天才の証明(2/8)
この日、シファノス陸軍学校に通う二年生達の間には何とも言えない
相手の班はどんな作戦で来るのか、この一カ月でどれだけ成長したのか。相手が分かっているからこそ、それを
そんな決戦前夜の空気の中、あのケントを敵視している学年二位の
だが今日の授業が終わり、ケントが足早に教室を後にしようとした時、すれ違いざまに彼は一言、
「明日が楽しみだ」
そうケントに聞こえるように
立ち止まってケントが
「……僕は忘れていないぞ。あの言葉、必ず
ただ一人、学年二位のデモリスを
朝、ケントは試験結果に勝敗は関係ないとマルティナに言った。なのにその一方で勝つつもりだとも言った。
ケントには勝たねばならない理由があったのだ。
「ガッハッハッハ!いやぁ、ピリピリしておりますな!」
そのピリピリとした空気とは反対の
「このゴドウィン・ファドス、第一線を
そういって普通科担任教師は丸太のような
血が滾るというのはあながち
「ゴドウィン先生、
「私は私は?」
「なるべくジッとしててください」
にべもない言葉に魔戦科担任教師のフランツィスカ・シュタインは口を
シファノス陸軍学校の二年生を担当している教師三人は多目的訓練場の
訓練場の中心には二班分の生徒。他の順番待ちの生徒達は教師らとは逆の位置の端際に固まっている。皆一様に緊張と好奇の入り混じった視線でこれから始まる模擬戦に意識を集中していた。
「では、両班とも定位置へ」
アルバートの指示によって緊張した
基本的には双方とも大きな違いはないが、片や一方の普通科の生徒は盾を所持しており、片や一方の魔法科の生徒は魔法の
「制限時間はありませんが、あまりにも長引くようなら止めます。いいですか?あくまで相手に勝つことではなく、総合的な技術を見て採点するということを忘れないように」
はたしてアルバートの言葉がどれほど生徒に届いていることやら。向かい合う二班は緊張で
これは模擬戦である以上に試験。そしてその採点方式は勝敗に
そしてその心理こそ、他学科合同小隊演習の狙いの一つでもある。さらなる高みを目指すには、競争相手がいることは必要不可欠なのだ。
「それでは、くれぐれも無茶はしないように。第一試合……」
「開始ィッ!!」
アルバートの背後から飛び出さんばかりに張り上げられたフランツィスカの
木剣が打ち合わされる
「いよいよ始まったね……」
緊張のあまり胸の前で
誰かに馬鹿にされようとも、
「リア、アレの準備はできた?」
ケントが確認を
「うん、大丈夫」
「成功率は?」
「八……七割ぐらい……」
その言葉を聞いてケントも満足そうに頷く。
「上出来だ。やっぱりリアは才能があるよ」
ケントの
見かねたケントがその頭一つ分低い位置にある
「大丈夫。やれるだけのことはやった。今のリアなら、絶対大丈夫だ」
そう声をかけつつ、無意識に
思えば、無意識に彼女の頭に手を乗せてしまったのは二度目だ。
(変わったのは、僕も同じ、か)
その変化はケントにとって喜ばしいことなのか、そうじゃないのか。ケント自身には判断ができなかった。
ただ確かなのは、この一カ月はケントにとって楽しいと言っていい時間だった、ということだ。
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