七子峠を越えて
中土佐にある道の駅にて、4時半起床。エンジンをかけっぱなしのトラックがいたため、ぐっすりと眠れず。車を停めて仮眠をするところというのが、道の駅本来の姿。間借りしている身分なので、これは仕方がない。
テントの中でゆっくりとしてもいられず、朝食の準備。テントの前室で、ホットサンドとコーヒーを作る。スマホをいじりながら朝食を食べ、その後にテントの撤収。薄暗い中での撤収だが、ヘッドランプをつけて、手際よくおこなう。日本一周の経験から、「暗いうちに逃げるような撤収」はお手の物だ。
荷物はカバンに詰めて、自転車に取り付ける。これで出発準備は完了。いつでも出発できる。しかし、辺りはまだ薄暗い。明るくなるのを待つことにする。しばらくは道の駅のベンチにて、スマホで天気予報やニュースサイトをチェックして時間を潰した。
ニュースサイトを見ると、台風19号の被害が多く報告されている。15号の時は風の影響により被害を受けた場所が多かったが、今回は雨による被害が多い。河川の氾濫が数多く報告されていた。しかも、長野、関東地方、東北地方と広範囲に渡る。長野新幹線が水につかっている画像に衝撃を受けた。1年のうちに2度の甚大な台風被害。令和元年は台風の年として、記憶されるのだろう。
朝6時になって、明るくなってきたので出発することに。
本日はいきなり標高300mの峠越え。日本一周の時もクリアしているこの峠、それほどキツくないのはわかっている。300mを7kmくらいで上っていくので、斜度は緩いし足を休めるところもある。
体力落ちを実感している今回の旅、果たしてこの峠を越えられるのか? これを越えられないなら、かなり体力が落ちている証拠。標高の高いところを行く愛媛では、更にキツいということになる。この峠越えが一つの試金石と考えていた。
道の駅から、ほぼずっと上りが続く。斜度はそれほどキツくないので、ギアは一番軽くせず余裕を残して。1kmごとに「七子峠まで○km」という表示があるので、数字が減るのを確認しながら頑張るのみ。残り3kmの表示のところで一休み。日本一周時もここで休憩した。
ここまで上って、これなら行けると感じていた。この旅で上るのをあきらめた坂道は、やはり斜度がキツかった。七子峠くらいの斜度なら、楽勝とはいわないまでも休みながらであれば上れる。1時間くらいかけて、七子峠の頂上に到着。日本一周の時と変わらない時間で上れた。それほど体力は落ちていない、この後も行けるんじゃないか、そんな自信を得た。
本日はあいにくのお天気で、峠からの景色は今ひとつ。気温も16度とちょっと肌寒い。日中はもう少し暖かくなる予報だが、朝晩はめっきり寒くなってきた。自動販売機で温かいコーヒーを買って、ひと休み。この後はしばらくは下りが続く。体が冷えないように、ウインドブレーカーを着て下りのスタート。
気持ちよく坂を下った後は、アップダウンの繰り返しが待っていた。下りは良いが上りはしんどい。下りはいらないから、上りをなくし平坦な道にして欲しい。アップダウンを繰り返す道を走っていると、いつもそんなことを考えている。
途中、窪川の道の駅でトイレ休憩。37番札所 岩本寺へはあと少し。
岩本寺は町中にあるお寺。昔ながらの和菓子屋さんや果物を販売しているお店などがある、門前町の雰囲気が良い。いつものようにお参りをするのだが、このお寺はちょっと変わっている。本堂には不動明王の他に、観世音菩薩、阿弥陀如来、薬師如来、地蔵菩薩が祀られている。なんと、ご本尊が5体。読経の時もご本尊真言を、5体分読み上げることに。ご本尊真言が複数あるのは初めてで、読経もちょっと大変だった。
そして、本堂の天井もなかなかの見物。さまざまな絵が天井に飾られている。本堂を新築した際、全国から公募したもので、575枚の絵が飾られているとのこと。見応え充分で楽しませてくれた。お参りを終えて、時刻は9時。時間はまだまだあるが、本日訪れるお寺はこれで終わり。
次のお寺は90kmほど先の足摺岬の先端にある。行こうと思えば行ける距離だが、本日はその手前、四万十川河口にあるキャンプ場に宿泊する予定である。一昨日泊まった種崎千松公園と同じく、こちらも無料で、自転車やオートバイでツーリングする人に人気のキャンプ場。近くには銭湯もあるし、お風呂に入ってすっきりとしたあとに、ゆっくりとキャンプ場で過ごそうと。
窪川から海沿いに出るまでの道のりは、アップダウンも激しく、体力を消耗していく。10時半くらいに土佐佐賀にある道の駅に到着。ここの道の駅は食堂のメニューが充実していて、日本一周の時にも利用した。今回もちょっとお昼には早いが、アップダウンに疲れていたし、朝食も早かったのでここで昼食を。
こちらの道の駅の名物は、もちろん鰹のタタキ。ただ、鰹のタタキだけでは物足りないので、揚げ物も入っている土佐かつお丼を注文。鰹のタタキに、鰹のカツ、そしてそぼろになった鰹が、どんぶりに盛られている。同じ鰹を素材としても、食感も味わいも全く違う料理が一度に味わうことが出来、満足。
食後はもうひたすら走るのみ。ひたすらアップダウンを繰り返して進む。
道の先にお遍路さんが3人、歩いているのが見える。37番札所から38番札所への道は、お遍路の中で最長距離の90km。1日で歩ける距離ではないので、2・3日かけて歩くのだろう。応援の意味を込めて、追い越す時にサムズアップと「がんばって」の声を送る。先頭を歩いている、ベテランなのか風格のあるお遍路さんが手を上げて答えてくれる。うれしい。
本日の序盤は山の中ばかりだったが、後半は海沿い海沿いを走ることになる。日本一周の時にも利用した、海沿いの道の駅で休憩。この頃には、天気は良くなっていて日差しもキツく感じる。気温も高くなってきたので、ソフトクリームを購入。
キャンプ場まであと10kmくらいのところに、温泉施設があった。現在時刻は13時すぎ。思ったより早く着きそうなので、ここで少しゆっくりすることにした。キャンプ場の近くにも銭湯があるのだが、色々な種類の湯船がある大きめの温泉施設の方が、ゆっくり出来るだろうと考えてのことだ。
温泉の入り口に「ボイラー故障により、露天風呂は閉鎖中」の貼り紙がある。この旅3日目、神山の温泉でも露天風呂に入れなかったし、ついていないなぁと。それでもこちらの温泉には、ジェットバスの種類が複数あったり、歩行浴が出来たりとなかなか面白い。楽しみながら疲れをとることが出来た。結局2時間くらい、こちらで時間を潰した。
市街地をぬけ、四万十川の河川敷にあるキャンプ場へ向かう。入り口がわかりづらくて少し迷うも、16時前には無事到着。こちらはキャンプ場というより、河川敷の広場といったようす。芝生のエリアは広いが、炊事場はないし、トイレも簡易トイレがあるだけ。水道は公園でよく見かける、簡単なものだけだった。
キャンプ場使用に関する詳しい説明が見つけられず、どこにテントを張って良いものやら。一応あたりをチェックして、芝生にテーブルがあるエリアにテントを張ることにした。トイレや水道にも近く、便利だろうと。食事をするのも、このテーブルを利用できる。
キャンプ場での夕食は、いつもなら米を炊くのが普通。そのために1.5リットルのペットボトルに、米を入れて持ち運んでいる。おかずは缶詰だったり、レトルト食品だったり、インスタントラーメンだったりだが、のんびりと食事の準備をするのが楽しい。しかし、ここには炊事場がないので、洗い物ができない。作ることは出来ても、後片付けが出来ないかなと。自炊はあきらめ、購入していた菓子パンを夕食代わりにすることにした。
食後はテントの中で、寝ころんで音楽を聴いて過ごす。種崎千松公園と違い、近くに大きな道路はないし、平日なのでうるさいキャンパーもいないだろうし、静かに過ごせそうだ。昨日の道の駅でのテント泊と違い、気分的にものんびり出来る。本日の終わりはゆっくりと過ごす。
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