他にもぉ、ステータスはぁ〜??」
「な、なにもしらねぇ。」
「きみぃ〜、ダンジョンにはいつからいたのぉ〜???」
道満のあまりの無知さに、京治は怪訝な様子を見せて問いかける。
「今は何年だ??」
「2025年だよぉ〜。」
「てことは、2年間ダンジョンにいたことになる。」
「?!?!」
(2年ってことはぁ、ダンジョンからモンスターが現れた年だぁ。つまりぃ、彼はダンジョン遭難者ぁ。でもぉ、遭難者が生きてる事例なんてぇ聞いたことがないねぇ。)
京治はだんだん道満に興味を抱き始めていた。
「ならぁ〜、何も知らないんだねぇ〜。ならぁ〜教えてあげるよぉ、君が消えてからのぉ変わった世界をぉ〜。」
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