君を変える魔法(2/2)
「あー……ごほん。そろそろいいかしら」
と、リアの
「君は……」
彼女が何者なのかを思い出したケントは思わず
「オルフェスの班の……」
オルフェスの属する十四班の魔法科の生徒。名前はたしか――
「エリス。魔法科のエリス・ステット」
ぶっきらぼうな自己紹介。
ケントの記憶が確かなら、模擬戦前にリアを
ぶすっとした表情のエリスはリアに視線を送りつつ、
「先に行かないでよ……絶対こういう
先ほどまでの温かな雰囲気とは一転、どことなく緊張した空気となった場に、
「あー……ごめん。つい」
そう返したのはあの時虐められていたリアだった。
それを
「何の用だ。またリアに文句があるっていうなら……」
そこまでケントが言ったところでエリスはゆっくりと、
「あの時のことは……もう
意外な言葉にケントがリアの方を向くと、リアはこくりと
「……他の二人は?」
あの時エリスは他に二人魔法科の生徒を連れ立っていた。今はその姿はない。
「あいつらは……もうつるんでない」
そしてエリスは一度
「私のこと……
模擬戦の敗北が、彼女らの関係を変えた。
リアが落ちこぼれでなくなった今、他に誰か
自分はこいつよりはマシだと。
選ばないという
――貶められる者の気持ちは、貶められた者でなければ分からない。エリスはようやくそのことを知ったのだ。
「本当に、リアには
「もういいよ。もう十分謝ってもらったよ、大丈夫だから……」
そこにもう、過去の
「エリスちゃん。今日はケント君にお願いがあって来たんだよね?」
ここで自分の名前が出たことにケントは
エリスはケントへと向き直った。
「……私に、魔法を教えてほしいの」
「魔法を……?」
「違う
そして、エリスは頭を下げた。
「――理由を聞いても、いいかな」
頭を下げたまま、エリスは、
「……私は、ずっとリアのことを下に見てた。自分より下のやつがいるんだから、私はまだ大丈夫だって、そう思ってた」
リアは
「そうしてないと、不安で
誰かを下に見る以外で、彼女が
「私は……変わりたい……!誰かを下に見なくても大丈夫なように……自分に自信が持てるように……強くなりたいの……だからッ……!!」
高まった感情がとうとう
彼女のしたことは、とても
だが今彼女の流した涙は、将来、どんなに
ケントは
その誰かは、ただ
だからマルティナは、肩を
「決めるのはケント、君だ。どんな答えでも、私に
ただ、とマルティナは続ける。
「ケントは、優しいからな」
そう言って笑う。ケントがどう答えるかなど、とうに分かりきっている。
そしてケントは、エリスの見える位置に、右手を差し出した。その手にはまだ
オルフェスの
もしオルフェスが努力することの価値を
努力の価値を
顔を上げたエリスと目が合う。ケントが
自分を変えたいと。そう願い、努力しようとする者を誰が
それは誰にでも認められた
そしてケントは、その手伝いをしたい。
だから、こう言うのだ。
かつて彼が兄に言われたように。その者の可能性を信じ、その背中を押すために。
「大丈夫。君ならできるさ」
君を変える魔法 ー天才と落ちこぼれー end
君を変える魔法 ー天才と落ちこぼれー noyuki @noyuki28
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