第3話 異空間で切り合い、スラーヴァストレイス活刃流

異空間に飛ばされた侍と遊女。寄合う二人に集まって来るのは、町人のべりの用心棒。侍、袂に入れし両手を払い、しかし表情は変えずに言い放つ。


「町人が侍に喧嘩を売るのはよした方がいいぞ。理由は聞いてやらなくもない。今からでも話をつけよう」


うるせえ、と走り出す一行。遊女に、下がれと言って後ろ手をやると、侍、素に立ったまま用心棒衆と対峙する。


スラーヴァストレイス活刃流、戦闘歩法ーー飛連火。


刃を抜いて迫る所の一行を、回避しつつ近くを踏み通り抜ける。練気の発露が炎の片鱗となって燃化し、相手方五人の衣服に火を着ける。


踊るように火の粉を払った町人達に対して、侍、以ってその刀を抜き放つ。


「はっ、てめえがなまくら侍か! ナメやがって、おもちゃでやれるもんならやってみなあ!」


「ああやるさ。教訓を得るにはいいものだぞこれはな。やる気なら、来い」


刃引きの機黒刀をば佩いて構えることもなく下げらる刃先にて振り下ろす刃を凌ぎ、頸を丁打、囲まれる所を歩法により宙を舞い抜け出すと、踏み腿不断打、転火、柄殴り、足掛けつまびき、突する所を掴んで投げる、細い連刃いなして小手機先、回旋練火、両袈裟掛けの肩崩し。以下を以って、町人五人、不斬の賢智にて倒伐する。


「さあ、じゃあ帰るか。そうだ、秋楽先生が心配だ。どこかにリーブポイントがある……あそこか! いくぞ」


「カケちゃんて強いのね……見直しちゃうわ。! それよりも秋楽先生よ」


言ったろうが、とリーブポイントに入り、仄青い空間から出る。


ーーひえええ!


「秋楽先生!」


二人が声を合わせた所で、帰ってゆくのは蝦夷屋孫八。足をばたつかせて転移してゆくと、後も残さず事は済む。


「ヤア。フタリトモ。ブジカイ?」


「秋楽先生……? そりゃ一体……」


「アア、ソウダネ。コレジャシカタナイ、カ。イマ、コレヌグカラ。parge」


角のある筋骨隆々の赤い肌の異形が、光に包まれると博賢の姿が現れる。その姿に安堵しつつも、残った十間法術具に関して、疑問が生じる。


「先生、いいんですかい? コウトビを返さないで、あの孫八が帰るとは思えないぜ。あの大鬼で払っちまった?」


「いや、単に金を払ったまでのこと。あんまりに帰らないから脅かして帰って貰っただけだ。ということで」


掛右衛門、と改まって話し出す博賢に、侍だけでなく、遊女も襟を正す。


「君に密命を課す。この任が明けたらコウトビは自由に使っていい。我々バテレリックスに必要な物品を揃えること。それが大まかな任の内容だ。いいかな?」


すかりと笑った博賢。その月のような笑顔に毒気を抜かれた侍に、遊女が不思議そうな顔で侍の顔を見上げる。


「じゃあ身受けも同時に出来るって訳ね? よかったあ。私とカケちゃんの仲もこれで安泰ってことですか。よし」


「よしじゃないだろ……あーあ、なんでこんなことになっちまったのやら」


「なんなら彼女も連れて行ってもいい。エレメンツは良いものを持ってるようだからね。まあ、期待してるよ」


追って連絡すると言って奥の部屋に入ってしまった。頭を痛める侍。遊女もはやと、二階に上がるのだった。


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なまくら逸刀掛右衛門 スキヤキ @skiyaki

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