第五章
天才の証明(1/8)
まだ
「おはよう」
「おはよう。すまない。遅くなった」
「毎日やってる僕が言う事じゃないかもしれないけど、無理はしない方がいいよ?
マルティナの身体を
「確かに毎日はキツいが、
この早朝のランニングメニューはケントがマルティナに指示したわけではなかった。ふとした
「それじゃあ行こうか。無理に僕に合わそうとはせずに自分のペースでね」
「分かった」
先頭をケントが行き、その少し後ろをマルティナが
その内、マルティナの足音が
意識を
するとマルティナの走る速度がほんの少しだけ上がる。私に合わせなくてもいい、という言葉無き
言葉を
いつものように学校の
「ふぅ……もう二周走り終えたのか……
運動の熱により少しだけ上気した
すでに訓練中、訓練後の
「まだまだ
「いやいや、マルティナはもともと体力や筋力は落ちこぼれって言われるようなレベルじゃなかった。ちゃんと努力してたんだなって分かるよ」
なるべくマルティナの方を見ないようにしつつケントは言う。その言葉は嘘ではなく、初めて出会った時点でマルティナの運動能力は落ちこぼれと呼ばれるようなものではなかった。
問題なのは技術と思考の
「ありがとう。だが……これで、勝てるだろうか」
不安が
「前期中間試験ももう明日だ。やれるだけの事はやった。だが、もっとできることがあったんじゃないかと思わずにはいられない」
なるほど、とケントは思った。彼女がケントの
直前にまで
目に見えて自分の上達を知ることができる魔法とは違って、体力、筋力の向上は自身ではなかなか実感しにくい。もとよりたった一ヶ月で
「いや、マルティナはちょっと思い違いをしてるよ。今回の試験は相手に勝つことはあまり重要じゃない」
その不安を和らげようと声をかける。
「結果より
採点
「だからあまり
元気づけようとしたケントだったが、マルティナは少し
「そうだとしても、だ。……やっぱり、勝ちたいじゃないか。私と、リアと、ケントの三人で」
その少しばかり子供っぽい
「ケントは勝ちたくないのか?」
投げかけられた問いに、首を横に振る。
「もちろん僕だって勝ちたいさ。……というより、勝つつもりだよ」
その
「相手は学年二位の実力者。だが、一対一ならともかく私とリアというお
ケントとオルフェスの実力はほぼ
「お荷物?僕は二人の事をそんなふうには思ってないよ。
恐らくケントの予想通りなら、試合中、ケントが二人を
「僕の見立てでは、決して分の悪い勝負じゃないと思う。マルティナも、リアもこの一カ月本当に
それに……と内心ケントは付け加える。
リアにはある奥の手がある。待機詠唱ができなくとも、待機詠唱に
誰もが使える技術というわけではない。少なくともケントにはできない。それは間違いなく彼女の才能といえよう。彼女は一月でその才能を開花させた。
(ああ、そうか。だからマルティナは自分が足を引っ張るんじゃないかと不安なのか)
リアのそのことについてはマルティナも知っている。だからこそマルティナは目に見えた成果が出ていない自分が一番の不安要素だと思っているのだ。
「マルティナ。今回の試験は、リアとマルティナの二人がどれだけ
努力を否定することはできても、何か一つのことに真剣に向き合うことができるという人間性は絶対に否定できない。努力できるというのは、それだけですごいことなのである。
今回の試験で、彼女らのそのすごさを、彼女らを
「ケント……ああ、分かった!」
と、マルティナが
「さ、朝練は終わり。
「ああ、また放課後に」
そうして二人は別れた。空はもうとうに
ケントのルーティンワークと化しているこの朝のランニングだが、この日はいつもとは違った心持ちでトレーニングすることができた。
走っている
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