癌になりたい
おれは会社帰りにしょぼくれていた
項垂れて寿司を食べていた
また上司に怒られてしまった
「こら! おしっこ漏らすな!」
所構わず放尿する癖は三十歳を越えても治らなかった
四十までの宿題だな
自分にそう言い聞かせ寿司を放り込んだ
「むちゃくちゃうめえや」
無表情で呟いた
ただの四角形だった
(アナゴさんってなんだろう?)
突然そのような疑問が頭の中に飛来した
(アナゴさんってなんなの?)
だから隣りの席の人に訊いてみることにした
「すいません、アナゴさんって一体なんなんだと思います?」
その人は年配のサラリーマンでこちらの問いにムッとしながらも答えてくれた
「人だよ」
おれはさらに追加で尋ねた
「つまり、肺呼吸とかをしているってことですか?」
隣りのおじさんは言った
「その通り、もちろんセックスもしている。彼の長い人生経験に於いてフェラチオを女に強要したことは一度や二度ではないだろうね。『うっはっはっ』なんて笑いながら呼吸困難な女にカステラ並みの性器を押し付けたことも多数」
おれは頷いた
「てっきりただのセル画だと思ってましたよ」
おれを戒めるようにその人は言った
「セル画だってセックスしなければ子供は出来ないよ」
確かに
そうなのか?
「きみはサザエさんは知っているかい?」
「もちろん知ってますよ、そのアニメの主人公ですから」
隣りの人は玉露を一口、啜って続けた
「あれはすごいよお………深夜マスオさんの上に馬乗りになった。その姿はまさに女帝。激しい縦揺れが起きたんだ。地盤沈下だよきみい。隣りのイササカ先生の家がその震動で水没したというのはファンにとってはもはや有名すぎる話しだよね。もちろんテレビなんかでは放送、出来ない。けれどその晩にタラちゃんが誕生したことは間違いのない事実なんだな」
明日も仕事だ
明後日も
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