第7話

 ゴブリンジェネラルを倒し恩恵を解除した道満はある違和感に気付いた。


「な、なんだこれ。目がチカチカする。それに、ひどい車酔いになった気分だ。。。

まさか、恩恵の反動的なものか??」


 道満の予想は正したかった。神の与える恩恵とはどれも人知を超えた能力である。どの恩恵にもなにかしらの代償や反動は存在する。


「恩恵の反動だとしたら、俺への反動は速度の激しい変化による三半規管へのダメージってところか。ちきしょう、さらにギアを上げた時のことを考えると憂鬱だ。

だけど、とにかく今は休まねぇと。」


 どこか休める場所を探そうとする道満だがここはダンジョンの深層。そんな都合のいい場所は少ない。


『ガラルルルル』


 血の匂いを嗅ぎつけた魔物たちが続々と集まってきた。その数は、5体。

 すかさず、道満は鑑定を発動する。


[ヘルハウンド 上級]


「ハハッ!休ませる気は無いってか???

望むところだぁぁ!!!

加速アクセラレート2《ツヴァイ》!!!!!」


「シュッ!!」


『ギャイン?!?!ガルァ!!!』


 加速のギアを一気に2段階解放した道満は

高速の速さで一体目のヘルハウンドに近付きジャブを放つが、それはヘルハウンドを一瞬怯ませることしかできなかった。


「くそっ!やっぱジャブじゃ、牽制程度にしかならねぇか!!」


『グルァァ!!!』『ガゥッ!!!』


「グァッ?!」


 そうこうしているうちに、他2体のヘルハウンドが襲いかかる。


「くそっ!!!」


 腹部に突進を受け、肩を噛まれた道満は1度距離を取り、構え直す。


(やっぱり、上級を複数相手取るのはまだ早かったか…………………。

いやいや、できなきゃ死ぬだけだ。

決めただろうが、俺は修羅になる。そのために大事なもん切り捨てたんだろうがぁ!!!)


 諦めの思考に入りかけた道満の脳裏に浮かぶのは、あの時に別れたクラスメイトと妹のことだった。そして、その光景が道満の闘争心に火をつける。


「3《ドライ》!!!!!!!!」


 道満はギアを3に上げ、先程とは比べものにならない速さで動き回り、ヘルハウンド達を翻弄する。


「ビュッ!!ビュッ!!ビュッ!!」


『ギャイン?!』


 道満は時々、ジャブを放ちヘルハウンド達に考える暇を与えないようにする。

 すると、道満は突然スピードを下げ、急加速した。


「うぉら!!!」


『ギャン!!!』


 そして、一体目の腹部に目掛けて渾身のアッパー放つ。ヘルハウンドは口から血を吐き出し絶命する。

 同じように次々とヘルハウンドを倒していく。道満の姿は、獲物を狩る鎌鼬カマイタチのようだった。

 

(ハァハァハァハァ、なんとか倒せた。だけど、反動が中々キツいな。この、ザマじゃもっと下には行けねぇな。でも、なんだこの感覚。あいつら倒してから、妙に体に力が湧くぞ)


 違和感に襲われる道満だが、この現象の謎が解けるのはもう少し先の話である。


「とにかく今はこの階層で、闘いまくるしかねぇな。このまま下に行っても瞬殺されるだけだ。もっと強くならねぇと……もっとだ。」


 次の獲物を求めて道満は歩き出した。

しかし、その歩みはすぐに止まることになる。先程の戦闘音に引き寄せられた魔物が集団を成して迫っていたのだ


「カハッ!!!!いいぜいいぜぇ、丁度相手が欲しかったところだぁ。まとめてかかってこいや!!!!!」


 道満の長い長いダンジョンでの闘いの日々が始まった。


 

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