僕の方こそ(3/4)
雲が気持ちよさそうに
一回目と内容はまったく同じだが、演習を受ける班の順番は逆となる。とは言っても、もともと番号がほぼ真ん中である十一班の演習開始のタイミングは最初と同じほどだ。
訓練場の
「うぅ……
そう言って口元を押さえているのはリア。実際顔色もよくない。
「だ、大丈夫だ!あれだけ特訓したんだ……大丈夫……」
リアに語りかけるというよりは自分自身に言い聞かせるように大丈夫、大丈夫と
十一班の中で
「二人とも、緊張してる?」
さっきからそう言っているだろうと言わんばかりにリアが
「一回目の演習の時と今、比べるとどっちがより緊張してる?」
質問の
「それは……今、だろう」
「どうして?」
「どうしてって……そりゃ、ケントに手伝ってもらって特訓したんだ。それで
「リアもそう思ってる?」
話を振られて、リアは
「……ケント君に特訓してもらって私、頑張ったよ。でも、やっぱりちゃんとできるか、不安で……」
それを聞いて、ケントの無表情が少し
「――そうか。よかった。二人に自信がついて」
その言葉の意味が分からずに落ちこぼれ二人はきょとんとした顔でケントの次の言葉を待った。
「二人とも、ちゃんとできるかどうかを気にして緊張してるんだろ?つまり、失敗しなければちゃんとできるんだと、自分にはその実力があることは
ハッとして二人はお互いに顔を見合わせた。
今まではどうだったかと考えると、確かにケントの言葉は
そもそも、
自分の実力では
だけど今は違う。学校一の天才が、自分達のために時間を
このたった一週間の努力は、彼女達の精神的な
そして、精神的な成長は必ず実績にも表れる。
これこそが努力の本質――
「君達が緊張しているのを見て安心した。二人ともちゃんと緊張できるほど、僕の言った通りに努力してくれたんだね。だったら、大丈夫。君達ならできるさ」
そうこうしている内に、十一班の順番が近くなってきていた。
三人は場所を移動し、準備運動を始める。
一週間で落ちこぼれ二人がどうにかなるとは思えない。そうなると同じ班の天才の成績が落ちる。あの天才が苦労して
彼らとて本心からケントが
誰かが落ちぶれていくのを見て
それがなぜかリアとマルティナの二人には
見返してやりたい、そう思った。
自分が笑われることには慣れている。だが、ケントが笑われていることにはどうしてか精神がささくれ立つ。
落ちこぼれの自分達を笑わず、見捨てたりせず、手を差し伸べてくれた。あまつさえ、君達ならできると声をかけてくれた。その信頼に
「十一班、開始位置へ」
魔法科担任の指示を受けて、十一班の三人が歩を進める。三人には知る
先頭を行くケントが、一瞬
「
その先をケントは言わなかった。だがリアとマルティナはその後にどんな言葉が続くのかもう知っている。
今までの自己流の手探りな努力ではない。すでに実績があるこの同い年の少年から
だからこそ、その費やした時間がそのまま自信になる。
落ちこぼれ二人は、
「「大丈夫、私ならできる――」」
自分のため、そして、こんな自分に期待してくれたケントのために。
「よろしいですね。それでは開始します」
開いた
むくりと三体の
「シュル/ペディム/エファ/エファ/ウエル――〈
一方のケントも同じ動き、完璧な発声で
伸ばされた右手の平から突き出される光の槍。直線上に魔力の
光の槍を腹に受けた
問題はここからだ。
起動している
「――っ!」
今回マルティナは、動かない。木剣を構えて無闇に突撃はしない。
ここに
彼女の身体能力は決して落ちこぼれと呼ばれるようなものではない。ではなぜマルティナはそう呼ばれるのか。
答えは簡単だ。馬鹿なのである。
普通科の授業は決して身体能力だけを伸ばすものではない。というよりも普通科に限らずシファノス陸軍学校では
この演習のような場では、目先のことしか
だから陣形を乱す。だから他人と協力することが難しい。だから、クラスから浮いてしまう。彼女の不器用さを
幸か不幸か、周りが視えないが故に自身が浮いていることにも気づかない。
(三メイトル……)
マルティナは脳内で事前にケントに言われていた言葉をもう一度
――リアから三メイトル、マルティナはその距離に
今回の十一班の作戦はとにかく基本を
マルティナがすべきことは、ケントが
二体目の対応にケントが動く、そしてもう一体はマルティナの
「せえぇいッ!」
気合いの声が
ガツンッ
重い低音、部位を破壊することはままならないが、受け止められなかった
(手首が痛くない――)
その
「ッ!リア!あとは
ハッとして我に
「シュル/ペディム/エファ/エファ/ウエル――」
ケントと比べれば
「〈
真っすぐに突き出された光の槍が、マルティナの一撃によって
「や、やった……!」
リアが今しがた魔法を
「次が来る!気を抜かないで!」
背後からケントの
リアもまたケントから二つほど指示を受けていた。
一つ目は
二つ目ば、使う魔法を〈
何より、使う魔法を一つに
第二波の
(大丈夫、信じろ)
ケントは自身にそう言い聞かせた。
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