『オッサンの壁』佐藤 千矢子

『オッサンの壁』講談社現代新書2658 佐藤 千矢子∥著(講談社)2022/04


〈私が思うに「オッサン」とは、男性優位に設計された社会で、その居心地の良さに安住し、その陰で、生きづらさや不自由や矛盾や悔しさを感じている少数派の人たちの気持ちや環境に思いが至らない人たちのことだ。いや、わかっていて、あえて気づかないふり、見て見ぬふりをしているのかもしれない。男性が下駄をはかせてもらえる今の社会を変えたくない、既得権を手放したくないからではないだろうか。

 男性優位がデフォルトの社会で、そうした社会に対する現状維持を意識的にも無意識のうちにも望むあまりに、想像力欠乏症に陥っている。そんな状態や人たちを私は「オッサン」と呼びたい。だから当然、男性でもオッサンでない人たちは大勢いるし、女性の中にもオッサンになっている人たちはいる。〉(p13より)


いっとき「ひるおび!」を毎日見ていたころにコメンテーターとして出演してた千矢子さんの本だーと軽い気持ちで手に取って見たところ、すっごい内容が濃かったです。思わぬところで政治の勉強にもなりましたし。


いやしかし、オッサンが当然のように繰り出してくるセクハラがひどい。本当にひどい。男性社会の中でそういうめにあったとき、的確なアドバイスをくれたり庇ってくれたりするのもまた男性で、周りにそんな人がいてくれるかどうかの人の縁に左右されるところは大きくて、もーほんと泣けますね、泣けました、私は。


連合の芳野友子氏の会長就任や、記憶に新しい高市早苗氏と野田聖子氏の自民党総裁選立候補について、女性が貧乏くじを引かされただけではないか、真逆のスタンスの女性ふたりが立候補といっても男社会に同調しているのは同じじゃないのか、なんてもやもや感じたことをすっきりとまとめてくれてもいて、そういうことかとすっきりもできました。

さも女性が活躍しているかのような話題を見てもやもやしている人はきっと多いですよね。「女性差別なんか全く解消されていないのに、さも解消されたように振る舞っている世の中はちょっとおかしい」です。


〈私がずっと「女性初の○○」という言い方を嫌がってきたことも、自己満足に過ぎないと思うようになった。次の世代に目が向いていない。(中略)我慢して男性優位社会に同調し、同じような社会を次の世代に渡すのは、身勝手だと考えるようになっていった。〉(p149-150)


〈女性の生きづらさは、男性の問題でもある。女性が生きづらい社会は、男性だって肩肘張っているが本当は生きづらい社会なのではないか。〉(p233より)


クオータ制どころじゃない、パリテ法くらいの勢いで女性議員や女性管理職を増やすべきって私は思います。



初出:読書メモ56 近況ノート202年1月14日

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