悪党はひげを必ず生やしなさい(威圧)
ちょびすきー
挨拶くらいしたらどうなのさ
はじめの人生で 誰からも愛されなかった 青年ニコチンは 神様から特別な忖度を受けて 二度目の人生を エンジョイすることにした
さてニコチンには復讐したい相手が 二人いる 一人は男で 一人は女だ 新しい人生の第一歩として まずはそいつらに とんでもない目に遭ってもらおうと 考えた
「今度の体は 何もかもがパワーアップしている 顔も 身体能力も 頭の良さも とてもそんな感じがする」
ニコチンのつぶやきは レンガの街に反響し 地に落ち 種となって 新しい命を 芽吹かせた
ある花は ツインテ黒髪美少女の赤ら顔 またある花は ロング銀髪美少女の 肉付きの良い尻 別の花は 100万ドルの夜景を宿した瞳を持つ 茶髪ボブ美女の ブラジャー
ニコチンはそれら全てを手に取り よしとした それから自らの目的を達するべく まずは 港町の居酒屋に足を踏み入れた
「三上はいるか三上は」
店に入るなり いきなり大声で そう叫んだニコチンを仰ぎ見て 他のお客さん達は 全員度肝を抜かし その場にひれ伏した
突然のことに忙しさに身をやつしていた店員どもも ニコチンの姿を一目見て 恐れおののき やはりその場に土下座した
「あなたの仰る みくに という者は 今こちらにはおりません」
店員の中でも 特に 有能店員と名高い 佐藤という男が ニコチンに 応答した
「ミクニではない三上だ」
なんということ 店内はにわかに騒ぎだった 目の前の異彩を放つ 男のオーラを ものともせず 立ち向かった男は取り返しのつかない 失敗をしてしまった 勇者佐藤は ニコチンの言葉を 聞き間違えてしまった
「申し訳ありません救世主さま」
勇者サトウの 頬から伝わった脂汗は 床に落ち 花開く前に ニコチンの 指パッチンによって 金色の蛇に姿を変えた
そしてニコチンは その蛇に 黒髪美少女の あから顔を被せ 再び 床に放った 蛇は 店から出て行った
「通常ならば 私の声を聞くだけで 体がすくみ ろくに言葉も発せなくなるだろうに あなたはよくやった その強い心意気に 息吹を与え 今三上を 召喚する」
しばらくして 黒髪美少女の顔のついた蛇に 揉み手をして うだつの上がらぬ男 三上が現れた
「一体全体何だってんだい あんたはあの ニコチンじゃないか」
三上は 美少女蛇の方をチラチラ見ながら ニコチンをさして 一言喚いた あろうことか ニコチンの 気高い後光は 三上の下心の前に 霞んでしまっていた
「見るがいい これが哀れな 男の姿だ この男が 見ているのは 女の顔だけで 後は まるで おまけなのだ」
その場にいる人々全員が 三上の浅薄さに 嫌悪の情を抱き 各々 持っていた グラスの中の 水や酒を 三上に 浴びせた
「やめてくれやめてくれ これでは 女の子の顔が見えない」
なおも蛇に絡みつこうとする 三上の姿を ニコチンは 見下げ果てた様子で 見下す
「お前よくも科学の時間の時に 原液アンモニアを じかに嗅がせたな 絶対許さないからな あとあれも許さないから 人の傘で 勝手に 素振りしてたのと ピンポン玉眼球に 投げつけたこと 野球部だからって 調子乗ってんじゃねーぞ」
ニコチンは メデューサも竦み上がるような 凄まじい眼光を 傍らにあった まだジュースの入っていた グラスに 注いだ ジュースは ヘビ花火のように 螺旋を描いた 木製バット に変成した
「痛い痛い 何をする」
にゅるにゅる伸びる 木製バットは やがて三上のズボンの中に するりと入り込むと ケツにめり込んでいく
「そんなに野球が好きなら バットと結婚すればいい 可愛い女の子なんかいらない 一生笑いもんになれ」
それから 三上は 文字通りバットと一体化し 肌身離れぬ生活を余儀なくされ 悲しみの涙と引き換えに 周囲に笑いを届けることができるようになった
こうして三上は 健やかに年老い お星様となった今でも 数ある星座の中の一つ ケツバット座 として夜空に上げてもらい 後世まで名を残したのである
続いてニコチンは 駅の近くにある 廃墟の壁面に生えている なんかのツタを ぷちっとちぎり 天に放った するとつたは たちまち 天上までのび 天翔ける梯子を ニコチンの前にひり出した
ニコチンは つたを伝って 太陽のそばまで来ると さすがに暑かったので 積乱雲の上に一旦腰を下ろした
「何か飲みたいぞ 炭酸などよいのだ」
ニコチンがそう唱えると たちまち 周囲の雲は 噴水の形をとり 乳酸菌入りのおいしいソーダを 提供してくれた
ニコチンは くもピスソーダにしばし夢中になっていたが 視界の端に映った ペンギンが 気になって 改めて目をやると それは ペンギンではなく ネッシーだった
青い体の 怪獣のような生き物が はじっこにいる それは ニコチンにとって 紛れもなく 触れてはならない 一線だった
「す す すみ○コぐらしいいいいいいいいいいいい」
前世 ニコチンには彼女がいたが ニコチンの 親友が 後から 彼女を 奪い去っていってしまった 彼女は 次第に ニコチンを疎み 親友との イチャイチャを ニコチンに 見せつけるようになっていった すみ○コぐらしは そんな彼女が 好きで グッズを買い漁っていた キャラクターだった
「ああああああああああ」
ニコチンの咆哮は 近々 下界で コンサートをするために ラッパの練習をしていた エンジェルたちを 震え上がらせた ある者は 恐怖の余り天からころげ堕ち またある者は 小便小僧と化した
「楓えええええ」
ニコチンの 呼び起こした嵐は 下界の ありとあらゆるカエデの木の 葉をかき集め ニコチンのもとに 集った そして 葉っぱそれぞれ より合わさって ニコチンの元カノが 出来上がった
「この性悪女め おれを散々コケにしてくれやがって お前ほんとどんな根性してるの」
「私は何も悪くない 私は 私なりに カレカノの関係を楽しもうと思ったのにあなたは 彼氏らしいことを 一切してくれなかった」
「お前はいつも 与えられることばかり考えて 与えようとしないんだ それを 棚にあげやがって その 自己中加減には もううんざりだ」
ニコチンはひたすらでかい雷の弓矢を造り かえでに向かって打ち出すと 楓は 射ぬかれた勢いのまま 矢ごと雲の上の世界樹に突き刺さった
「ちょっとこれ抜いてよ 動けないじゃない 私これからデートなのよ」
「俺だって彼女いるもん」
ニコチンは 楓から見えない角度で 光の速さで 銀髪美少女の尻が実った花の 尻部分だけをスマホで撮って それを楓に見せた
「そんなのただのオナホよ 信じない あんたに彼女なんか できるわけないんだから」
そう言う楓の頬はしかし 僅かに汗ばみ やがて 紅潮していく そう 先ほど打ち込んだ矢には 実は キューピットの 特製媚薬が塗り込まれていたのだ
「はあ はあ なにこれ ああ」
世界樹は ニコチンの意を汲み取り その枝を伸ばし 蛇のように 楓のお体を なぞる 枝についた葉は 楓の 弱いあんなところやこんなところを さわさわして その気を 強制的に 昂らせていく
「くすぐったいから あ だめ」
一言で言えば 絶頂ギリ寸止め 世界樹の ぜつみょーテクは ほしいところにノータッチ
「や だ わたし おかしくなって しまう」
さっきまで ニコチンをこき下ろし あんなに強気だった 元カノは今や すっかりメスの顔
されどニコチンは かえでに 一瞥もくれず 茶髪美女の ブラを 花から 摘み取ると 楓の前に はらりと落とす
「あ 俺 イマカノちゃんに 忘れ物 届けなきゃだった」
「まって わたし わるかった から だから その お願い」
「さよ~なら~」
「なんでも言うこと聞きます 帰ってきて わたしの あん かれぴっぴ」
ニコチンは 二度と彼女を 振り返らなかった
この時流れた 楓の 汗やら涙やらは その後 干ばつが続く地域のオアシスとなって 暑さにあえぐ人々の 命を救ったのだった
めでたし めでたし
悪党はひげを必ず生やしなさい(威圧) ちょびすきー @chobiski
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