他学科合同小隊演習(3/3)
「いやぁ、はは。こりゃ昼までに全班終わっちゃうかもね!」
「笑いごとではありませんよ。まったく、一年の間何をしてきたのか」
そう言ってアルバートがパチンと指を鳴らすと
「
フランツィスカの隣で腕を組む
現状試験を受けた班の内、その半数以上が時間まで耐えることができずに襲い来る
「あ、でもでも。次はうちのエースですよ。エース」
次が何班なのか確認したフランツィスカがわくわくと期待に胸を
「魔戦科始まって以来の天才……ですがあの班には……」
フランツィスカの様子とは裏腹にアルバートは表情を
「バランスをとるため、とはいえ、少々
どうやら普通科としても思うところがあるようで、普通科担任教師が
だが最終的な判断を下した学年主任はなんとも気楽そうな表情で演説台の上で
「だいじょーぶ。
エースと言っておきながら、天才ではない。その物言いに他の教師二人は首を
(……よし)
自分達の番が回ってきたので、ケントは内心で気合いを入れた。用意された木剣の
「
と、言葉通り
「作戦は、話した通りで」
前の班の様子を見ることができた分、事前に
「あ、ああ。私はとにかくリアを守ればいいんだな!
緊張はしているが、
一方で反応のないもう一人にケントが声をかける。
「……リア、さん?」
「ふぇ!?は、はい!」
「大丈夫、ですか?」
「だ、大丈夫じゃないけど、大丈夫です……」
ケントに声をかけられてリアの視線が右へ左へ泳ぐ。話しかけずとも常にそわそわしていて
「制限時間まで耐えるには、魔法がとても重要になる。だから、リアさんはとにかくそれに集中してほしい。僕と、マルティナさんが
安心させるつもりでそう声をかけたケントだが、
そう、この試験は魔法をいかに上手く使えるかが
「はぁい、じゃあ真ん中に立ってねぇん」
フランツィスカに
感情のないのっぺりとした人形十体に取り囲まれてケントは小さく深呼吸。大丈夫だと自分に言い聞かせる。試験の前はいつもそうしている。知られざる天才の本心。
アルバートがぱかりと
「よろしいですね。それでは始めます」
大げさな前振りもなく、静かに試験開始が告げられた。
同時に三体の
「シュル/ペディム/エファ/エファ/ウエル――〈
完璧な発音、それでいて人並みより速い呪文の
「やあぁッ!」
ケントの
が、
「くっ、
土を固めてできたその身体は見た目以上に硬く、それでいて重量がある。動きは鈍重だが、木剣で多少叩いた程度ではビクともしない。
しかも思いっきり振り下ろしたせいで手首に
「あまり前に出すぎないで!」
ケントが指示を飛ばすが、マルティナに聞こえているかどうか。向かってくるのに反応して前に出てしまい、リアを守るという役目を早くも
そして当のリアは――
「あわわ……で、でい/おる/え、エテ……」
向かってくる
(
魔法が完成するよりも
ガツン
硬い
だが一瞬動きを止められればそれで十分。
「フッ!」
「えて/エファ/ウえル――〈
「!」
「ふえぇ!ごめんなさいッ!」
「気にしないで」
明らかに
(まずいな……)
無表情ではあったが、内心ケントはどうすべきか
他の班の試験の様子を見学していて分かったことは、
ならば、押し返すしかない。
普通科、魔戦科の生徒が木剣による打撃で
その狙いが分かっているからこそ、ケントは魔法がとても重要だと最初に言ったのだ。
いかにケントやマルティナが打撃を行ったとて、
だというのに、その
(
なんとなく、なぜケントがリアと同じ班になったのかを
班分けの
つまりはそういうこと。
「リアさん!攻撃はいいから、〈
指示を飛ばし、
「え、ええっ!?」
そうこうしている内に、
「シュル/ペディム/エファ/エファ/ウエル――〈
新たに動き出した一体を光の槍で後方へ
「〈
「うわっ!か、感謝する!」
攻めあぐねていたマルティナが感謝を
「もっと下がって!剣で
だが
「くっ!」
フォローに入るべく、ケントが走った。
「〈
横殴りの
「ふんっ!セイヤァ!」
マルティナがケントの
「やった!一体倒したぞ!」
赤髪のポニーテイルが
「危ないッ!」
その
リアの近くでケントが
「リアさんッ!」
ケントが叫んだことで彼女も背後に迫る
彼女自身が自分の身を
「ふええぇ!」
「〈
事前に準備するように指示していた魔法をケントが叫ぶ。一から詠唱していたならば間に合わないが、彼女がケントと同じ無詠唱での魔法発動を行えばまだ間に合う!
「ハ、〈
リアが魔法発動の引き金となる言語を口にした。
――だが、魔法は発動しなかった。
「にょわああああ――!」
「そこまでです」
「……………」
「ああ……すまない……私が前に出すぎたから……いつつ」
マルティナががっくりと
「おーおー、大丈夫かな?大丈夫じゃないねー」
身動きがとれないリアに
「ま、こんなもんでしょ。重要なのは、これからどうするかだよ、
その言葉はリアだけでなく、十一班全員に向けられたものだった。
「……うぅ」
ケントと目が合ったリアは、すぐにその視線を自分の足元へと下げた。両手をキツく
「……ご、ごめんなさい……私、私……待機詠唱、一つも、できなくて……」
謝罪と、魔法師として基本的な技術ができないという告白に、ケントはただ、目を閉じた。
(……なるほど)
これから一年、共に学び、ともに
“魔戦科始まって以来の天才”ケント・バーレス。彼と同じ班になったリア・ティスカというマギアスの少女にはある
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