第9話

 道満がダンジョンに潜ってから、2年の時が経った。学校に通っていれば、現在は高校2年の年だろう。地上では、世界のあり方に変化が起きていた。そして、道満にも変化が起きていた。


「アヒャヒャヒャァ!!ギャハハハァ!!!コロスゥ!!!モットォォォ!!」


 長く苦しいモンスターとの戦いで、道満は理性を失っていた。2年という長い時間は道満から人間性を奪うのには十分だった。

 道満の強さは2年前に比べて、遥かに強くなっていた。今では、一部の超級モンスターとの対等に戦えるほどだった。


{マンティコア 超級}


『グラァァァァ』


「キタァ」


 普通の人間ならば、立っていることもできないほどの威圧を放つマンティコアが現れた。だが、道満は獰猛な笑みを浮かべ、マンティコアに向かった。


「ウラァァァ!!」


『ガルルル』


 恩恵を常時発動させた状態の道満が放つパンチは、目にも止まらぬ速さでマンティコアへ向かうが、マンティコアに傷をつけることは叶わなかった。


『グラァァァァ!!』


 攻撃をした後の道満の隙をつき、マンティコアは鋭利な爪を道満に振るう。


『ガァッ?!』


 しかし、そこにはすでに道満はいなかった。マンティコアは見失った敵を探し、あちこちを見渡すが、どこにも道満はいない。


 瞬間、マンティコアの視界は黒く染まった。


「ナンニモ、ミエネェナァ」


マンティコアの死角に居続けた道満が、マンティコアの両目を高速の攻撃で抉り取ったのだ。

 そこからは、道満の蹂躙だ。視界を失ったマンティコアから次は腕を奪い、足を奪い、最後は心臓を潰した。道満には傷一つない。


「ツギィダァ」


 今の階層に飽きた道満は、さらにダンジョンを進もうと歩き出そうとするが、付近に気配を察知して、すぐに構える。


「ん〜???なんでこんな場所に人がいるんだぁ〜???」


「隊長、新種のモンスターかもしれません。」


 現れたのは、軍服を着た軍隊だった。


「ツギノエモノカァ」


 すでに、道満には人とモンスターの区別がつくほどの理性がなかった。獰猛な笑みを浮かべながら、ゆっくりと軍隊だったに近づく。


「隊長、奴を排除します。」


「ちょっと待とうかぁ〜、彼、人間だねぇ〜」


 軍隊の1人が道満を殺そうと前は出るが、隊長らしき間延びした喋り方の男が止める。そして、道満へと語りかける。


「君ぃ〜、名前はぁ〜?」


「ヤロウ!!ハヤク!!」


 男が語りかけるが、道満には届かない。男はため息をつく。


「はぁ〜、仕方ないかぁ〜。殺さないようにするのはしんどいんだよぉ〜。」


 男はぶつぶつと文句を言いながら刀を抜き、道満に近づく。


「ウガァ!!」


 道満は我慢できず、男に飛びかかる。


「隊長!!!」


「大丈夫ぅ〜。制圧するよぉ〜〜。

抜刀術 光塵こうじん。」


 瞬間、道満の視界は白く染まり意識を失った。

「光の余波だけで、意識を刈り取るとはさすがです、隊長。」


「ありがとぉ〜〜。彼を拘束して、今日は帰るよぉ〜。」


『はっ!!』


 軍隊は、道満を拘束し外への道を進んでいった。道満は望まぬ形で2年ぶりに地上へかえることになる。


 もはや、動き出した運命は止まらない。

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