第3話「月に浮かぶ涙」

2000年 9月18日 22:00


あの本を貰ってから、二日が経ったある日

平日の皆が寝静まった時だった。

私は、まだ勉強をしていた。が、中々集中が出来ていなかった。


それの原因はあの本だった。私は、休日を使って、あの本について調べた。

どうしても、作者が気になったのだ。あんなに綺麗な作品を作れる人に

実際に会えなくても感想は送りたいと思っていたから

だが、インターネットを使ったり、書店であの本の事を調べて貰っても

出てくる事は愚か、題名すら見つからないでいた。


「はぁ…」


一人部屋の中、机に突っ伏しながら私は進まない勉強とあの本の事で精いっぱいになっていた。

あれから、他にも不思議な事もあった。

圭介のお爺さんには、あの後聞くも、何も答えずむしろ?と言った顔をしていた。

答えたくないのか、それとも、知らないふりをしたいのかは分からない。


私は、机の上に置かれたあの本を取る。


表紙をめくり、ページを一枚、一枚開き、何処かに何か書かれてないのか。

作者でも出版社でも書かれてないのか。

色んな事を調べていく。けど、中学生の私じゃあ出来る事は精一杯。


お手上げな状態に、私は座っていた椅子から降りて、明日に備えようとする。


その時だった。チラリと見えた窓の外から、何かふわふわと飛んでいくものが見えたのだ。

何だろうと思い、私は窓を開けて、確認しようとする。が、先程見たようなものは何処にも無かった。

隣から見えたアレは一体なんだったのだろう。

圭介の家から飛び立つように見えていたアレは一体。


私は、疑問に思いつつも、明日に響くのは嫌だからと寝始めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ちょうちょ ちょうちょ 菜の葉にとまれ~


菜の葉に飽(あ)いたら

桜にとまれ


桜の花の 花から花へ

とまれよ あそべ

あそべよ とまれ


誰かが歌っていた。誰だろうと思い、真っ白な空間を歩き始めた。

数分もすると、音が少しずつ大きくなり、そこに誰かが居た。

誰かはゆっくりと振り向くと










ねぇ、貴方は誰なの?


「私は私。貴方は詩織でしょう?」


えぇ、そうよ。私は詩織。


「これは、現実よ。貴方が見たのは、蝶々なの」


クスクス


「ここはマヨヒガ。現世と来世を隔たれたるべき場所」


「貴方は、ここで来るための選択を選んだ。貴方は蝶へと舞い降りたの」


どういう事?


「貴方はだった」


訳が分からない


「分からなくて当然。貴方は護られた」


誰に?


「貴方は―――――」


彼に護られたの


指さす先には圭介が独りそこに佇んでいた。


「圭介!!」


私はそこで目が覚めた。冷汗が大量に出ており、起き上がるとそこは家ではない場所だった。

近くには、泣いている父親、母親がそこにいた。周りには、白い服装で身なりを整えた人達。

ここは、すぐに病院なんだと分かった。



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