第7話 気づかぬ思い
モモと一緒に図書室に行くと、そこには本を読んでいるユキさんが居ました。ユキさんは声をかける前に私たちが来たことに気づいてくれたようでした。
「来たわね。夏休み前のテストまであんまり時間ないんだから頑張るわよ、スズ」
「はいっ」
そう言ってくれたユキさんはなんの躊躇いもなく私のことをあだ名で呼んでくれて、全くもって嫌そうとかそういうのはなかったです。やっぱり、私の思い過ごしだったのかな?
「あれ〜ユキ先輩なんか顔赤くないですか?」
「う、うるさいわね。それより勉強! 始めるわよ。あなたもやるのかしら?」
「いえいえ。私は昨日のように見てるだけなのでお気になさらず〜」
「そう? 分かってたけど」
モモとユキさんが話してる間、私は勉強の準備を……あれ?
「あ。教科書、教室……ちょっととってきます〜」
「ユキ先輩。もうちょっと慣れましょう、あだ名呼び」
「しょ、しょうがないでしょ。こういうの初めてなんだから」
「スズにとっても初めてなんです。二人とも初めて。だからこそゆっくりでいいんじゃないですか? 一緒にいるときを積み重ねて、ちょっとずつ仲良くなっていって、いつのまにか友達になって、親友になっていく。そういうものだと思いますよ?」
「そう、なのかもね」
「と言ってもゆっくり過ぎると先輩は卒業してしまいますが」
「う、それもそうね」
「とってきました〜。これでやっと始められますね」
「よし。頑張りましょう!」
私には勉強を通してじゃないとまだ向き合えない。でも、モモの言うようにゆっくりとちょっとずつを積み重ねたら……
何も通さずに、何も間に入れずに、向き合えるようになるのかしら?
そんなこんなで私はユキ先輩に手伝ってもらって勉強を頑張っていました。頑張っているんですが……
「模擬試験みたいな感じで私が一年生のときのテストの問題解いてもらってけど……」
「点数あんまり伸びてないねぇ。でもこの前のテストより難しくなってるし落ちてないのすごいと思うよ? スズ」
多分私がやったらスズの半分いけたら良い方かなぁ。ユキ先輩の前じゃ言えないけど。
「確かに大変な問題は増えたけど……もうちょっとというか」
みんな頑張ってるだろうしこれなら前と同じくらいの順位かなぁ? もうちょっと伸ばしたいなぁ。
「スズはこの点数じゃ納得しないんだね〜。十分すごいと思うけど」
「そういうモモはどうなのよ? あなたいっつも見てるだけだったでしょ? 大丈夫なの?」
「それが、家で問題集やってみたら案外解けるんですよ! ユキ先輩って教え方上手いんですね‼︎」
モモのいつものピースサイン。今日のは決まってるっていうよりちょっと可愛い感じかな?
「あなたに教えた覚えはないんだけどね」
ユキ先輩はため息。私はちょっと笑っちゃうなぁ。
「モモは本当の“やればできる子”なんですよ……天才肌っていうかなんというか……問題集は答え写してるのに絶対に赤点にならないとことか……」
「なにそれ。私も羨ましいわ。私は頑張らないと点取れないから」
「赤点回避してれば良いだけの私のことはいいから。それより明日からの三連休。なんか用事ある?」
「特にない、かな? 遊ぶのは夏休みにできるし……もうちょっと勉強頑張る」
「私も特にないわ。そういうモモはどうなの?」
「私も特には。みんな空いてるんだったら誰かの家で勉強会とかどうですか? 勉強会って言ったら結局遊びになった、とかよく聞きますがユキ先輩がいるなら大丈夫かなって。遊びと勉強のメリハリとかしっかりしてそうだし」
「あ、三連休で放課後勉強会が一回潰れちゃった分ユキさんに勉強教えてもらえるならありがたいです」
「そういうことですし、ユキ先輩の家とかどうですか? ダメですか?」
「えっ? なんで私の家なの?」
「特に理由はないです。ただ私が行ってみたいだけというだけです」
「いや、まぁいいんだけど、うち妹居るしあんまり集中できないかもよ?」
モモのこのグイグイっぷりはとても図書室でも怒られないくらいの声で身を乗り出さずに普通に座ってるとは思えないなぁ。私ほどじゃないけどユキ先輩も押しに弱いみたいだし。心なしか私が小さくなっていく気がする……
「よーし、けって〜い‼︎ ユキ先輩の家知らないんでこの辺集合でどうです?」
「こっちの方が分かりやすいかも」
ユキさんの家かぁ。どんなかなぁ? ユキさんには勉強を教えてもらってるだけだけど……いつかは普通に遊んだりしてみたい、かな?
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