妹よ


近所の頑固親父がさ

朝っぱらから怒鳴り散らしてるわけ

それが隣りの隣りのうちまで聞こえて来るんだよ

「おれのグミが、どっかいった!」

とか

(ああ、また始まったな………)

って

その度にうちの家族は憂鬱になるよ

年端もいかない妹はぎゅっと眉をひそめている

(この世界って屑だろ?)

お兄ちゃんそう思うんだ

頑固親父の怒りはまだまだ収まらない

「勝手に消えるわけない! 誰かに食われた!」

そうしてお粗末な推理が始まるのだった

「猫じゃあねえよなあ………猫はグミなんて食わねえもんなあ、聞いたことねえよ猫がグミ食べるなんて、まず候補から猫は外していいと思うんだよなあ」

おれは段々、苛々としてくる

「あ、昨日、おれが食べたんだっけ」

ここで金属バットを握り締め玄関から飛び出しかけた

妹がそれを寸前で止めた

「お兄ちゃん、殺人なんかやめて」

ああ

お前の言うことなら素直に聞くよ

お前はうちのババアとは違う

お前はうちのババアとロバから生まれた奇跡の天使だ

だから今夜もお兄ちゃんの隣りで寝てくれ

そしてお兄ちゃんの頭を撫でて「大丈夫だよ」って言ってくれ

それだけでいい

それだけで十分なんだ生きる理由なんて

おれがお前を守る

おれがお前を傷つける全てのものをぶちのめしてやるよ

学校なんか行かなくていい

お前を仲間外れにする学校なんて屑だ


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