モヤモヤしながらのお遍路
運動公園キャンプ場にて、6時起床。閉園時間を過ぎると運動公園はとても静かで、ゆっくり気分良く過ごせた。騒音がないというのは、素晴らしいことだ。
いつも通りにスティックコーヒーとホットサンドで朝食。テントのフライシートは結露しておらず、出発準備も楽そう。と思いきや、グランドシートはやはり濡れていて、砂まみれになっていた。これを乾かし、砂を払い落とすのに手間取った。結局、出発するのは8時になった。
20kmほど先にある、本日最初の札所 横峰寺は標高500mくらいの所にある。途中までは自転車で行けるが、最後の2kmほどは歩きで山道を上らねばならない。その自転車で行けるところも、厳しい坂道と聞いている。
お寺の近くまで行ける車用の道もあるが、そちらはさらに斜度がキツいらしい。車向けの道は、自転車で上ることを端から考えられていないので当然か。しかも車のすれ違いも大変なくらいの狭い道とのことで、こちらは無理と決めていた。
キャンプ場から出発して12kmくらいまでは、平坦な道がつづく。徐々に山の中に入っていくと、そこそこの坂道が現れる。思っていたよりは、キツくない。やはり少しは鍛えられているのであろう。お遍路を始めたころとは、持久力が違う。休憩もとらず、坂を上り続けた。
そして最後に待ち構えていたのが、斜度12%の坂道。距離は短いものの、最後にこれはキツい。「これで終わり。もう少し頑張れ」と自分を励ましながら、ペダルを踏む。カーブを曲がったところに、自転車で来られる最終地点の休憩所が見えた。
休憩所の東屋に自転車を立てかけておき、ひと休み。思っていたよりはキツくなかった印象。ただ、最後の12%の坂だけがキツかった。なんとか乗り越えたが、なかなか息が整わない。近くに湧き水があったので、冷たい水で喉を潤す。しばらくは東屋のベンチに腰掛け、息が整うのを待つ。
このあとは約2.2kmの遍路道がまっている。見るからに険しそうな山道。気合いを入れ直す。衣装を整え、お参りセットや補給食・ペットボトルを入れた、さんや袋を持って出発。最初は整った階段であるが、しばらく進むと本格的な山道となった。川をまたぐ橋が架けられ、危険な箇所にはロープが張られている。整備された山道ではあるが、急な登りもあって、やっぱりキツい。自転車プラス歩き、それぞれ違う筋肉を使うキツさ。
山道を歩くこと1時間、やっと仁王門が見えた。境内に入り、とりあえずベンチで休憩。お参りを済ませた後も、しばらくはベンチで休憩。充分に脚を休ませ、来た道を戻る。下りはやはり膝に来た。自転車を置いてある東屋に戻った頃には、脚がぷるぷる震えていた。
東屋に戻ってきたのが12時くらい。結局、午前中は横峰寺に費やしてしまった。この後は急がなければならない。本日は64番札所までの5つのお寺を回って、無料のキャンプ場まで走る予定。距離的にはそれほどではないが、お参りにそれなりの時間がかかるので、あまりゆっくりしていられない。キャンプ場にも日が暮れる前には、着きたいところだ。
もっと東屋でゆっくりしたかったが、そういうわけにもいかない。すぐに出発する。しばらくは下りなので、ペダルはほぼ漕がなくて良い。この間で、脚を休めることにしよう。
横峰寺から坂を下りしばらく行くと、61番札所 香園寺。ここがちょっと変わったお寺。現れたのが近代的な建物で、見た目はお寺というよりコンサートホールだ。この2階に本尊も弘法大師も祀られていると書かれていた。外階段を2階にあがり中に入ると、前の方がお寺の内陣で、後の方はコンサート会場や映画館のような椅子が並ぶ。お寺とは思えない。薄暗い中で読経するも、お寺でお参りするのとはちょっと違う、不思議な感覚。
さらによくわからないことがこの後に。納経所で、次の62番札所は100mほど離れたところの駐車場にあるといわれる。駐車場には、62番札所 遙拝所があった。どうやら宝寿寺が四国八十八カ所霊場会に参加していないので、このような形になっているようだ。何かもめ事でもあったのだろうか。
ここの納経所には、次は63番札所 吉祥寺にお参りしてくださいと書かれてた。何なんだろう。実際の62番札所 宝寿寺には訪れなくても良いということなのか。やはり宝寿寺には訪れた方が良いだろうかと思いつつも、納経したのでもういいのかなと。急いでいるので63番札所に向かうことにした。
*注
宝寿寺は、会費未納や、納経料金・納経時間をお寺独自に設定したことで四国八十八ヶ所霊場会と揉め、脱会をめぐり裁判沙汰にまでなる。それ以前から、お遍路さんとのトラブルなど、問題の多いお寺といわれていたようでもある。
2017年3月高松地裁にて、宝寿寺が四国八十八ヶ所霊場会から脱会することが認められた。脱会を受けて、四国八十八ヶ所霊場会は61番札所 香園寺の駐車場に62番札所 遙拝所を設立。こちらで納経と御影の配布をおこなうことになる。62番札所が「礼拝所」と「宝寿寺」の2ヶ所あるという、歪な状況になった。
しかし、経緯は不明だが、2019年12月1日より宝寿寺は、四国八十八ヶ所霊場会に再加入。12月15日には遙拝所は廃止され、宝寿寺では参拝時間・納経受付時間、納経金額が四国八十八ヶ所霊場会で取り決めている通りとなった。
*
61番札所から63番札所はそれほど離れていないので、すぐに到着。宝寿寺を飛ばしたことに、モヤモヤを引きずったままお参り。引き返して宝寿寺を訪れるか迷うも、納経帳にはすでに御朱印はある。別の所に御朱印をもらうのも何か変だし、先に進むことにした。
次は本日最後の64番札所 前神寺。こちらは少し離れていたが、道のりは平坦なので楽に到着。横峰寺を過ぎたあとは、ずっと平坦だった。お参りを済ませ、本日宿泊予定の20kmほど先のキャンプ場に向かう。時刻は15時すぎ。そういえば昼食を食べていなかったと、食事の出来るところを探す。すると値段の安さで旅人に人気のファミリーレストランを発見、こちらで食事をすることに。
この後はキャンプ場へ向けて、ひたすら走るのみ。本日後半は天気も悪くなってきていて、16時なのにずいぶんと暗い。明日からは雨の予報がでているので、キャンプ場でテントを張ってこれをやり過ごすつもりだった。
薄暗い中の17時過ぎ、キャンプ場に到着。テントサイトの説明がないので、炊事棟があるところがテントサイトと判断。受付らしきところは16時半で終了しているようで、明日にでも申請すればよいかと。
明日に備えて、雨が凌げそうな所を探すも、そんなところはなくて。炊事棟にテントが張れるかもと、試してみたが狭くて無理だった。とりあえず大きな木の下にテントを張ることにした。明日は大雨との予報もあるので、テントが持つか心配だがなんとかなるだろうと深く考えず。
テントを張って中でしばらく休むことにする。しかし、ここで大変なことが判明。テントを張った場所はスマホの電波が入らない。外に出て電波が入るところを探すも、テントサイトらしき所ではどこもしっかりと受信できず。明日は大雨の予報もあるのに、情報が得られないまま過ごすのはちょっと不安。
しかし、キャンプ場から離れるのも面倒だし諦めることにした。こんな時ラジオがあればと、またも後悔しながら、夜を過ごすことになった。
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