「言葉」「宇宙」
亜中洋
毎日投稿する短編
宇宙人が地球を侵略しにやって来る────昔の映画ではよく見かけたシチュエーションだが、遠く離れた星までわざわざやって来る理由は何だろう・・・・・・と考える。
資源を得るため?
棲むため?
そんなことを考えているこの少年、実は現在進行形で宇宙人の侵略を受けているのだ。
この宇宙人の大きさは約1μm、細菌ほどの大きさしかない。
生き物の脳に棲みつき、その脳波を浴びて暮らしている。
そして、十分な脳波を浴びて成熟した宇宙人は宿主の脳を支配してしまう。
彼らが地球に飛来したのは約1億年前。当時の生き物の思考はシンプルで、十分な脳波を浴びて成熟する宇宙人はそう多くなかった。
風向きが変わったのは人類の誕生、そして言葉、さらに文字の発明である。
言葉は人間の脳に“無駄な”刺激を与え続け、文字は意味不明な羅列ですら人間の思考を回転させた。
そうして成熟した宇宙人は人間の行動を支配し始める。
宇宙人が支配した人間に何をやらせるかというと、娯楽の創出である。
音楽、演劇、スポーツ等の娯楽は人間の脳に刺激を送り続け、宇宙人達はさらに個体数を増加させた。
脳内の宇宙人が成熟した人間は中毒のようにマンガを読み漁り、同族を成熟させる為にファンアートを投稿する。
そしてまた、ここに脳を支配されてしまった少年がひとり・・・・・・。
少年は自分と誰かの脳を刺激するため、女性用の下着を身に付け、その写真をSNSにアップロードするのだった。
「言葉」「宇宙」 亜中洋 @anakayo
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