今日は頑張る

 琴弾公園の東屋にて、朝6時起床。昨夜は雨が少し降ったようで、あたりは濡れていた。昨日もそうだったし、天気がイマイチ安定しない。テントも自転車も東屋の中なので、これらは濡れていないのが救い。テントの中で朝食を食べて、とっとと撤収することに。それにしても明るくなるのも、遅くなってきた。6時でもまだ暗い。


 7時頃に出発。本日最初に訪れるのは、ちょっと山の中にあるお寺。これさえクリアすれば、後は平地のお寺ばかりで、お寺間の距離も近い。本日はもう目一杯、お寺を回ろうと思っている。昨日はあまりにもやる気がなさすぎた。飽きてきているのは確かだが、お遍路ももうすぐ終わる。ここいらでもう一度気合いを入れ直す。


 71番札所 弥谷寺は琴弾公園から20km弱の距離。昨日まで海沿いの道を行くか、内陸の国道を行くか迷っていたが、結局内陸の国道を進むことにした。海沿いを行くと、途中に峠越えが待っている。内陸の道なら、それほど大変ではなさそう。お寺への最後の道が結構な坂道になっているようなので、それまでに体力を消耗する訳にはいかないのだ。


 国道を離れ、しばらく進むとお寺への坂が待っていた。もう毎度のことなので、ギアを軽くして、ひたすらペダルを漕ぐのみ。距離は1kmほどしかなかったので、休憩することなく上りきれ、弥谷寺の駐車場に到着。


 駐車場のすぐ近くには道の駅があり、温泉施設もあった。これなら昨日のうちにここまで来て、この道の駅に泊まれば良かったと、ちょっと後悔。そうしたら朝から坂を上る苦労をしなくて済んだのにと。経験をアテにして、きちんと調べなかった自分が悪いのか。


 道の駅でトイレを済ませ、駐車場からお寺まで500mほどの歩き。これがちょっとした山道で、500段ほどの階段もある。山の中にあるお寺で、45番札所 岩屋寺と似たような印象。岩屋寺を思わせる岩に埋め込まれるようなお堂もあった。また道中には摩崖仏が点在していて、それらを探しながら歩くのも楽しい。階段がたくさんあって登るのは大変だったが、それほど苦痛に感じない。それは道中に見所が多くて、楽しませてくれたからだろう。


 本堂手前で木々が開け、遠くの景色が見える。天気がイマイチで絶景とはいかないが、朝の空気感も含めて気持ちが良くなった。お参りを済ませ次の札所を目指す。本日はできるだけたくさんの札所を回るつもりだ、ゆっくりとしていられない。


 72番札所 曼荼羅寺へも、ちょっとした峠越えの道。たぶん、本日最後の峠越えの道だろう。そう思うと気は楽だ。曼荼羅寺に近づくと、祭り囃子が聞こえてくる。お寺の近くではお祭りが行われているようだった。祭り囃子にあわせての読経というのも面白い。


 73番札所 出釈迦寺までは、曼荼羅寺から500mほどの距離。自転車は曼荼羅寺に停めておき歩くことにした。お寺までは上り坂で、自転車で来なくてよかったと思う。


 次の74番札所 甲山寺は、出釈迦寺からは3kmほどの所。お寺の周辺は、弘法大師が幼少のころ、よく遊んだ場所らしい。ただお寺はこれといった特徴がない。


 次の75番札所 善通寺が、本日一番の見所だった。真言宗善通寺派の総本山で、弘法大師三大霊跡のひとつ。駐車場も大きく、たくさんの車や観光バスが停まっていた。境内に入ると、たくさんの観光客がいる。規模が大きく観光客がたくさんということで、地元奈良の東大寺や薬師寺を思いだす。お遍路中で見たお寺としては、愛媛の岩手寺と並ぶか、それ以上の人の多さだった。


 東院西院に別れ、たくさんの堂宇が並ぶ。五重塔に御影堂、金堂と見所がたくさんだ。観光地化されているともいえるが、観光地化されるほどの見所のあるお寺。同じような印象のこぢんまりしたお寺が多い中、規模も大きく華々しいこのお寺が気に入った。お参りするだけでなく、少し時間をかけてじっくり見て回ることにした。


 お参りを終えると、ちょうどお昼時。駐車場近くにある、セルフ式のうどん屋に入ることにした。お昼時ということもあって、店の中は人で一杯。狭い店内で食べている後ろをたくさんの人が通り過ぎ、落ち着いて食べることが出来ず。味もボリュームも値段も満点なのだが、くつろげなかったのが残念だった。


 お昼12時すぎの時点で、5カ所の札所を回ることが出来ている。朝の段階では、7つか8つ行ければ良いかなと思っていたが、これならもっと行けそう。さらに気合いが入ってくる。


 76番札所 金倉寺、77番札所 道隆寺とお参り。道隆寺を過ぎると丸亀市内に入る。お遍路を計画した時点では、訪れるつもりでいた丸亀城を通り過ぎることにした。気分は観光ではなく、お参りすることになっていた。


 78番札所 郷照寺の近くでも、お祭りが行われていた。秋祭りがおこなわれる時期というのも、地域性があるのだろう。宇多津祭りという、かなり規模の大きいお祭り。交通規制が敷かれ、道には屋台や人が一杯。お寺へ行く案内看板に従って進もうとすると、屋台の並ぶ通りに阻まれ、お寺への道がわからなくなった。あたりをぐるぐると回ることになり、ちょっと時間をロス。


 なんとかたどり着いた郷照寺でお参りを済ませる。当初の予定では、このお寺まで来られるかどうかと思っていた。しかし時間は14時半を過ぎたところ、あと2つは回れそうだ。


 79番札所 天皇寺へは6kmほど。入り口には三ツ鳥居という、奈良の大神神社にあるのと同じ、珍しい形の鳥居がある。お寺の入り口では無くて、神社の入り口のようだ。お寺は神社の隣にあった。神社がメインで、お寺が添え物。そういえば以前もあったなと思い出そうとするが、どこだったか思い出せない。たくさんのお寺を訪れすぎた。よほど強烈な印象がないと、お寺の名前が浮かんでこない。


 お参りを終え、15時半くらい。80番札所 国分寺までは7kmほど。平坦な道なら1時間もかからない距離だ。納経締め切り時間までには、充分間に合うだろう。頑張って国分寺まで走る。


 納経締め切り時間には、余裕で間にあった。しかし、大師堂が納経所の中にあり、納経所が16時半くらいから閉店準備を始めている。17時までにお参りを済ませればよいと、ゆっくりと構えていたが、最後はバタバタと慌ただしくお参りすることになった。


 納経している時に納経所内を見渡すと、「Life is HENRO」のロゴをつかった、オリジナル商品が所狭しと並べられていた。この札所は物販が充実している。ちょっと見ただけで、興味を引かれるものがたくさんあった。しかし、閉店準備中で吟味する時間もなく、何も購入することなく納経所を後にした。


 お参りを終えた時点で、もうすぐ17時といった時間。本日は10ヵ所の札所を回ることが出来た。このお遍路中で最多。やっと80番札所まで来たのだ。残すところはあと8つ。少しお遍路に飽きていたところで、カツを入れることが出来たかもしれない。


 本日の宿泊場所は、5kmほど離れたところにあるキャンプ場。最近は17時を過ぎると、一気に暗くなってくる。急いで向かうことにする。途中、コンビニによって夕食を購入。本日はもう自炊する気力はない。テントを張ったら、すぐにでも眠りたい気分。


 コンビニを出たときに、空を見上げると、夕暮れにきれいな飛行機雲が見えた。それほど珍しくはない光景が、なぜか印象に残る。この後はもう少し走り、運動公園に併設されたキャンプ場に到着。真っ暗になる前にテントを張って、逃げ込むようにテントに入る。テントの中では、すぐに眠ってしまった。

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